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創業エンジニアが残すスタートアップ開発ログ 第5回

Activaid株式会社 エンジニアリングマネージャー 長野 拓義

最小限の開発で最大限の価値をもたらす難病患者特化ソーシャルサービスの作り方

2020年07月14日 09時00分更新

文● 長野 拓義 編集 ●ASCII STARTUP

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0→1は、起業家だけでは生まれない。先進スタートアップの創業期エンジニア・CTOは、どのような目線で製品やソリューション開発に取り組んでいるのか。最前線の開発者の生の声から、テックスタートアップの現在を追う本連載。第5回は、難病患者向けのプラットフォームを提供しているActivaidのエンジニアリングマネージャーである長野 拓義氏。

 こんにちは。Activaid 株式会社という難病患者向けのプラットフォームを提供している会社のエンジニアリングマネージャーをしています長野拓義(@takugi3)と申します。

 株式会社ニューズピックスにて、iOSアプリ、サーバーサイド、インフラなどの様々な領域での開発を経験した後、株式会社アラン・プロダクツにて新規事業立ち上げの開発をリードしてきました。

 その後、Activaid 株式会社に入社し、エンジニアリング業務全般、採用、プロジェクト管理を行っています。

医療への想いと代表との出会い

 僕は生まれてすぐに、大動脈弓離断症・心室中隔欠損症という病気で、手術をして救われた経験がありました。生まれてすぐのことなので当然記憶にはないのですが、幼い頃から家族や親戚から当時の話をしてもらうことは多く、自分を救ってくれた医療業界の課題をいつか自分がエンジニアの力で解決して恩返しをしたいという想いがありました。

 そんな中で弊社代表の長谷部靖明と出会い、製薬会社での経験に基づく、患者さんや新薬開発についての課題意識を共有してもらい、それを解決するためのサービスを今から作っていくという話を聞きました。

 長谷部が改善しようとしていることは非常に難しい課題だと思いましたが、それ以上に、世界的にも成功事例のない難病患者に特化したソーシャルデータプラットフォームの構築に始まり、病院や製薬会社の新薬開発の効率化やデジタル化をエンジニアリングの力を利用して推進していくこと、さらには、ゲノムデータや腸内細菌などの複雑なデータを含む、さまざまな医療データも取り込んでいき、データドリブンで患者さんや医療業界のステークホルダー全てを支える医療の新しい形を構築していくことにすごくワクワクしたことを覚えています。

 これらの実現には、広い領域の技術力や医療ドメインに対する理解が必要であり、エンジニアとしてハードルの高い挑戦ができると思い、入社を決めました。

待っていても新薬開発は進まないという課題

 代表の長谷部は製薬企業に勤めている際の原体験として、被検者の募集がなかなか進まないという治験プロジェクトを複数経験しています。要因はいくつもありますが、たとえば製薬企業は、直接患者さんに声をかけられないため、治験をお願いしている医療施設に患者さんが訪れるのを待つことしかできません。患者さんは新薬を待っている、また、製薬企業は早く患者さんに薬を届けたいのに、患者さんが集まらないので新薬の開発ができないという現状を内側からみてきました。

 このような課題を解決すべく、新薬開発の効率を向上させるために立ち上げたのがActivaid株式会社です。第一弾として、潰瘍性大腸炎やクローン病という炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)という難病に特化した患者向けのサービスを提供しています。炎症性腸疾患の患者は日本に30万人おり、日本人の約400人に1人に当たります。

 難病の中では最も患者数が多く、かつ若い頃に発症する割合が高いため、SNS等を利用する方がサービス成長の面でも有利に働くと考え、この疾患に絞ったサービスを提供することにしました。

 2019年2月に、慢性疾患を抱える患者がお互いに支え合い、病気を管理し、治療の新たな選択肢として能動的に治験を検討することをサポートするためのソーシャルデータプラットフォームActivaidをリリースしました。

 同じ疾患を持つ患者同士がコミュニティ内でサポートを得ながら情報交換をするだけでなく、診療で重視されるポイントに沿った毎日のデータ管理や参照、治験へのマッチング機能も提供しています。

 このサービスを通じて、誰しもが医療の発展に貢献できるような社会を作っていきます。

 2020年4月には、医療機関向けのサービスを開発し、炎症性腸疾患において国内トップの医療機関と共同で臨床研究を開始しました。PRO(Patient Reported Outcome:患者報告アウトカム)と呼ばれる患者自身の主観的な日々の症状や機能の程度を可視化でき、患者自身や医療従事者が的確に状態を理解することができるようになり、治療成績が向上することを期待しています。

 現在は、よりリッチで使い勝手の良いユーザー体験の構築を目指して、患者向けのiOSアプリの開発を進めています。

サービスを作る中で大切にしていること

 サービスを作る中では、いかにスモールに検証するかということを大切にしています。

 スタートアップにとって、PMF(Product Market Fit:顧客の課題を満たす製品が提供できており、かつそれが市場に受け入れられている状態) 前となる創業直後の段階では、エンジニア数が少ないこともあり、少しでも開発コストを減らす必要があります。

 作らずに検証する方法はないか、作らなくては検証が厳しいならば、検証するに足りていて最小の機能は何かを深く考える様にしています。今まで勤めた会社では、既にベースとなるサービスが存在していて、そのサービスのブランドを傷つけないためにも、より品質の高いサービスを品質の高いコードで作るかということを意識して、機能の追加を行っていました。

 しかし、Activaid に入社してからは、ベースのサービスがなく、ユーザーが利用してくれるかわからない機能に対して、品質の高さにこだわって検証サイクルを遅くすることが命取りになるということを強く意識する様になりました。日々ユーザーにヒアリングをしながら、できる限り、ユーザーに気に入ってもらえる可能性の高い機能を実装しているつもりですが、やってみないとわからないというのが正直なところです。

 スタートアップにおいて、エンジニアは作ることを楽しんでいる人が多い(これ自体は悪いことではなく、素晴らしいことです)こともあり、スモールな検証を強く意識しておかないとつい過剰なものを作ってしまい、スケジュールに間に合わないことはあると思います。

 上述した医療従事者用サービスの開発においては、患者の入力データ全てを閲覧可能にするのではなく、医療従事者のユースケースについてのヒアリングを行い、必要な情報を必要なタイミングに絞って閲覧できる様にしました。実際に、サービスを利用してもらう中で、不足している情報やユースケースがわかれば、それを満たすために必要な機能は何か、外部サービスを使えないかなど考えた上で、追加するという方法をとることで、最短、最小で納得感を得られるサービスに近づけたと思います。

 今までは品質の低いコードを見た際、なぜそのようなコードになったのだろうとだけ思っていましたが、このような経験から企業のフェーズによる優先順位の付け方によっては、ある意味でコードの品質を後回しにするケースが発生することはありえると考える様になりました。

 最近は、品質の低いコードがどの程度事業の成長を妨げるのかを認識し、フェーズによって、適切なリソースを配分して改善しながら、向き合っていくことが大切だと思っています。

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