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スタートアップ4社が独自技術で取り組むカーボンニュートラル社会の実現

オープンイノベーションピッチ in Central Japan

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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「オープンイノベーションで生き抜くカーボンニュートラル社会」

 ピッチ終了後は「オープンイノベーションで生き抜くカーボンニュートラル社会」をテーマに、ピッチでは語りつくせなかったスタートアップ各社の具体的な取り組みについて、座談会形式で掘り下げが行われた。登壇者はスタートアップ4社に江崎氏を加え、名古屋大学客員准教授の平山雄太氏がモデレータとして参加している。長時間にわたり興味深い議論が繰り広げられた。その中からエッセンスをご覧いただきたい。

平山氏(以下、敬称略):今日のテーマであるオープンイノベーションとカーボンニュートラルだが、各社取り組みが違っていると思う。そこを少し伺いたい。まずエイトスの嶋田さんにお伺いしたいが、「カイゼン」のお膝元である中部地方でも、いまも改善提案を紙ベースで実施している企業は多いのか。

名古屋大学 客員准教授 平山 雄太 氏

嶋田:ほとんどの企業では紙ベースで実施されている。体感で9割以上ではないかと思う。

平山:手書きでやれと言うとみんなめんどうくさがるだろうし、外国人などは文章入力が難しいなど課題があるのではないかと思う。若い人や外国人は手書きになれていないので、デジタル化すれば劇的に変わるのではないか。

嶋田:紙ベースだと見られる人が提案者と上長だけだったが、デジタル化すると他の人も見られるようになるので、提案をさらに改善するアイデアを出すといったコミュニケーションが生まれた。写真や動画も使えるから、文字以外でのコミュニケーションもできるようになる。

江崎:改善提案は現場の小さなところだけを対象にしている。会社全体のポートフォリオにどのくらいの影響があるのかや、どのくらいの投資が必要かといった情報を出してくれるようにならないか。

嶋田:我々もそこが大事だと思っている。現場の視点での改善も重要だが、それを俯瞰して経営側が改善してほしいと思う部分とリンクしないと効果的にならない。我々のツールでも経営陣が俯瞰データから弱点を見つけ出し、それについて現場とコミュニケーションを取って提案を集めるという設計になっている。

平山:続いてユームズ・フロンティアの林さん、マイクロ水力発電について、今まさにマーケットが広がっているという実感があるのではないか。

林:政府がカーボンニュートラルの宣言をしてから引き合いが増えた。まず法律などの縛りのない工場の排水をターゲットに電気代の削減というメリットを前面に実績を積もうとしている。次に浄水場や水道施設を狙っているが実績が求められるので、ブランド力や信頼感のある大手企業と連携できると普及が進むと思う。

江崎:既得権益などをあまり気にしない海外の方がやりやすいかもしれない。

林:アジア圏、ヨーロッパ圏からも引き合いがある。ただ知財面は慎重に進める必要がある。人材がいないスタートアップだと時間や手間をかけられず難しい面がある。今は量産化に向けて体制を整えているところだが、知財を出し始めてもそれをどうビジネスに生かしていくか、大手企業との連携に生かしていくか、そういったところの支援が欲しい。

平山:フランスのボルドーにテクノウエストというスタートアップのオープンイノベーションを促進するための中間支援組織がある。彼らはスタートアップからの話を聞いて、どこの企業や大学の誰に繋がればいいかを教えてくれる。日本にそういった専門組織が無いのは課題の1つといえる。

江崎:知財の管理コストはかなりかかるので、NEDOにはパテント関係の支援をする予算を確保することと、駆け込み寺のような機能を持つ組織を作ることをお願いしたい。

平山:知財についてFLOSFIAの見解があれば伺いたい

人羅:当社の場合、最初は外部の特許事務所を通じて出願していた。現在は社内に知的財産部を作って内製化を進めている。そうすると、外部に出していた時は利用できていた外国出願の際の補助金が内製化によって利用できなくなってしまった。そもそも会社の事業に資するものだから自社でというのは原理原則だが、ご検討いただけるとありがたい。

江崎:半導体の事業をやるためには知的財産権の確保は必須であり、その内製部分が支援されていないためベンチャーが取り組むのは大変だと。経済安全保障関連予算が5000億円ほどあるから、そこから持ってこられるといいのだが。

平山:御社は京都で創業されているが、京都には京セラをはじめとする製造業の大手企業がある。難しい新技術を理解してもらえる大手企業が近くにあるというのはエコシステム的に重要だと思うがその点はどうか。

人羅:京都には独自のスタートアップエコシステムがあり、我々も創業時にそういったコミュニティに相談に行った。相手は大手企業のエンジニアだったが、当時はシリコンカーバイドや窒化ガリウムなどのパワー半導体向け応用研究が盛んにおこなわれており、そこがまだ赤字状態なのにさらに新しいことをやるというのは難しいと止められた。でも、だからこそベンチャーでやるべきと思ったし、そういうディープテック系のベンチャーエコシステムが立ち上がってきたタイミングだったと思う。

平山:先ほどのピッチではインテルのように御社も大きく世界市場に出ていきたいという話があったが、具体的な戦略があれば伺いたい。

人羅:京都には大口のクライアントはあまりいない。だから最初から世界を視野に入れている。すでに世界中の企業から引き合いももらっているし、自分の方からコンタクトを取っていく取り組みも進めている。

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