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最新パーツ性能チェック ― 第264回

この逆転劇はCPUの歴史に残る

シングルスレッドもインテル超え!第3世代Ryzenは遂にメインストリームの頂点に

2019年07月07日 22時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラハッチ

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前世代の欠点が次々と消滅

 マルチスレッドが効くテストとしてCGレンダラー「V-Ray」をベースにしたベンチ「V-Ray Next Benchmark」でも検証してみよう。GPUで実行するテストもあるが、今回はCPUだけを使うテストのみを実施し、スコアーを比較する。

「V-Ray Next Benchmark」のスコアー

 ここでも12コア24スロットのRyzen 9 3900Xがダントツで速い。Ryzen 7 3700XはややCore i9-9900Kより遅いが、第2世代のトップRyzen 7 2700xに比べると大きくスコアーを伸ばしている。ブーストクロックが0.1GHzしか伸びていないのに20%弱もスコアーを伸ばしているのは、キャッシュ容量の倍増やコアそのものの処理効率の向上が相当効果を上げていることを示している。

 CGレンダリング系のもうひとつの例として「Blender」でも試してみた。使用するシーンは「Gooseberry Production Benchmark」であり、1フレームのみをCPUでレンダリングする時間を計測する。

「Blender」のレンダリング時間

 CINEBENCHやV-Rayと異なり、結果が処理時間なのでグラフの短い方が高速。つまりここでもCore i9-9900Kよりも圧倒的にRyzen 9 3900Xが速く、Ryzen 7 3700Xは9900Kに肉薄する結果を出している。ここまでやればもう“CINEBENCH番長”と言う必要もないだろう。つまり単純に第3世代Ryzenは速いのだ。

 マルチスレッド性能が重要な処理の例として「Media Encoder CC」でもテストした。「Premiere Pro CC」を利用して約3分半の4K動画にまとめ、それをMedia Encoder CCのキューに入れMP4形式に書き出した時の時間を比較する。コーデックはH.264とH.265の2種類を使用し、前者はビットレート80Mbps〜95Mbps、後者は25Mbpsでエンコードする。どちらも1パスエンコードだ。

「Media Encoder CC」における4K動画書き出し時間

 Adobeの採用している動画エンコーダーは、AMD製CPUではあまり芳しくない結果を出すことが知られている。Core i9-9900K有利かと思われたが、ここでもRyzen 9 3900Xは順当な強さを発揮、さらにRyzen 7 3700XはCore i9-9900Kとほぼ同程度どころか、H.264ではわずかに処理速度で上回っている。AMD系CPUに不向きであるという常識は、第3世代Ryzenで見事解消されたのだ。

 特に興味深いのはH.265の処理時間だ。Ryzen 7 2700Xの結果にある通り、これまでのRyzenだとH.264はそこそこ速かったが、H.265になるとなぜか処理が激重になる、という傾向があった。第3世代Ryzenではこの欠点も解消されている。

 もうひとつ動画エンコード例として「Handbrake」を利用する。再生時間約5分の4K動画を、フルHDのMP4形式に書き出す時間を比較した。エンコードの設定はプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」、つまりx264エンコーダーを使いプロファイルは“High”&“Very Slow”にしたもの、さらにその設定をほぼ継承し、エンコーダーをx265の“Main”&“Slow”としたパターンも用意した。両者ともQFは18、2パスエンコードで処理を行なう。

「Handbrake」による4K動画書き出し時間

 Ryzen 7 2700Xのx265だけやたら時間がかかっているが、これはx265で使われるAVX2命令に関係がある。第2世代Ryzenまでの浮動小数点パイプラインは128bitだが、x265で使われる256bitのAVX2命令を処理する場合、2つの処理に分けて実行するため非常に効率が悪かった。

 だがインテル製CPUや第3世代Ryzenでは256bitのまま1回の処理で実行できる。一見単純なような差だが、これが恐ろしい違いを生んでいたのだ。浮動小数点演算のスタイルをインテルに寄せただけだが、また欠点がひとつ減ったわけだ。

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