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STARTUP×知財戦略 第41回

「スタートアップ×知財コミュニティイベント by IP BASE in 京都」レポート

時期、スピード感、ライセンス交渉 大学発ベンチャーの知財戦略

2020年02月06日 09時00分更新

文● BookLOUD 根本 編集●ASCII STARTUP 撮影●高橋智

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進士:次に知財ポートフォリオをどうするか。いかに事業の独占性を担保するか。大学発ベンチャーは基本的に大学の特許をもとにして事業を行なっている。ではその大学の特許は譲渡してもらわないといけないのか、少なくとも独占的実施権の設定が必須なのか。

上野:独占的通常実施権のようなものがないと、VCとしては投資しづらい。譲渡の方が良いのかというと個人的には必ずしもそうとは思わない。大学から譲渡してもらってどこに行くかわからないよりも、独占的通常実施権で一緒にシーズを育成していくという形が望ましいかと思う。

魚谷:基本的には上野さんと同じ考え。ただし、一部のITベンチャー等については独占的実施権までは必須ではないのかもしれない。たとえばAIのように学習すればするほどアルゴリズムが強化されるような仕組みがあれば、先行者利益が非常に大きく、それによって十分に参入障壁を築くことができる可能性があるため。

大阪大学ベンチャーキャピタル 投資部 シニアキャピタリスト 魚谷晃氏

古橋:いきなり譲渡となるとベンチャー側も困るかもしれないし大学側からしてもリスキーと思うかもしれない。だから始めは通常のライセンスでやって、あるステージに来たときに譲渡を検討することも考えられる。たとえばベンチャーとして権利を持っていた方がそのあとのハンドリングなどがしやすいとケースだとか。第三者から攻め込まれる場合はその時に大学が権利を持っていて大学が戦うのか検討する。あるステージに来ていて大学とベンチャーの間に信頼関係が構築できていたら、そのタイミングで権利の全部もしくは一部を譲渡して、ということも考えていかなくてはならないのではないか。

進士:譲渡してもらったけれど、結局あとで使わなくなったという特許も出てくる。そうすると譲渡にかけたコストが無駄になるケースもある。だから最初は独占的通常実施権などにし、その契約が終わるときに買い取るというオプションをつけた契約内容にするのがいいのではないかという専門家からの意見もあった。

進士:大学と他企業との共有特許を使いたいときどうすればよいのか。

古橋:避けることができるなら避けるという手もあるが、大学と他企業の共同特許をベンチャーが使いたいとなったとき、ベンチャーと組んだ方が他企業の事業が進むのであれば、ベンチャーにも実施権を与えることでビジネスが加速しますよ、という提案をTLOからさせてもらうこともある。

魚谷:大学と特許権を共有する企業が、ベンチャーへのライセンスについてNOと言えない環境を構築することに尽きる。そのために企業に権利を譲渡してもらうとか、企業にベンチャーに資本参加してもらうなどのケースが多い。

上野:コア領域にしようと思ったがノンコアになってしまったとかいうケースもあると思う。そういう場合に、他企業からしたらその特許が活用できるならチャンスになるし、他企業からそれに従事していた研究者がスピンオフするという形も考えられる。

進士:最後に皆さんからベンチャー関係者に向けてアドバイスを頂きたい。

上野:特許の独占性や強さは1つの特許だけでは守れない。複数の特許をどう組み合わせれば事業を守れるかを考えなくてはならない。(弊社の投資は)株式の投資になるのでそのあとなかなか縁を切れない。そういう観点から、この人だったら家族になれるなと思ったら投資する。

魚谷:知財は未来に対するアクション。5年後10年後に企業としてこの分野を攻めたいとか、こういう敵が攻めてくるかもしれないからプロテクトしておきたいといったアクションだと思っている。良い特許を出願できていないということは、5年後10年後の会社のあるべき姿を描けていないということ。だからベンチャー側には最初にそこをちゃんと考えましょうよと言いたいし、一緒にやっていきたい。大学側には、ベンチャーが将来構想を語っているときに、夢物語を言っているなというようなことを言わないで優しく接してほしい。

古橋:競合技術の情報を解析したうえで、どこを狙っていくのが一番良いのか、十分調査・解析した上でやっていかないとあとあと大変になる。そういうところをベンチャーと一緒に戦略的に考えていけたらと思う。

株式会社TLO京都 取締役 京大事業部門 事業部門長 古橋寛史氏

山本:研究者だと似たような考え方の人の中にいることが多い。いろんな人の立場で考えるということを心掛ける。お互いを理解することになるし、自分の成功にもつながる。いろんな人に助けを求めるのが大事。自分の力だけで解決できることは少ない。

 京都初の知財イベントだったが、大学関係者や知財関係者など多くの出席者が集まった。イベント後には出席者同士での名刺交換やコミュニケーションが予定時間を過ぎても続くなど、今後に続く熱気を感じた。これは関西の大学発ベンチャーへの投資が増え続けている状況を反映しているのだろうと思う。

 進士氏からのプレゼンテーションにもあった通り、日本の大学は多くのシーズを保有しているにもかかわらずその社会実装をうまく進めることができていなかった。ベンチャーが活気づけばその状況にも変化があるに違いない。関西からさらに多くのベンチャーが世界に羽ばたくことを期待する。

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