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最新パーツ性能チェック 第438回

中国向け「Radeon RX 7900 GRE」が突如一般販売開始。その性能はWQHDゲーミングに新たな境地を拓く?

2024年02月26日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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 2024年2月26日、AMDは「Radeon RX 7900 GRE」の販売をグローバル市場向けに解禁した。このRX 7900 GREは2023年7月に中国市場向け製品として発表済みであるため、型番だけはご存じの方もいるだろう。

検証用にお借りしたASRock製「AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC」。耐久製重視設計を売りにしたトリプルファン搭載の大型カードだ。価格は“だいたい10万円くらい(メーカー談)”

 RX 7900 XTとRX 7800 XTの間に位置付けられるGPUであり、AMDはRX 7900 GREを、WQHD環境でレイトレーシングを含めた画質を盛った状態でも快適にゲームが遊べるGPUであると謳っている。ちなみにGREとは“Golden Rabbit Edition”の略だ。

 RX 7900 GREのグローバル向け解禁にあたり、AMDはRX 7900 GREの北米予想価格を549ドルと発表した。昨年の発表では649ドルスタート、そこから100ドル値下げされてグローバル市場向けに投入されたことになる。本稿解禁直前にキャッチした情報によれば税込10万円前後とのこと。

 RX 7900 GREの仮想敵は「GeForce RTX 4070 SUPER(599ドル)またはRTX 4070(549ドル)」ということだが、RTX 4070 SUPERの“NVIDIA公式予想価格モデル”が税込9万5480円で実際のボリュームゾーンはもっと上であることを考えると、この円安状況でかなりがんばった価格設定といえるだろう。

 今回筆者は幸運にもASRock製「AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC」をお借りしテストする機会に恵まれた。すでにスペックから性能的なデータまでネットを探せば情報が出てくるGPUではあるが、改めて既存のRadeonやGeForceと比較しつつ、どのような製品か検証していきたい。

カード表面:中央のファンはRGB LEDによってライトアップされるが、強制消灯することもできる。透明素材で作られたファンブレードを通して内側にあるヒートパイプやフィンの本数や密度がわかるはずだ

カード裏面:ファンの空気を表面に吹き抜けさせる定番の設計だが、完全に吹き抜けになっている部分はカード後部の2割程度の部分にとどまる

補助電源コネクター:本製品はファクトリーオーバークロックモデルではあるが、補助電源コネクターは8ピン×2構成にとどまる。このコネクターのすぐ隣にファンのRGB LEDを強制消灯させるスイッチを備える

映像出力:DisplayPort×3とHDMI×1というごく一般的な構成

MCDの数を調整することでスペックを調整

 RX 7900 GREの特徴を一言でいえば、RX 7900 XT/ RX 7900 XTXと同じNavi31ベースのコアを使用しつつ、VRAMを16GB&256bit幅に抑えたという点だろう。CU数はRX 7900 XTの84基から80基とさほど変わっていないが、メモリーバス幅を320bit→256bitに、GDDR6のデータレートを20GB→18GBに絞ったことでメモリー帯域は最大800GB/秒→最大576GB/秒(RX 7900 XTの72%)にまで絞り込まれた。

 格下のRX 7800 XT(Navi32)のメモリー帯域が最大624GB/secだったことを考慮に入れるとRX 7900 GREのメモリー帯域はかなり絞られてしまった印象がある。しかしRX 7800 XTに対してはCU数において1.33倍と数において勝っており、付随するROPやテクスチャーユニットなどの描画性能を左右するユニット数においても同様にRX 7900 GREの方が優勢とすることでバランスをとっているようだ。

 またBoard Power、即ち消費電力に関してはRX 7800 XTよりも3W低い260Wに設定されている点もおもしろい。メモリークロックだけでなくGPUコアもクロックを絞ったが故の260Wという値だが、今回の検証用カードのようにファクトリーオーバークロックモデルでは実消費電力はもっと増える可能性がある。

RX 7900 GREのスペック:近傍の製品との比較
  RX 7900 XT RX 7900 GRE RX 7800 XT
アーキテクチャー RDNA 3 RDNA 3 RDNA 3
製造プロセス TSMC 5nm+6nm TSMC 5nm+6nm TSMC 5nm+6nm
CU 84基 80基 60基
SP 5376基 5120基 3840基
Ray Accelerator 84基 80 60基
AI MATRIX Accelerator 168基 160基 120基
ROP 192基 160基 96基
テクスチャーユニット 336基 320基 240基
ゲームクロック 2025MHz 1880MHz 2124MHz
ブーストクロック 2400MHz 2245MHz 2430MHz
メモリーデータレート 20Gbps 18Gbps 19.5Gbps
搭載メモリー GDDR6 20GB GDDR6 16GB GDDR6 16GB
メモリーバス幅 256bit 256bit 256bit
Infinity Cache 80MB 64MB 64MB
PCI-Express Gen4x16 Gen4x16 Gen4x16
TBP/Board Power 315W 260W 263W
補助電源コネクター 8ピン×2 8ピン×2 8ピン×2

RX 7900 GREの情報:「GPU-Z」で取得。昨年の段階から存在しているGPUなので特に不明な情報はない。メモリーバス幅256bitに注目

 RX 7900 GREがNavi31を使いつつメモリーバス幅256bit仕様で出せているのは、RDMA 3より採用されたチップレットデザインの柔軟性が多いに貢献している。RDNA 3ではGPUの中核部が収容されているGCD(Graphics Compute Die)とは別に、16MBのインフィニティキャッシュと64bit幅のメモリーコントローラーを一体化したMCD(Memory Cache Die)があるが、RX 7900 GREはGCD×1に対しMCDを4つに絞ることでメモリーバス幅256bit仕様を実現している。

 RX 7900 XTXのMCDは6基で384bit幅、RX 7900 XTのMCDは5基で320bit幅ということを知っていれば改めて解説する必要のない話だが、RX 7900 GREはRDNA 3の設計的柔軟性がなければ生まれなかったGPUである、という点は強調しておきたい。

GCD/ MCDの構成:「HWiNFO Pro」ではMCDごとに設置されている温度センサーを経由してMCDホットスポット温度が取得できる。センサーの数=MCDの数であるため、RX 7900 GREのMCDは4基であることがわかる

 RX 7900 GREのその他の特徴は既存のRX 7000シリーズの特徴と合致する。即ちAI処理専用(今だどんなアプリで効くのか明確になっていないのが残念だが)のAI Matrix Accelerator、AV1エンコードやDisplayPort2.1といった特徴であるが、特にRX 7900 GREで新規要素はないので解説は割愛する。

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