ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第749回
生成AI向けGPU「Instinct MI300X」はNVIDIAと十分競合できる性能 AMD GPUロードマップ
2023年12月11日 12時00分更新
AMDは米国時間の12月6日に、"Advancing AI"イベントを開催し、ここでいくつかの新製品や新情報を発表した。タイトルのとおりAIに絡んだ話ではあるが、そのAI向けの新CPUなども一緒に情報解禁されたので、このあたりをまとめて解説しよう。
"Hawk Point"ことRyzen 8040シリーズを発表
Meteor Lakeを牽制か?
まずはクライアント側であるが、Hawk PointことRyzen 8040シリーズが発表された。
そのSKUだが、上の画像ではわかりにくいので、ここに出てきていないベースクロックを追加したうえでSKU別に並べなおしたのが下表である。
Ryzen 8040シリーズのスペック | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Model No. | Core/ Threads |
CPU Base |
CPU Max Boost |
GPU | CU数 | GPU Freq |
Ryzen AI | Default TDP |
Ryzen 9 8945HS | 8C/16T | 4.0GHz | 5.2GHz | Radeon 780M | 12 | 2.8GHz | ○ | 45W |
Ryzen 7 8845HS | 8C/16T | 3.8GHz | 5.1GHz | Radeon 780M | 12 | 2.7GHz | ○ | 45W |
Ryzen 7 8840HS | 8C/16T | 3.3GHz | 5.1GHz | Radeon 780M | 12 | 2.7GHz | ○ | 28W |
Ryzen 7 8840U | 8C/16T | 3.3GHz | 5.1GHz | Radeon 780M | 12 | 2.7GHz | ○ | 28W |
Ryzen 5 8645HS | 6C/12T | 4.3GHz | 5.0GHz | Radeon 760M | 8 | 2.6GHz | ○ | 45W |
Ryzen 5 8640HS | 6C/12T | 3.5GHz | 4.9GHz | Radeon 760M | 8 | 2.6GHz | ○ | 28W |
Ryzen 5 8640U | 6C/12T | 3.5GHz | 4.9GHz | Radeon 760M | 8 | 2.6GHz | ○ | 28W |
Ryzen 5 8540U | 6C/12T | 3.2GHz | 4.9GHz | Radeon 740M | 4 | 2.8GHz | × | 28W |
Ryzen 3 8440U | 4C/8T | 3.0GHz | 4.7GHz | Radeon 740M | 4 | 2.5GHz | × | 28W |
Ryzen 7040シリーズのスペック | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Model No. | Core/ Threads |
CPU Base |
CPU Max Boost |
GPU | CU数 | GPU Freq |
Ryzen AI | TDP |
Ryzen 9 7940HS | 8C/16T | 4.0GHz | 5.2GHz | Radeon 780M | 12 | 2.8GHz | ○ | 35-54W |
Ryzen 7 7840HS | 8C/16T | 3.8GHz | 5.1GHz | Radeon 780M | 12 | 2.7GHz | ○ | 35-54W |
Ryzen 7 7840U | 8C/16T | 3.3GHz | 5.1GHz | Radeon 780M | 12 | 2.7GHz | ○ | 28W |
Ryzen 5 7640HS | 6C/12T | 4.3GHz | 5.0GHz | Radeon 760M | 8 | 2.6GHz | ○ | 35-54W |
Ryzen 5 7640U | 6C/12T | 3.5GHz | 4.9GHz | Radeon 760M | 8 | 2.6GHz | ○ | 28W |
Ryzen 5 7545U | 6C/12T | 3.2GHz | 4.9GHz | Radeon 740M | 4 | 2.8GHz | × | 28W |
Ryzen 5 7540U | 6C/12T | 3.2GHz | 4.9GHz | Radeon 740M | 4 | 2.5GHz | × | 28W |
Ryzen 3 7440U | 4C/8T | 3.0GHz | 4.7GHz | Radeon 740M | 4 | 2.5GHz | × | 28W |
Phoenixこと7040シリーズと比較した場合、若干SKUの数が増えているように見えるのだが、よく見ると例えばRyzen 7 8840HSとRyzen 7 8840U、あるいはRyzen 5 8640HSとRyzen 5 8640UはデフォルトTDPまで含めてスペックが同一(28W)で、cTDPの範囲がUは15~30W、HSは20~30Wなのが唯一の違いである。
Ryzen 7040HSシリーズの場合、デフォルトTDP/cTDPともに35~54Wだったので、これは型番だけHSを付けているものの、実質的にはHSシリーズを減らしたようなものである。一応まだ35~54W枠(デフォルトTDP:45W)の製品も3つ残ってはいるが、これは今のところHSシリーズの売れ行きが今一つということなのかもしれない。
話を戻すとコア数や動作周波数、GPUの動作周波数なども7000シリーズと8000シリーズでは完全に同じ構成であるのが表からわかる。ではなにが違うのか? というとRyzen AIの性能で、7000シリーズはRyzen AIの性能が10TOPSなのに対し、8000シリーズは16TOPSになっている。
要するにNPUの性能の底上げが最大のポイントである。実際イベントの中ではこれに合わせ、マイクロソフトがCoPilotなどでこのNPUを利用することを発表しており、NPUの性能が差別化要因になることをアピールした。
問題はこのNPUの性能底上げをどうやって実現したか、である。今年1月のCESでPhoenixが発表されたときのダイレイアウトと、今回発表されたRyzen 8040シリーズのダイレイアウトがまったく同じであり、そう考えるとNPUのエンジンそのものを1.6倍に増やしたという可能性は非常に低い。普通に考えて、NPUの動作周波数を1.6倍に上げたのだろう。要するにHawk PointはPhoenixのリフレッシュ版で、NPUだけ動作周波数を上げたものと考えればいい。
なぜこのような製品を今発表したか? というのもわかりやすく、Meteor Lake登場前の軽いジャブみたいなものだろう。Meteor LakeもやはりNPU性能を売りにしているという話は連載740回で説明した通りであり、これに対する軽い先制攻撃といったところか。
ただ本命はこれに続くStrix Pointの方であり、こちらはHawk Point比で3倍のNPU性能となるXDNA2が搭載されると説明されている。現時点ではどんな構成になるのかは明らかにされていない。登場時期は2024年中とだけ説明されているが、その2024年中にインテルはMeteor Lakeに加えてArrow Lakeも投入予定なだけに、具体的な登場時期が気になるところだ。
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