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「最短1分手続き」利用者の体験を最適化するGovtechスタートアップのプロダクト

株式会社グラファー プロダクトマネージャー 畠山陽佑氏

連載
創業エンジニアが残すスタートアップ開発ログ

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いかに幅広い手続きに対応し、多くの人に使ってもらうか

 法人登記簿謄本の請求手続きで、私たちグラファーの世界観がマーケットに受け入れてもらえることはわかりました。しかし、利用者への手数料課金形式の提供方法は、この先の幅広い手続きに対応していくには良いアプローチとは言えません。手数料を支払ってでも使いたいと思ってもらうには、その体験が徹底的に作り込まれている必要があるため、時間がかかってしまいます。

 また、手数料課金形式では、どうしても対応できない手続きが残ったり、インフラという観点で見れば税金とは別で強いるコスト負担が大きくなります。グラファーの目指す「新しい手続きのインフラ」を作るには、幅広い手続きに対応しているだけではなく、多くの人に使ってもらえる状態でなくてはなりません。

 そこで、手続きの大本にある自治体に直接提供することで、手数料がかからない公式なサービスとすることができないか考えました。

 日本には1700以上の自治体が存在します。それぞれの自治体向けに個別システムを作り、提供するやり方では時間がかかってしまう上に、提供するたびにエンジニアが稼働しなければなりません。また、保守や運用のための人員も必要になります。そこで、それぞれの要件に合わせて設定ができるSaaSとしてのサービス提供を考えました。

 当時、自治体にSaaSが導入されたという話はほとんど聞いたことがなく、受け入れてもらえるか不安がありました。各自治体の担当者と話をしていく中で、まずは起点となるプロダクトを設計しました。すると「グラファーは利用者の体験を最適化するサービスを作り、多くの人に利用されている。市民のためになり、実際に利用されるものになるのであれば導入したい」と興味を持っていただける自治体が出てきました。

 SaaSであっても「利用者の体験を第一に最適化する」という考え方は変わりません。そんな中で、はじめて自治体に導入いただいたプロダクトが「Graffer 手続きガイド」でした。

 引越しや結婚などの何か手続きをしなくてはならないシーンで「何を準備してどこに提出すればいいのだろう」と調べる経験をしたことはないでしょうか。「Graffer 手続きガイド」では、画面に表示される質問に答えていくだけで、自分がやらなくてはならない手続きと必要書類・持ち物・担当窓口などの情報を知ることができます。

 さらに、このプロダクトは、安価かつスピーディーに導入することができます。どんな手続きでも質問や案内する内容をExcelファイルで定義することができ、できたファイルをシステムに入稿するだけで、専用のページが作れます。後はホームページにリンクを貼ってもらうのみ。

 

 この仕組みであれば、エンジニアの手を介さずに対応手続きを拡大していくことができます。

 他にも手続きのフェーズや状況に合わせた様々なプロダクトをSaaSで提供しています。先日リリースした「Graffer スマート申請」は、申請・本人確認・決済まですべてスマートフォンで簡単に行うことができる全く新しい申請体験を提供します。

 申請に必要な最低限の情報をフォームに入力し、本人確認が必要な申請の場合は、マイナンバーカードをスマートフォンにかざすだけ。手間はかかりません。支払いが必要な手続きであれば、キャッシュレスで決済も可能です。

 このような自治体向けプロダクトは、1つのプロダクトで手続き体験のすべてを作るのではなく、各手続きフェーズ・状況に最適化されたプロダクトを組み合わせて、手続き体験を提供しています。

 実は、先に紹介した法人向けプロダクトである「Graffer 法人証明書請求」も、今では「認証サービス」「決済サービス」「法人検索サービス」など複数に分割したサービスを組み合わせて作られています。これらの分割されたサービスは、どのプロダクトにも組み込めるようになっています。

 グラファーではこういったアプローチを採っていることで、プロダクトやサービスのそれぞれの専門領域で最適なUXやシステム構成を突き詰めることができ、高いメンテナンス性を維持しつつ、素早く開発・改善を行なっていくことができるようにしています。

*社内から創業エンジニアへのひとこと

エンジニアリングに閉じないプロダクトを

 我々が手掛ける「行政」ドメインは、IT活用が民間に比べて遅れているところも多く、テクノロジーを活用して価値発揮できる課題がたくさん存在しています。そのようなマーケットですから、「顧客の悩みやペインを元に、期待を超える解決策を考え、プロダクトのコンセプトに落とし込み実現させていく」といったことができる開発者によって、事業の幅、企業としての提供価値も広がっています。

 畠山が最初に作った「Graffer 法人証明書請求」もその一例です。toB向けのサービスの経験があり、製品のMVPを作るには十分な開発経験を有していた畠山によって、製品のコンセプトは実現され、多数のユーザー様にお使いいただける代表的な製品になりました。

 グラファーでは、このような事例は珍しくありません。実際に、「Graffer フォーム」「Graffer スマート申請」など、多数の製品がエンジニアの手により生み出されています。エンジニアリングに閉じず、ビジネスやユーザーの問題を斬新な発想や技術的なアイデアによって解決するチャレンジができるスタートアップとして、「新しい手続きのインフラ」を今後も提供し続けたいと思います。

 (株式会社グラファー VP of Product 本庄 智也)

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