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オプティマス、光触媒が生んだ高機能塗料で世界の省エネ、環境問題に挑む

堺市発のイノベーションを創出するスタートアップ起業家連続インタビュー第5回

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市

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 大阪府堺市は様々な社会課題の解決に向けて、イノベーション創出エコシステムを構築するための様々な施策を展開している。その中核を担う新規事業に取り組むスタートアップの中から株式会社オプティマスにインタビューを行い、同社の事業に対する想いや今後の成長に向けた取り組みなどを伺った。

 株式会社オプティマス(以下、オプティマス社)は遮熱、断熱機能や光触媒による環境浄化機能を持つ高機能塗料「オプティマス」シリーズの開発と販売を行っている。鮮やかな白色はアパレル路面店の外装に使われたり、抗菌や消臭効果を持つ内装用塗料はカフェなどで活用されている。また、病院や学校での用途向けに抗ウィルス機能を持つ製品もラインナップされており、遮熱、断熱効果を含めて中近東などで注目されつつある。

 同社はオプティマスの持つ環境浄化機能を起点に、サステイナブルな生活への気づきを提供するライフスタイルカンパニーを志向している。現在は生活の三大要素である衣食住のうち、住をカバーするオプティマスハウスと食をカバーするオプティマスカフェを事業に加え、高機能塗料と合わせた3本の柱で成長を続けている。

 大阪府立大学(現在の大阪公立大学)と堺市との産官学連携で開発した環境機能塗料で世界に挑むオプティマス社代表取締役の高尾一美氏(以下、高尾氏)に、環境に優しい生活への熱い想いとそれに向けた同社の事業展開を伺ったので紹介する。

株式会社オプティマス 代表取締役 高尾 一美氏

高機能塗料オプティマスを生んだタイでの経験

 米国での大学生活中に環境問題への理解を深めた高尾氏は、帰国後に父親が立ち上げていた中古機械販売事業の支援でタイに赴いた。そこでは多くの日系企業が立ち上げた工場でエアコンのために増える一方の電気使用量に苦労しており、遮熱、断熱塗料による環境負荷の軽減の可能性に気が付いた。そこで高尾氏の母親が経営する塗料製造会社(宝栄産業株式会社)の遮熱、断熱塗料をタイに持ち込み、工場の屋根に塗る事業を開始したところ評判を呼んだ。

工場の屋根に遮熱、断熱機能のある塗料を塗る(オプティマス社noteより)

 ところが当時のタイは大気汚染が深刻で、真っ白に塗った屋根が1年もしないうちにグレーに変わり、遮熱、断熱機能が落ちてしまう問題が発生した。これを解決する方法を探していた時に出会ったのが光触媒だった。

「汚れがついて塗料の効果が落ちるのを避ける方法がないか探していた時、光触媒という紫外線によって臭いや汚れを分解する素材があることを教えてもらった。塗った塗料のさらに上から塗るタイプのものを入手して屋根に塗ったところ、確かに汚れないようにはなった。しかし塗りムラが生じやすく、時間が経つとまだら模様になってしまった。

 塗布工程が増えてしまうことと塗りムラの発生を避けるため、遮熱塗料と光触媒を混ぜて使用するテストも行った。しかし光触媒の持つ有機物分解の機能により、粉末化して剥落が生じてしまうことがわかった。そこで母親に相談したところ、当時お世話になっていた堺市の方を通じて、光触媒を研究している大阪公立大学の安保教授を紹介してもらえた。そこから産官学連携で新素材の開発をスタートすることができた」(高尾氏)

 日本発の技術である光触媒は、人体に有害な化学物質や悪臭のもととなる物質を分解して空気を浄化する機能を持っている。一時はメディア等でも注目されていたものの、業務用の知る人ぞ知る製品になってはいても、広く一般に用いられている大ヒット商品がない。そのため光触媒の研究を続けてきた安保教授のチームは誰もが知る光触媒の応用製品を生み出したいという情熱を持っていた。

 オプティマス社が見つけた省エネと環境問題への処方箋としての高機能塗料という応用分野は、安保教授にとっても有望に映った。さらに堺市には地域を代表するスタートアップを創出するための支援の用意があり、それらが組み合わされることにより、環境に優しい高機能塗料オプティマスの開発に成功した。

「もともと宝栄産業で製造していた遮熱、断熱塗料は樹脂バルーンが入っており、その表面に光触媒のナノ粒子を付けた上で塗膜表面に浮き上がらせれば良いのではないかというアイデアを持っていた。それを安保教授に話したところ興味を持っていただけて、そこから産官学連携が始まった。

 開発したオプティマスのうち、内装用は抗菌、消臭機能や有害化学物質の除去機能がある。色もマット調で非常にオシャレな内装ができる。外装用は耐汚染機能によりいつまでも白く、光触媒が窒素酸化物などを分解して空気をきれいにしていく。サステイナブルでかつウェルネス型の商品に仕上がった。

 オプティマスを外装に使うと表面温度が40度くらい落とせるので、暑い地域に向いた商品といえる。なので昨年ドバイに会社を立ち上げるなど海外展開に力を入れている」(高尾氏)

 抗ウィルス性を持つオプティマスも開発に成功しており、医療や介護施設や教育施設などへの展開が進められている。

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