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「スタートアップ育成5か年計画」を経産省やスタートアップ協会、大手VCが語る

IVS2023 KYOTOセッションレポート『「スタートアップ育成5か年計画」の道の歩き方

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 2023年6月28日から30日、京都市で国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS 2023 KYOTO」が開催された。3日間にわたり約250個のセッションが繰り広げられ、通算30回目となる今回は過去最大規模を記録した。

 本記事ではそのセッションのうちの1つ『「スタートアップ育成5か年計画」の道の歩き方』の模様を紹介する。2022年1月年頭の記者会見で、岸田総理が「スタートアップ創出元年」を宣言し、22年11月に「スタートアップ育成5か年計画」が打ち出された。

「スタートアップ育成5か年計画」とはスタートアップへの投資額を5年で10倍、10兆円にする目標を掲げた計画だ。同計画は「人材・ネットワークの構築」「資金供給の強化と出口戦略の多様化」「オープンイノベーションの推進」の3つの柱で構成されている。

 セッションでは経済産業省スタートアップ創出推進室の南知果氏の進行のもと、IGPIの宮下和昌氏、ANRIの佐俣アンリ氏、京都芸術大学の小笠原治氏、スマートラウンドの砂川大氏が、スタートアップが「スタートアップ育成5か年計画」をどのように乗りこなすべきなのかを議論した。

「スタートアップ育成5か年計画」の狙いと最前線で活躍するプレイヤーの見解

 冒頭、南氏から「スタートアップ育成5か年計画」の概要が説明され、各登壇者は現状をどのように見ているのかを述べた。

南知果氏

南氏(以下、敬称略):政府が「スタートアップ育成5か年計画」を推進する理由は3つある。1つめはスタートアップが課題解決と経済成長を担うキープレイヤーであると考えているためだ。目新しい事例として、海外ではモデルナやビオンテックなどのスタートアップがコロナワクチンをいち早く開発、実用化したことが挙げられる。

 2つめはGAFAMのような巨大企業を創出し、日本経済を牽引してもらうためだ。日米の株式市場の推移をGAFAM抜きで比較した場合、実は大きな差がないことがわかる。3つめは雇用創出を促進するためだ。新興企業やユニコーン企業は、売上や事業範囲の拡大に伴い、従業員数を増やす傾向にある。

 日本のスタートアップ支援の現状は、世界各国と比べると規模が小さい。米国調査会社のスタートアップ・ゲノムによる、都市別のスタートアップエコシステムランキングで、東京は2021年に9位(2022年は12位)と、さらなる支援強化が必要な位置付けにある。

宮下氏 (以下、敬称略):日本の大企業や政府は両利きの経営ができていない。要は、稼いだ分がイノベーションへの投資に回されていない状況にある。日本は世界のGDPランキングで3位の大国だが、GDPに占めるベンチャー投資の割合は米国よりも一桁少なく、ドイツやフランスの半分程度だ。

宮下和昌氏

 私が会長補佐を務める日本取締役協会は、経営の高度化という側面から、スタートアップ支援の裾野を広げていく。「スタートアップ育成5か年計画」の各種制度と経営のプラクティスの変革という両輪で、国単位で両利きの経営を実現したい。

佐俣氏 (以下、敬称略):「スタートアップ育成5か年計画」は、スタートアップは5年以内に期待に応えるようにという国からの要望だと思っている。残りの4年で、スタートアップ産業のプレイヤーは、「第2次5か年計画もすぐにやろう」と思ってもらえる成果を出さなければならない。

 スタートアップが大規模産業になることと、GAFAMを生み出すことは別の話だ。スタートアップが10万社生まれても、GAFAMクラスの企業が生まれなければ意味がない。次のGAFAMになりそうな会社を、いかに全員で伸ばせるかが重要だ。

小笠原氏 (以下、敬称略):福岡市が10年以上にわたりスタートアップを支援しているが、結果としては起業家が増えるにとどまった。佐俣氏の言うとおり、5年で成果を出すことが重要だと思う。

「スタートアップ育成5か年計画」のよい点は、単年度の予算ではないことだ。大企業もスタートアップも国からの支援に注目し、有効活用する必要がある。

砂川氏(以下、敬称略):「スタートアップ育成5か年計画」の注目すべき点は、KPIがあることだ。また、そのKPIを達成する責任者も明記されている。国が相当な覚悟でスタートアップを支援してくれていることを、非常にポジティブに受け止めている。

 国は今、スタートアップの話に本気で耳を傾けてくれる。これまでの規制緩和が進まなかったり、予算がつかなかったりした状況とはまったく異なる。スタートアップの人たちは「こうすれば世の中が変わり、日本もどんどん進化する」というアイデアを、前のめりにぶつけていってほしい。

 ここからは事前に寄せられた質問や、会場の参加者からの質問に、各登壇者が答えるインタラクティブなセッションの模様をお届けする。

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