デジタルツインの未来に、3D都市モデルPLATEAUはどう貢献するか
「PLATEAU CONNECT Session 02」レポート
PLATEAU CONNECT Session 02開催
PLATEAUとシビックテックの組み合わせによる可能性
現実の都市空間を3D都市モデルとして再現する国土交通省のプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」。そのPLATEAUを軸に、さまざまな領域の有識者が参加して、都市空間データを利用した新しい事業創造を社会全体で惹起していくためのトークセッションイベントが「PLATEAU CONNECT」だ。
12月に開催された第2回、Session 02の議題は「3D都市モデル×画像解析テクノロジーによるデジタルツインの実現」。オープンデータ化プロジェクトであるPLATEAUと、画像解析テクノロジーを掛け合わせることで生まれる可能性について議論された。
ゲストとして登壇したのは、アジア航測株式会社 DX事業推進室 技術部長の溝淵 真弓氏、株式会社パスコ 経営戦略本部 上席執行役員の橘 克憲氏、株式会社アーバンエックステクノロジーズ 代表取締役の前田 絋弥氏、スキャン・エックス株式会社 CEO 宮谷 聡氏、DataLabs株式会社 代表取締役社長の田尻 大介氏の5名。5社それぞれの事業領域を紹介しながら、会の後半は、国土交通省でPLATEAUプロジェクトを統括する内山 裕弥氏、東大IPC−東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 マネージャー(投資担当)の古川 圭祐氏がモデレーターを務めるトークセッション形式で進行した。
協業によるスピーディーなサービス提供が鍵
アジア航測株式会社
アジア航測株式会社は、航空測量事業を展開している企業で、自社で保有している機体を用い、航空カメラやレーザーで計測したデータを測量業界や、建設コンサルタントなどに向け提供している。
同社は、ドローンやスマートフォンからの映像情報を地図上にリアルタイム集約する技術を持つスタートアップ企業・株式会社リアルグローブへの出資や、大手企業と衛星データサービス企画株式会社を共同設立している。協業について溝淵氏は、「多岐にわたる領域をカバーしながら、スピーディーにサービスを提供するためには、自社だけで取り組むのではなく、他社と一緒にサービスを立ち上げていくことが必要になってきている」と話した。
AIを活用して航空写真の分析を自動化
株式会社パスコ
測量や計測事業の大手企業である株式会社パスコは、近年、AIを活用した事業展開を行なっている。例えば、建物の変化を画像解析することで、ソーラーパネルを使っている建物やメガソーラーの設置地点を自動抽出したり、航空写真から田畑や森林、宅地の土地被覆を自動で分類したりといった使い方だ。
また、災害対応にもAIを活用している。パスコ橘氏は、「2018年の北海道胆振東部地震の発生時は、土砂の移動痕跡を、100人以上のエンジニアが、相当の時間をかけて判読していた。いまでは、AIによるフィルターを活用することで瞬時に判読でき、その正解率も90%以上で十分に実用レベル」と話す。
「パスコの遠隔の視点、近接の視点両方からの分析・解析技術をPLATEAUにコネクトすることで、デジタルツインの時代を切り開いていけるのではないか」(パスコ橘氏)
“普通のドラレコ”を道路の総合管理に活用
株式会社アーバンエックステクノロジーズ
株式会社アーバンエックステクノロジーズは、画像認識技術や点群処理技術を用いた、都市空間の地物の認識や、車載カメラや大規模点群データを用いた都市インフラのデジタル化、データを活用した運行計画の最適化や人流・交通流のシミュレーションなどを総合的に手がける企業だ。
同社では、三井住友海上と協業して、損害保険の特約として顧客に配布している通信機能付きドライブレコーダーにソフトウェアを搭載することで、日本中の点検マップが作成されるという道路管理ソリューションを提供している。
法人向けにおよそ5万台、個人向けにおよそ数十万台を配布しており、複数の自治体での実証実験をして、商用リリースをしたばかり。アーバンエックステクノロジーズ前田氏は、「これまでのソリューションは、管理者が自分たちで車を走らせるか、測量会社が専用車でデータを取っていた。世の中にはたくさん車が走っている。(今回リリースしたサービスは)世の中に走っているたくさんの車を点検マップの作成に役立てられる」と話す。