日本代表はゲノム解析技術のbitBiome。人類の課題に取り組むスタートアップコンテスト XTC2023 日本予選
「Extreme Tech Challenge 2023(XTC)日本大会」レポート
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6万円で構築できるネットインフラ導入で
アフリカ農村部のデジタル化を実現
Dots for inc.が取り組むのは、アフリカ農村へのデジタル経済ゲートウェイの構築だ。エッジサーバーとルーターで村にWi-Fi網を張り巡らせ、スマートフォンをRent to own(購入選択権付きレンタル)することで農村のデジタル化を実現するというもの。ユーザーには動画見放題サービスを提供し、トライアル利用者の50%が課金ユーザー化している。特に職業訓練動画の人気が高く、視聴により50~80%収入向上を実現しているという。
エッジサーバーなどのインフラ導入コストは約6万円、スマートフォンのRent to own費用は1台あたり7000円程度。職業訓練動画により村全体の収益が上がり、10カ月程度で導入費用を回収できる事例が出ているそうだ。
エッジサーバーには利用者のアクセスログが蓄積されることから、たまった個人データを分析したアセット販売のアップセルも見込める。現在、ソーラーパネルとバッテリーなどの販売を開始しており、農機具や農業資材、バイクの販売などへの拡大を計画している。
フランス通信大手Orange社とセネガルで資本提携し、今後はOrange社が展開中のアフリカ17カ国へサービスを拡大させていく予定だ。
たった1回、5分の採血だけで、がんリスクを発見できる
「マイクロCTC検査」
がん細胞は1ミリ程度の大きさになると、新生血管を作り、血中にがん細胞が漏れ出す。初期のがんは悪性度の低い上皮性のがん細胞のみだが、進展・悪性化していくと上皮寛容転換が起こり、浸潤・転移の可能性の高い間葉系のがん細胞へと変化する。株式会社セルクラウドの開発するマイクロCTC検査は、この血中に漏れ出した間葉系のがん細胞のみを特定し、個数まで明示できる、新しい検査手法だ。
がんの多くは早期発見できれば完治する可能性が高いが、従来のPET/CTやMRIによるがん検査で全身をチェックするには、一日以上の時間と多額の費用がかかる。また遺伝子検査や尿検査などの従来の早期スクリーニング検査では、がんの疑いがあっても精密検査を受けると見つからないことがあった。
マイクロCTC検査は、1回5分の採血で、血液がん以外の全身のがんリスクが明確にわかり、がん細胞そのものを補足するため、患者の納得感が高いのが特徴だという。2023年3月にはMakuakeで先行販売を開始し、30日で医療・検査カテゴリーの最高額を更新。当面は薬事承認は受けずに、自由診療で普及を目指していくとのこと。
BLE自動ペアリングで簡単&セキュアにログインできる
店舗内アプリ認証サービス
ヴィタネット・ジャパン株式会社は、BLE自動ペアリングで簡単にネットに接続し、注文や決済ができる店舗内アプリ認証サービスを開発。
店舗内のビーコンが公開鍵情報を発信し、受信した顧客のスマホはクラウド認証で自動的にペアリングする仕組みだ。ユーザーは操作なしにセキュアな接続が可能となり、デバイスによるタッチ操作、QRコードを使った認証に比べて、簡単に商品情報へのアクセスや決済が行えるのがメリット。利用料金は月額300ドルを想定。コンビニエンスストアや小規模なスーパーマーケットなど小売店向けに導入を拡大していく計画だ。
QRコード付きの乾式カードで
血液検査をリモート化・全自動化
株式会社ユニバーサル・バイオサンプリングは、QRコード付きのカードを用いて血液検査をリモート化・自動化するバイオプラットフォームを開発している。
ユーザーの家庭にQRコード付きの乾式カードが届き、血液を浸みこませて返送すると、血液検査結果がスマホに送信される仕組み。常温保管可能な乾式カードとQRコードによる本人確認を組み合わせることで、在宅で手軽に検査できるのがメリットだ。
血液検査と唾液による検査を組み合わせれば、来院しづらい女性特有の更年期障害や産後うつなどのスクリーニングとしても期待できる。健康保険会社を通じて契約者の定期健診として提供するBtoBtoCサービスを想定し、パートナーを募集中だ。
エッジAIのインフラ常時監視で
災害の早期検知・避難支援プラットフォーム
Visnu株式会社は、エッジAI×SaaSによるインフラの自動監視・災害対応支援プラットフォームの開発に取り組んでいる。
同社のプラットフォーム「Visnu」(ヴィシュヌ)は、インフラを監視するエッジAIアプリの「Visnu AI App」、収集したデータを分析・可視化する「VisnuCloud」、既存のSNS等と連携して情報発信する「VisnuAPI/Webhook」の3つで構成。大規模インフラを平常時からエッジAIで監視し、災害発生時には連携サービスを通じてリアルタイムに避難伝える仕組みだ。
現在は、岩手県の釜石市と連携し、実証実験を進めている。まずは地方自治体と地元の建設業などと協力しながら、他地域へと展開していく戦略だ。
DAOを活用した環境・文化保全型の土地開発プロジェクト
「PlanetDAO」
PlanetDAOは、世界中の勇志がお金を出し合い、文化や自然を保全しながら観光拠点を再開発するWeb3事業だ。
トークンのルールを活用し、地域の不動産オーナーや専門家、現地メンバーが協力してシステムの構築に取り組んでいる。不動産に紐づいたトークンを持つDAOメンバーは、PlanetDAOが所有するすべてのロケーションで宿泊や居住でき、事業推進に必要な提案への参加が可能だ。また、ロケーションの保全や再開発のために環境活動家や研究者へファンドの一部が預けられる。
すでに世界中でいくつかの物件を所有し、和歌山県の色川村では住民向けの説明会の開催や補助金申請などを行っている。今年中にローンチ、2024年には1万人のメンバーを集めるのが目標だという。
ブロックチェーン決済を活用した
B2B貿易の取引自動化プラットフォーム
株式会社STANDAGEは、ブロックチェーンを活用した貿易決済サービスを開発している。
世界の貿易市場約2500兆円のうち、安全な貿易の割合は約2割の500兆円程度で、8割の貿易当事者は不安を抱えている。貿易における商品とお金の交換にはタイムラグがあるため、代金未払いや商品未着といったトラブルが起こりやすい。
同社のサービスは、貿易の際の輸送時にやりとりする船荷証券をNFT化し、代金をデジタル通貨で支払うことで商品とお金の同時交換を実現するものだ。プラットフォーム上では、買い手はデジタル通貨に変換して同社の貿易金庫に預け、売り手はデポジットを確認してから船積みし、船荷証券をNFT化して貿易金庫に預ける。両者の確認後に所有権を同時交換する、という流れとなる。
すでに2022年度の取引件数は185件、4.3億円の流通高に利用されている。数万円の小額取引から利用できることや、途上国との貿易では現地金融機関に依存せず、トラストレスに交換できることから中小企業に評価されている。
XTC世界大会は2023年9月19日頃に米サンフランシスコにて開催される予定だ。そして、次回の「XTC JAPAN 2024」は2024年3月に開催予定(詳細・エントリーは2023年10月頃に発表)。最新情報はSNS・公式サイトで配信されているので興味のある方はチェックしておこう。
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