ゲーム、まちおこし、教育に活用が広がる3D都市モデル。第3回PLATEAUライトニングトーク開催
「3D都市モデル PLATEAU LT 03」レポート
PLATEAUを都市計画や防災に活用
Eita Horishita氏は、「千葉県柏市でPLATEAUを使ってみた」というテーマで、都市計画マップにPLATEAUの3D都市モデルを活用した事例を紹介。3D建物を都市計画マップに重ね合わせると、用途地域のゾーニングに沿って建物が建築されていることがひと目でわかる。
また、柏市ではハザードマップの「洪水浸水想定区域」と「過去30年間の水害履歴」はまったく違うエリアで起きているという。これは河川からの洪水よりも、豪雨による内水氾濫が多く起きているためだ。さらにこのマップ上に3D都市モデルや土地の陰影起伏図を重ね合わせると、戸建が多い低層住居専用地域の窪地で被害が発生していることがわかる。このように、PLATEAUが提供するデータに地域のさまざまなデータを重ね合わせて可視化することで今後の対策などに役立てられそうだ。
株式会社ドコモ・インサイトマーケティングでモバイル空間統計の事業を推進している加藤美奈氏は、人流データ「モバイル空間統計」×3D都市モデルの活用を提案。モバイル空間統計は、ドコモの端末情報を使って人流を計測したデータだ。1時間ごとの人口増減を性別や年代、居住エリア別にリアルタイムで把握できる人口マップを無償公開している。
2021年にNTTドコモを中心とした6社の連携で実施した「バーチャル銀座」の実証実験では、モバイル空間統計の人流データを使ってアバターの群衆として再現したという。人流データをPLATEAUの3D都市モデルと掛け合わせることで、防災計画やまちづくりのシミュレーションに活用できそうだ。
廣澤邦彦氏は、PLATEAUを使った環境シミュレーションを紹介。PLATEAUのCityGMLデータからXYZ座標を取得すれば予測用モデルを簡単に作成できる。さらに、PLATEAU VIEWで予測結果のデータを取り込み可視化した。
PLATEAU VIEWで表示した風況シミュレーションの例では、3Dの建物と合わせて風の流れを見ることができ、平面だけではわからない階高による風の強さなどが確認できる。風以外にも騒音や日照など、さまざまな環境情報を可視化すれば、都市開発や避難経路の計画などに活用できそうだ。
東京タワーと月面クレーターの大きさを比較する
東京大学で空間情報学を研究している平澤彰悟氏は、JAXAでインターンをした成果物として、月面データと地図データを重ねて月のクレーター(ケプラー)をわかりやすく可視化し、PLATEAUを大きさの比較に使うアイデアを発表。
JAXAのデータアーカイブ「DARTS」にある月周回衛星「かぐや」の月面データ(DEMデータ)からケプラー(月のクレーター)を出力し、PLATEAUからは東京タワーのデータをインポートしてクレーターに配置することで、クレーターの大きさが直感的にわかるように表現。同様に、台東区の街や東京都全体をクレーターに配置した例を紹介した。将来的にはVR化し、月面を身近に体験できるようなアプリを作ってみたいそうだ。
中学校の授業で3D都市モデルを活用
摂津市立第一中学校の2年生の5名は、「3D都市モデルを使った授業をやってみた」をテーマに内容と感想を発表。摂津市内の中学校2年生を対象にした職業体験プログラムとして、4カ月間・計12回の授業を実施した。「サスティナブルな摂津のまちを考えよう」「3D都市モデルの活用を考えよう」の2つの課題が与えられ、フィールドワーク・グループワークを通した調査を実施し、その結果を3D都市モデルと重ね合わせマッピングを行った。
プログラムに参加した5グループからは、障害者や高齢者が歩きやすい道を案内するアプリ、通学・通勤帰りに明るく安全な道がわかるアプリの開発などが提案された。良いアイデアは、WebGISツールの「Re:Earth」で授業のサポートを行った株式会社Eukaryaによって実現される可能性があるという。