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人の縁をつくるきっかけがスタートアップエコシステムに必要

堺市「中百舌鳥イノベーションシンポジウム2」レポート~人と縁がつなぐ地域活性のスタートアップエコシステム~

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

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縁を作るために大事なこと

 最後に縁を作るために大事なこととして矢澤氏はリーダーシップを挙げた。人との関係を作るにしても、何かイベントを開催するにしても、自分から能動的に動き、周囲を巻き込んでいくことは非常に重要になる。そういうことを矢澤氏はリーダーシップと呼んでいる。

 リーダーシップにもトップダウンで物事を主導するタイプもあれば、腰を低くして相手の懐に忍び入るやり方もある。そんな中で矢澤氏が常に意識しているのは、人の嫌がることを率先してやることと話している。

「例えば率先してオフィスの掃除をしてみるとか、率先して飲み会の幹事をやってみるとか。そうすると、この人こんなことやっているのか、じゃあ自分もやろうみたいに、良い行動であれば絶対人がついてくる。幹事などもすごく面倒くさいと思いますが、あの人がやってくれたからこれがあるんだよねという場作りは非常に大事だと思います」(矢澤氏)

 場づくりができれば、人を巻き込むことに対しても縁を繋ぐことに対してもハードルは非常に低くなる。他人を変えることは難しいが自分を変えることはその気になればいつでも可能だ。エコシステムを回すためのトリガーはそんなところにあるのかもしれない。

堺市による2022年度イノベーション創出事業 成果報告

 続いて堺市産業振興局 産業戦略部 中百舌鳥イノベーション創出拠点担当課長の西浦 伸雄氏(以下、西浦氏)から、2022年度 堺市事業実施報告として、2022年度の堺市でのイノベーション創出施策の実施報告がなされた。

堺市産業振興局 産業戦略部 中百舌鳥イノベーション創出拠点担当課長 西浦 伸雄氏

 製造業が盛んな堺市の中でも堺市中百舌鳥地区は大阪公立大学や産業支援機関などが集積地となっており、ここを新しい産業振興の拠点として整備を進めている。NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアムはその中核組織として、中百舌鳥に集う多様なステークホルダーが協力し、連携するプラットフォームとなるべく設立された。

 産業振興のあり姿も時代に合わせて変化していくことが求められるが、堺市では地域と社会の課題や住民が求めることを解決するためのイノベーティブなプロジェクトやサービスを創造することと捉えており、それに向けて多様な施策に取り組んでいる。

 例えばイノベーション創出のためには若い力の活性化が必須であることから、夏休みに小中学生向けのアントレプレナーシップ育成プログラムを実施した。これはアントレプレナーマインドを育むワークショップや金融の仕組みを学ぶ学習コースなどを合わせたもので、コロナ禍の中、非常に多くの子どもたちが参加した。このプログラムは来年度以降も継続する予定にしている。

 具体的な新規プロジェクトの創出に向けた取り組みとしては、地域が抱える課題を解決することをテーマに「地域社会未来創出プロジェクト」を実施した。合計12のプロジェクトを採択し、それらに対してメンタリングやビジネスマッチングなどを行い、いくつかのプロジェクトでは来年度以降ビジネスとしての実装を推進していくこととなっている。

 また、オンラインコミュニティを通じたセレンディピティ型のイノベーション創出にも取り組んでおり、既に学生からシニア層まで100名以上の会員を集めてオンラインイベントを開催するなど、人脈形成やコミュニケーション創発に向けた動きを活発化している。

 中百舌鳥にはビジネスインキュベーション施設「S-Cube」が設置されており、創業・起業を目指す中小企業やスタートアップのビジネス開発拠点となっている。S-Cubeはスタートアップのオフィススペースとしての機能だけでなく、インキュベーション・マネージャーによるハンズオン支援、事業計画策定に向けたコンサルティング、経営・財務・法務などの実務知識を獲得するための勉強会など、手厚い支援が利用者向けに提供されている。

 直近3年間で30社がS-Cubeを卒業して自前のオフィスを構えるようになったが、そのうちの27社が堺市に立地しており、堺市にイノベーティブな事業を生み出す機能を発揮しつつある。

 2022年度には新しい製品・サービスの社会実装に向けた施策についても具体的な進捗が見られた。シングルマザーと中小企業向けのAIを活用した雇用ソリューションを提供する神戸のスタートアップが堺市に事務所を構え、中小製造業者とAIスタートアップが連携することにより、技能承継をサポートするプロダクトをリリースするなどの事例が出てきている。これらは堺市が提供するアクセラレーションプログラムや実証推進事業から生まれてきたものだ。

 以上の2022年度実施施策については、来年度以降も継続していくものがあるが、これに加えて人と人との繋がりを強化・拡大するイノベーション・コミュニティ形成事業を推進していくとしている。これは中百舌鳥のイノベーション拠点であるS-Cubeを改装し、リアルに人が集まることのできる交流拠点に改装する予定になっている。

 物理的なスペースだけでなく、スムーズなコミュニティ醸成に向けてスタートアップや中小企業のサポートを行なうコミュニティマネージャーを常駐させる。これにより出逢いの機会の提供や繋がりの醸成、強化を推進し、ビジネスマッチングなどのプログラムを通じて、中百舌鳥をさらなるイノベーションを絶え間なく生み出し続けるリーディングエリアへと発展させることを狙っている。

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