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ASCII STARTUP イベントピックアップ 第102回

「XTC JAPAN COMPETITION 2021」レポート

SDGsと連携したグローバルな課題に取り組むスタートアップが世界に向けてピッチ

2021年08月05日 18時00分更新

文● 戸津弘貴 編集●ASCII STARTUP

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 Extreme Tech Challenge(XTC)の日本予選、「XTC JAPAN COMPETITION 2021」が2021年4月14日にオンラインで開催された。海外企業も含めて10社がピッチ登壇。オンラインで開催された本コンテストから日本発のスタートアップを中心に紹介する。

 XTCは、グローバル課題に取り組む起業家のための世界最大規模のスタートアップ・コンテスト。SDGsと連携した7つのテーマが設定された社会課題に関する解決を提案するもので、本稿での内容はその日本予選の模様となる。

XTC共同設立者のヤン・ソン氏

 コンテストは、XTC共同設立者のヤン・ソン氏の挨拶からスタート。「新型コロナウィルスの流行を始め、環境問題や格差の拡大などさまざまな問題解決が求められており、まさにXTCに参加する起業家の皆さんが携わる最先端の分野となっている。45社以上のパートナーがXTCの趣旨に賛同していただいており、SDGsなどの社会問題への取り組みが企業レベルでも注目されていると感じている。AI開発やITの問題に関しても日本は国民全体で重視しているのを感じているので、まさに日本がその分野では最先端であり、そういった環境から出てくるスタートアップに期待している」と述べた。

 以下、ピッチに登壇した一部企業のレポートをお届けする。

TomyK代表、株式会社ACCESS共同創業者の鎌田氏をはじめ、4名が審査員を務めた

信用スコアリングを活用した中古車ファイナンスをアフリカで

 最初の発表は、株式会社HAKKI AFRICAの小林嶺司氏による、信用スコアリングを活用した中古車ファイナンスの紹介が行われた。小林氏はケニアのナイロビからの参加で、その名のとおりアフリカにおいて信用スコアリングを活用した中古車マイクロファイナンスを行なうというサービス。

 ケニアは、人口が5139万人で電子マネーの普及率が93%と特殊な状態。そんなアフリカでは信用不足でローンの審査が通らないという状況がある。信用不足のタクシー運転手などは、レンタカーで営業しているがそのコストは非常に高い。その状況を変えるために新しいCredit Techを使ったファイナンスを提供するのがHAKKI AFRICAだ。

 タクシー運転手向けの自動車購入ファイナンスで、信用スコアリングとGPS、自動簿記システムを組み合わせることでローリスクなファイナンスが可能となるというサービス。銀行や他業種のファイナンスサービスより10%あまり安い金利で提供できるとしている。

 ローンチ6ヵ月で302件の申し込み、期日内返済率が95.2%と市場平均よりも高い数値となっている。今後は2023年をめどに銀行との提携を行ない、5年後にはIPO(新規株式公開)を目指したいとしている。

 2050年には世界人口の4人に1人はアフリカ人になると言われており、今後さまざまな金融サービスで信用スコアを利用できるようにAPI(Application Programming Interface:ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様やインターフェース)公開をしたいとしている。誠実に努力する人が報われる社会になるよう、これからもサービス提供をしていきたいと締めくくられた。

 続く質疑応答では、他社サービスと比較した際の独自の点として、自社でファイナンスをすることでスピード感があり納車まで最大3日でできるという特徴があると応じ、現地の事情に即したサービスであることが強調された。今後、農機具や輸送業向けなど他業種向けにも展開を予定している。

高効率、高付加価値な農産物を生産する「クローズド型植物工場」

 株式会社プランテックスの山田耕資氏は、クローズド型植物工場を紹介した。

 植物工場は、安定かつ持続可能な農業の担い手として期待が集まっており、各国で活発な投資が実施されている分野だ。プランテックスでは、「植物工場2.0」と称し、高効率、高付加価値な農産物を生産することが期待できるとしている。高度な環境制御により、従来の常識以上の成長を引き出すことができ、収穫量だけでなく品質も向上するという。

 株式会社クボタや大手スーパー連合からの出資を受けたことからも、自社製品の商品性の高さが証明されたのではないかと分析。今後は、「植物工場でしか育てられない野菜」の商品化を目指す。

 たとえば、「健康」「医療」「美容」などの分野で、特定栄養素を増やしたり医療効果のある成分の濃度を高めるなどがある。2021年には、植物栽培研究所および大規模工場の建設が予定されており、環境制御による高付加価値製品の開発と、量産化の両輪を加速してゆく。

 今後はプラットフォーム提供ビジネスも予定しており、ハードウェアだけでなく安定稼働のためのサポートなども行なってゆくということだ。

 質疑応答では、ニーズが多く注目されている分野ゆえに競合も多い分野なので、世界で戦うときにどこを推してゆくのかという質問には、基本的にはすべて(全方位)としながらも、技術的にはトップレベルにいる日本が、量産の実績を示しつつ展開してゆくためのプラットフォームづくりをしてゆくと回答。

 既存の農産物との競争や、生産のためのエネルギーなどの課題に関してもコストを見ながら徐々にやっていきたいと表明があった。

薬を効率よく脳に届ける「革新的薬物送達技術」

 Braizon Therapeutics(ブレイゾンセラピューティクス) Incの戸須眞理子氏は「革新的薬物送達技術」に関するプレゼンテーションを行なった。

 高齢化社会になって脳の疾患も増えているが、脳の防御機構によりほとんどの薬が脳に届かないという課題が生じている。Braizon Therapeuticsの薬物送達技術は、ウィルスより小さいMicelle(ミセル)という物質に薬効成分を内包する技術と、その表面を血液脳関門を突破する分子でコーティングする技術を組み合わせることで、これまでの50倍〜100倍の薬を届けることに成功。今までは、髄腔内投与というハイリスクな方法でしか投与できなかった薬も、静脈内注射をすることができるようになるとしている。

 Micellesは、薬の内包率が高く、1つのMicellesには50分子内包でき細胞内にとりこまれやすい構造で、細胞内デリバリーが高いのが特徴だという。

 今後は、Micellesの大量生産および抗体などのタンパク質を運ぶMicellesの開発にも着手し、2025年までのIPOを目指している。

 質疑応答では、2025年までのIPOに向けてのスケジュールが確認された。マウスの臨床試験はほぼ終えてサルでの試験がクリアされればそのあとは比較的スムーズなので、サルでの試験を完了させたいと当面の目標が示された。

保育園の業務をまるごとDX化するサービスを提供

 ユニファ株式会社の土岐泰之氏による発表は、保育園のDX化について。

 ユニファ株式会社は、保育、育児関連の社会課題を解決するChildCare-Tech領域のスタートアップ。保育園の利用率が高まるなか、保育士の不足が社会問題となっている。特に、若手保育士の離職率が問題となっており、負担となるのが手書きの書類業務という。ユニファではそういった保育園の業務をまるごとDX(Digital Transformation)するサービスを提供する。

 睡眠時のうつ伏せチェックなどはセンサーを使用して半自動で行なえるようになり、写真の販売なども顔認識を活用し、ネットで販売できるようにするほか、連絡帳や登園管理なども1つのアプリでできるようになるというもの。

 サービス導入実績は1万件を超え、システムは園からのサブスクリプション、写真などは保護者からとtoB、toC両方からのインカムがあるのが特徴。まだまだポテンシャルはあると感じているが、国内だけでなく、グローバルに展開するのが今後の目標だという。

 海外では、まだ家庭でのソリューションがメインで0歳児から預かる保育園は日本が1番進んでいるので、それらを海外展開での強みにしたいとしている。特に、個別の機能ではなく、ここの業務をパッケージしたトータルソリューションであるのが売りで、導入することで圧倒的に業務が楽になる。手書きの業務が月あたり100時間ほど削減できる。

 今まで子供のデータは自治体、保育園、企業、家庭などそれぞれでバラバラに管理されてきたが、子育て支援プラットフォームとして統合していけるのではないかと提案があった。

 質疑応答では、日本と海外では保育園経営で違いがあるのではないかという質問に対して、乳児突然死の問題は世界共通なので、ヘルスケアIoTによる見守りなど実証実験も行なっていると返答。日本は補助金などもあってサービスが横並びの傾向だが、海外のほうは差別化をして集客を測る必要があるので、そういった面でも「売りになる」のではという分析を示した。

 海外展開に際して、多くのデータが集まっていることでプラスの面はあるかという問いには、データの量とその分析によって、ベテラン保育士が経験値として気付いていた様子の変化などが見える化してくるとしている。

旅行先で仕事(お手伝い)をすることで旅費が安くなるサービスを提供

 株式会社おてつたびの永岡里菜氏は「地域へ人が訪れるファン(関係人口)ができる仕組みづくり」についてプレゼン。

 同社は、トラベルとHRテック(Human Resource Technology:テクノロジーの活用による人事業務の効率化)を掛け合わせた企業で、旅行先で仕事(お手伝い)をすることで旅費が安くなるというサービス。地域の人手不足と、金銭的理由で旅行に行けない若年層をマッチングするものになる。季節労働や出稼ぎといった市場のリプレイスとなることを目指している。

 ベータ版ローンチ2年で口コミを中心に急激に伸びている。受け入れ事業者も順調に拡大しており、80%のリピート率を獲得。「旅行」と「仕事」という異なる期待値の組み合わせゆえに、泥臭いすり合わせをすることで双方の満足度が100%近くなるようになったと話す。

 現在は、1次産業と宿泊業という短期的な単純労働を中心にサービスを提供しているが、地方のHR周りの課題はまだたくさんあるので、その分野で「おてつたび」というブランドを定着させていきたいとしている。

 こういった国内のノウハウをもとに海外への進出も目指している。ファームステイやワーキングホリデーのリプレイスを考えているという。

 質疑応答では、旅と仕事の親和性、特に仕事をしていては旅を楽しめないのでは? という点が指摘された。こちらに対しては時間のある学生をメインターゲットとしつつ、新型コロナウィルスの影響で社会人にもワーケション的に広がっている、と返答。CAなど比較的時間のある業種の人が1次産業を知るために利用するという例も見られるという。旅要素に関しては、農家であれば収穫は午前中に集中するので午後は近場で遊べるなどもあり、そういった内容はマッチングページに掲載されているので自分にあったアクティビティを選べるようになっていると状況を説明。

 国外へのアプローチに関しては、海外市場にこそ親和性があると感じていると回答。ビザの問題などもあるので、当初は旅行パッケージからスタートするなど検証して進めていきたいと示した。

使った日だけ家賃がかかる、物件マッチングプラットフォーム「リレント」

 株式会社unito(ユニット)の近藤佑太朗氏は物件マッチングプラットフォーム「リレント」を紹介。

 多様性の時代において、SDGsで提唱されている住み続けられるまちづくりの分野で、「行きたい場所に行ける」という世界を目指すなかで、家に帰らない日は家賃を払わなくて良いという料金システムが特徴。

 民泊物件を活用し、帰宅しない日は宿泊施設として貸し出されることで稼働率を上げる仕組み。東京・横浜・福岡・京都などの都市部を中心に2500室を突破しているという。都内に通うには時間がかかるが一人暮らしをするまでもない実家以上一人暮らし未満など、2拠点目が欲しい層がターゲット。2日以上家に帰らないという人が40%ほどいるのでそこにポテンシャルがあると見込んでいる。今後は、コロナ状況において需要が減っているホテルの活用なども検討していきたいとしている。

 質疑応答では、物件と利用者のマッチングにおいて、仕入れの部分はどうしているのかという問いには、都心に住む人は年末年始に帰省することが多く、逆にその時期は宿泊施設は繁忙期となるので、需給バランスがとれるのではないかと分析。

 グローバル展開に際しては、都市部の課題は世界的に起こっていることなので、世界の都市部においても展開できると話した。

 今後のタイムラインとしては、外泊すると家賃が安くなるマンションなどデベロッパーと組んだ展開を予定している。

非財務価値を数値化するプラットフォーム「ESGテラスト」

 サステナブル・ラボ株式会社の平瀬練司氏からは、非財務価値の見える化で納得解を示す「ESGテラスト」の紹介が行なわれた。

 先の読めない超速変化の時代においては、SDGsのような長期戦略が需要であるというのは頭ではわかっていても、費用対効果が不明なので取り組めないという課題がある。

 「ESGテラスト」は、非財務価値を数値化するプラットフォームで、すでにベータ版はリリース済み。シンプルなUIで自他社の定量的な把握が可能。トレンド、位置付けがタイムリーに、格付けよりも手軽かつ緻密に行えるのがポイントだ。全体評価だけでなくビルドダウンすることで個別の素データまで掘り下げて確認することができる。これにより、なんとなくの把握が「確信」になり、気づいてなかった価値を「発見」し、費用対効果の手がかりとすることで意思決定の根拠とすることができるようになるという。

 関連指標や格付けを含むオープンデータを随時収集・構造化し、財務や社会インパクトへの影響度など業種別特性を導出し重み付けを行なうなど、データドリブン(データに基づく)な非財務の数値化を実施するとしている。

 あらゆるデータに平等にアクセスし、上場企業だけでなく非上場企業も対象とするなど、脱ブラックボックス、サステナビリティ評価の民主化を目指している。

  現在は月商300万円、26社だが、一部人力で動かしている部分をSaaSに置き換えることで1年後は月商1000万、100社へ、2年後は月商4000万円、300社へと成長を目指す。

 さらに、3年後は国内のデファクトのポジションを確保し、グローバルへの進出を果たしたいと締めくくられた。

 質疑応答では、従業員のダイバーシティなど公開されていない情報はどのように評価するのか?という質問も出たが、転職サイトなど周辺情報から類推することでそういった情報の精度を高めていくことも可能としている。また、次のステップに関しては、現在は「見える化」であり、今後は「改善と運用」までできるツールに育てていく必要があると考えが示された。

 評価値の精度の検証はどうするのか?という質問には、格付け屋ではなくデータ屋であるので、確からしさや権威づけという意味合いでは勝負をしていない。人や企業ごとに納得解、目指すところが異なるので、企業価値の多様化に対応するモデルを提供することを目指していると回答。格付けや権威づけをしたい企業が我々のサービスを使って自分たちの基準に沿った企業価値判断をする助けにしてもらっても良いと回答があった。

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