3次元点群データを現場で活用。配筋検査を大幅省力化した「Modely」
DataLabs株式会社は、3次元データを活用した配筋検査自動化ツール「Modely(モデリー)」製品版の提供を2023年4月10日から開始した。検査対象の点群データを取得して配筋モデルを自動作成し、設計値との比較や帳票の作成も可能となっている。また、同ツールは、国土交通省の「デジタルデータを活⽤した鉄筋出来形計測の試⾏要領(案)」に準拠した「新技術」としての承認を獲得。配筋検査効率化を目的としたシステムでは業界初となる。
「Modely」は、レーザー光を照射して距離や形を計測する「LiDAR」搭載のiPadなどで検査対象をスキャンし、配筋の点群データをクラウドにアップロードすると、検査範囲を画面上で指定するだけで範囲内の鉄筋を検出し自動でモデル化することができる。
点群データや作成したモデル、帳票は施工者と発注者間でクラウド上で共有でき、任意の箇所にコメントや写真を付記するといったコミュニケーションも可能となっている。発注者側は現場立会の頻度を減らすことができるとともに、施工者側も複数人で行っていた検査を1人で実施できるため、配筋検査の省力化とコストの削減が期待されている。
DataLabs代表取締役の田尻大介氏は、「各地域の事業者の方たちと話してみると、鉄筋検査や配筋検査のやり方は長年あまり変わっておらず、非常に手間がかかっている。効率化したいという思いはあり、検査ツールがあることも知ってはいるがなかなか手を出せず、改善が進んでいない」と現状を語る。
配筋検査ツールはすでにいくつか存在するが、既存のツールは画像をベースにしたもので、写真を撮影して配筋の状態を点検するシステムになっている。しかし、夜間や強い日射下では十分な確認ができない場合があり、現場での目視が必要になる。また、鉄筋が直交する格子状の配筋には対応できるが、円形に並んだ配筋や環状のフープ筋には適用が難しく、ツールとあわせて人手による計測を行わねばならず、効率化が求められていた。
田尻氏は、「『Modely』は3次元データをベースにしており、従来の配筋検査ツールとは根本的にアプローチが異なる」という。
「例えば、基礎杭のような構造物だと配筋が“カゴ状”になるケースが多い。こうした場合、写真ベースだと精緻な値を得にくくなる。『Modely』では対象の周囲を回りながらスキャンし点群データをとって、クラウドにアップロードすれば自動で3次元モデルを生成でき、設計図と比較可能な状態にすることができる」と、その特徴を語る。
3次元データの特性を生かして、コンクリート表面から鉄筋外側までの「かぶり厚さ」の点検にも対応が可能。精度検証をしたところ鉄筋間隔の最大誤差0.3φ(0.3mm)以下、「かぶり厚さ」の最大誤差0.6φ(0.6mm)以下という精度が確認されている。
クラウドベースのブラウザアプリケーションとして開発されているのも、「Modely」の特徴のひとつだ。点群データや自動作成された3次元モデル、帳票など検収に必要なデータはクラウド上で共有でき、ソフトウェアをインストールする必要なく閲覧できる。これにより発注者は遠隔地から配筋検査を完了できる。
施工者にとっては「LiDAR」搭載のiPadやiPhoneがあればスキャンから帳票作成まで完結でき、他の専用デバイスなどが必要ないこともメリットとなる。従来の検査ツールでは専用のカメラや機材が必要で、月額20万円ほどの費用がかかるケースもあるという。「Modely」では年間100万円程度に抑え、中小規模の建設会社(土木分野)が導入しやすいものを目指している。
また、「Modely」は国土交通省中部地方整備局との「i-Constructionを推進するための現場ニーズ・技術シーズのマッチング」での現場試行の結果、「工程」「安全性」「施工性」の項目で「従来技術より極めて優れる」としてA評価を獲得。他の項目を含めた全項目でも「従来技術より優れる」として総合B評価を獲得し、「NETIS(新技術情報提供システム)」登録に十分な技術との評価を得た。
この結果を受け、「Modely」は「デジタルデータを活⽤した鉄筋出来形計測の試⾏要領(案)」に準拠した「新技術」として承認され、「国土交通省の直轄工事における新技術活用の推進」の対象となっている。配筋検査の効率化を目的としたシステムでは「新技術」としての承認は業界初になるという。
「『施工性』など重要な項目でA評価を得られたこと、様々な配筋検査ツールがある中で業界初となる『新技術』の評価を得られたことは、とても大きい。令和2年度から国土交通省発注の工事では『新技術』の導入が原則義務化されている。『Modely』は技術として、ツールとしてそこを目指してきた。今回ようやく実現できたと感じている」(田尻氏)。