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人の縁をつくるきっかけがスタートアップエコシステムに必要

堺市「中百舌鳥イノベーションシンポジウム2」レポート~人と縁がつなぐ地域活性のスタートアップエコシステム~

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

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パネルディスカッション:人と縁がつなぐ地域活性のスタートアップエコシステム

 本シンポジウム3つ目のセッションは、堺市発のスタートアップ企業3社によるパネルディスカッションを実施、モデレーターに公益財団法人大阪産業局 イノベーション推進部 プランナー 野崎 麻衣氏を迎え、本誌でインタビュー記事を実施した株式会社エイトノット 代表取締役CEO 木村 裕人氏、株式会社オプティマス 代表取締役 高尾 一美氏、株式会社K-FIRST 代表取締役 田中 健司氏がパネラーで登壇した。

 野崎氏はOSAKA INNOVATION HUBやStartup Hub Tokyo 丸の内などのスタートアップ支援施設の立ち上げや運営に長年携わってきた経験を持つ。

公益財団法人大阪産業局 イノベーション推進部 プランナー 野崎 麻衣氏

 エイトノットはロボットやAIの技術を活用して水上モビリティを自律化し、海に道を作ることを目指した小型船舶向け自律航行プラットフォーム「AI CAPTAIN」の開発を行なっている。すでに広島県宇品周辺海域で自律航行の電動船を使った水上タクシーの営業航行を開始している。万博での世界初無人航行による旅客輸送の実現に向け、開発を加速している。

 オプティマスは遮熱断熱塗料に光触媒技術を組み合わせることにより、汚れに強く環境と健康に優しい高機能塗料「オプティマス」の製造・販売を行っている。また、ヴィーガン食のオプティマスカフェ、高機能塗料オプティマスを活かした戸建て住宅のオプティマスハウスと合わせて日々の生活について考えるきっかけを提供するライフスタイルカンパニーを目指している。

 K-FIRSTはあまり利用されていない築古ビルを再生し、フリーランス向けスモールオフィスとして貸し出すRe:ZONE事業を運営している。フリーランスが求める機能に特化することにより、低価格でありながら高品質なオフィス空間を提供することを可能にしている。現在は関西地区に約30拠点を展開しているが、2026年には200拠点を目指して郊外、地方への進出を急いでいる。

事業開始にあたっての人の縁

(以下、敬称略)

野崎:まずなぜ堺市だったのかを含めて、事業を始めるにあたってどのような人の縁があったか、お話を伺えますか。

木村:堺市のマリーナにオフィスを置かせてもらっているが、その運営をされている方とは創業前から仲良くさせていただいていた。また、事業を始める際もすごく意義のある事業だと思うので一緒にできることがあればやりたいと言っていただいた。それが創業のきっかけとなっている。

もともと我々は船舶や海洋に関して専門知識を持っているわけではなかったので、創業にあたって知見や経験などをインプットしていただいた。事業の第一歩を非常に強く後押しいただいたこともあり、本当に人のご縁は大事だなと強く感じている。

野崎:広島の方にも拠点があるとのことですが、そちらも何かご縁があったのでしょうか。

木村:創業直後にどこで事業を展開していこうかと考えていたその時、たまたま広島県で県外のスタートアップも含めてアクセラレーションプログラムを実施していただいた。創業直後に採択されたため、まだプロダクトは何もなかったが、瀬戸内海が抱える課題を解決しうる技術であると我々を信じていただいた。広島県の方々には今も一緒にチームを組んで伴走いただいており、非常に有難いことだと強く思っています。

野崎:続いて高尾さんにも創業経緯や人との縁にまつわる話をお伺いできたらと思います。

高尾:まずそもそもタイでスタートというところも既に縁でして、私の父親がタイで中古機械の販売事業をやると言い出して、その手伝いに行ったのがきっかけでした。当時はタイに日系企業がどんどん進出していたんですが、母親が遮熱断熱塗料を作っていたのを思い出して、それを売りに行こうと。知人が絶対にやった方がいいと勧めてくれましたし、中古機械のお客さんもお母さんがそういうことをやっているなら日系企業を紹介してあげると言ってくれました。結局そのまま10年タイにいることになりました。

野崎:そのタイでの10年は、苦労をされたこともあったと思いますが、いかがでしたか。

高尾:母親の会社は製造だけをやっていたのですが、タイでは販売・施工までやらないと儲かりませんでした。まずトラックを自分で運転して、塗装をしているタイ人を捕まえてウチで働かないかと持ち掛けて会社を作りました。

工場の屋根に遮熱断熱塗料を塗ると、工場の中の気温が5度くらい低くなるので、CO2とエアコンの電気代の削減に直結する。競合もあまりおらず、非常に良い時期でした。でも販売先は日系企業の工場だから、社長は田舎のおじさん達。特にゼネコンの社長からは「ここは女の来るところじゃねぇんだよ!」と言って靴を投げられたりしました。

野崎:タイの後、ドバイに会社を設立されたとか。

高尾:これもご縁がありまして、女性起業家の集まりで知り合った方から、ドバイの市場がいいんじゃないかと勧められたんです。日本で(価格の高い)遮熱断熱塗料を販売するのも大変でしたし、グローバルを攻めたいという想いもありましたので。

そこでドバイを調べてみるとタイ以上に暑い国で、タイ以上にお金が動いている。そこでコロナの中でしたけど2年前に飛び込んで行ってみたところかなり良いフィードバックを頂いたので、そのまま会社を設立しました。来月からGoogleの大きなデータセンターを塗装します。

あとタイよりは女性をリスペクトしてくれる国で、日本人で英語を喋れるということでいろんなところに連れて行っていただきました。まだ日本からは遮熱・断熱塗料の会社は行っていませんし、良いタイミングでした。それもご縁ですね。

野崎:続いて田中さんにも人と縁にまつわるエピソードをお伺いできたらと思いますが、いかがでしょうか。

田中:改めて振り返ってみると、ご縁のおかげでここまでこられたと思います。実は以前、君はご縁に関して自分の利害でしか考えていないとすごく怒られたことがありまして、それからご縁に対しての捉え方を変えました。以前は人を紹介するということにすごく抵抗があったんですが、自分が貢献できないなら私の知っている良い方を紹介しよう、という形に変えたら、すごく繋がりが深くなったんです。

今はご縁をどれだけ生かすかが事業を成長させるカギだと本当に思っています。だから何かあったときにこいつに頼もうと言ってもらえるように、あるいは逆に誰かを紹介する時にも、こいつに紹介されたのならちゃんと対応しないといけないと言われるように、人間性を高めていかなくてはいけない。その方がどういう意図で紹介してくれたのか、ご縁を繋いでいただいたのかといったことを常に意識して行動するよう変えているかなと思います。

野崎:紹介してもらえる人になる、ということがかなり重要なのだと思います。田中さんの中で常に気を付けていること、心がけていることなどありますか。

田中:これは我々の会社のミッション・ビジョンに書いてあることですが、決めつけないということをすごく意識しています。人って成長して歳を重ねるごとに、これはこういうものだろうと決めつけてしまうことがあると思います。でも私は決めつけたりしない。常にフェアでありたいと思っています。

あと他責にしない。何か問題が起きた時、自分が原因で何かが起きたのではないかと考えて、常に改善、改善とするよう日々心掛けています。

野崎:皆さんのお話を聞くと、チャンスをきちんとモノにされていて、それを結果的に縁だったという風に話されているので、やはりどんなボールが来てもどんなチャンスが来ても、それをきちんと受け止めて事業につなげていくというところが大前提なんだなと感じます。

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