このページの本文へ

最新パーツ性能チェック 第264回

この逆転劇はCPUの歴史に残る

シングルスレッドもインテル超え!第3世代Ryzenは遂にメインストリームの頂点に

2019年07月07日 22時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラハッチ

sponsored

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

第3世代Ryzenで変わること、変わらないこと

 では第3世代Ryzenを使う上で注目すべきことや注意すべきことについて簡単にまとめておこう。

1)既存のSocket AM4マザーボードで使う際はBIOS更新が必須

 第3世代Ryzenでもソケット形状はAM4のままであるため、既存のRyzen用マザーボードがそのまま利用できる。ただしその場合第3世代Ryzen(Ryzen 3000シリーズと表記する場合も)に対応したBIOSに「前もって」更新しておく必要がある。既にSocket AM4マザーボードがあってそれを使う場合は事前に対応BIOSへ更新してからCPUを購入しよう。

 また、現在店頭に並んでいるSocket AM4マザーボードの場合は、BIOSが更新済みであるかパッケージのステッカー等で確認できれば安心して購入してよい。最新の「X570」マザーボードなら確実に動作するだろうが、X570マザーボードは全体的に値段が高めであるため、コストを抑えたいならB450マザーボードと組み合わせるのが最も費用対効果が良くなる。

第3世代Ryzenに合わせマザーボードも新調する場合は、パッケージにこんなステッカーが貼ってあるものをチョイスしよう。このステッカーが貼ってあれば、第3世代Ryzen対応BIOSが入っている

第3世代Ryzenのポテンシャルをフルに活かしたいなら、PCI Express Gen4に対応したX570マザーボードを選ぶのがベストだ。これならBIOS対応に悩む必要もない。ただハイエンドなので製品はそれなりに高価だ。写真はASRock製の「X570 Taichi(左)」と、GIGABAYTE製「X570 AORUS MASTER(右)」だ

手持ちのSocket AM4マザーボードに第3世代Ryzenを載せる場合は事前にBIOSを「AGESA 1.0.0.2」の入った最新バージョンにしておこう。マザーボードのBIOSによっては前段階的バージョンに上げてからでないと更新できないことがあるので、注意書きをよく読むべし。図はGIGABYTE製のX470マザーボード「X470 AORUS GAMING 7 WiFi」におけるBIOS更新情報

2)メモリーはDDR4-3200まで対応

 メモリーは従来どおりデュアルチャンネルのDDR4だ。正式対応する最大クロックは3200MHz、即ちDDR4-3200までとなるが、DDR4-3200が確実に動くのは2枚挿しまで。4枚挿しの場合はDDR4-2933もしくはDDR4-2667に速度を落とさなければならないこともあり得る。メモリーの品質が十分高ければ4枚でもDDR4-3200で動く可能性も高くなるので、メモリーを山ほど詰みたければそれなりに質の良く動作クロックの高いモジュールを買う、あるいはショップの相性保証等でカバーできないか相談する等の工夫をしよう。

ASRock「X570 Taichi」のマニュアルから抜粋。A1~B4までがメモリースロットで、SRまたはDRが挿すメモリー(シングルランクならSR、デュアルランクならDR)、右端が対応するクロックを示す。SRでもDRでも2枚までならDDR4-3200で動く(可能性が極めて高い)が、4枚ともDRだとDDR4-2666にまで落とさないと動かないかもしれない……ということを意味する

高品質なメモリーモジュールであれば、4枚挿してもDDR4-3200動作は難しくない。今回メディアキットに付属していたG.Skill「Trident Z Royal」のようなプレミアム感のあるメモリーでなくても、一流ブランドのモジュールをチョイスしたい。可能であればマザーボードやCPUと一緒に買っておくとサポートも得やすい

3)PCI Express Gen4対応は急がなくてもよい

 第3世代Ryzenの売りのひとつに、PCI Express Gen4に対応しているということがある。今まで使われてきたGen3の2倍高速であるため、SSDや10ギガビットイーサを運用する場合バスのボトルネックが解消される。既にPCI Express Gen4対応のSSDはGIGABYTEを筆頭に既に販売が始まっている。「Radeon RX 5700シリーズ」もPCI Express Gen4に対応している。

 だがPCI Express Gen4を利用するには、CPUは第3世代Ryzen、マザーボードがX570という組み合わせでないといけない。マザーボードがX470やB450といった既存のチップセットならば、PCI Express Gen3として動作するようになる。

 PCI Express Gen4対応のSSDはGen3世代にに比べそれなりに高速だが、発熱量も大く値段もまだ高め。ビデオカードについては割高感はないが、PCゲームで性能を体感することはできない。ビデオカードの検証に関しては、同日公開の別記事を参照して欲しい。

 第2世代Ryzen+旧世代マザーボードの場合、M.2スロットが2本しかなく片方はチップセット制限からGen2接続になるというデメリットが自由なパーツ構成を阻んでいる面があった。だがX570にするとチップセット側もGen4で、かつ16レーン引き出せるため3本のM.2全てがGen4対応(1本はCPU直結)になる。ここにGen3のSSDを挿しても既存のチップセットのように1本は低速になる心配もない。

 ちなみに、第3世代RyzenのPCI Expressのレーン数は“X570を利用した場合最大40レーン”という非常に紛らわしい書き方がされていることがあるが、CPU単体ではグラフィック用に16レーン、NVMe M.2用に4レーン、チップセット接続用に4レーンの24レーンが使用可能である。これに対しX570は最大16レーンとなっている(つまり、I/Oとして使えるPCI Express Gen4はCPUとX570合わせて最大36レーンとなる)

X570チップセットと第3世代RyzenのPCI Express Gen4やUSB3.1の数等を比較した表(AMD資料より抜粋)。第3世代RyzenのCPUから出るPCI Express Gen4は24レーンで、うち4レーンはチップセットとの接続に使われる

PCI Express Gen4に対応したSSDの代表例としてGIGABYTE製「GP-ASM2NE6200TTTD」を紹介しよう。Phison製のコントローラーを採用し、シーケンシャルリードは最大5000MB/sec。Gen3だと3000MB~3400/secなので相当なスピードアップが期待できる

ただしPCI Express Gen4対応のSSDは高熱を発するため、GIGABYTEは専用の超肉厚な銅製ヒートシンクを同梱している。X570 Taichiのように複数のヒートシンクが一体化しているマザーボードの場合は、この銅製ヒートシンクは使えない。マザーボード側のヒートシンクを使うことになる

PCI Express Gen4にいち早く対応したGPU「Radon RX 5700XT」のリファレンスカード。もちろんPCI Express Gen4に対応しないマザーボードに接続しても利用できる。ビデオカードのGen4はゲームでその効果を実感できるシーンは存在しない

4)OSはWindows10 1903にする

 最新ハードではWindows10しかサポートしないのが最近のお約束だが、Ryzenを使うならWindows10の最新ビルド1903(May 2019 Update)を導入しよう。これまでRyzen系CPUのクロックはアイドル時の低クロック状態から実際に処理する際の高クロック状態へ移行するタイムラグが30ミリ秒と長く、処理性能の足を引っ張っていたのだが、ビルド1903よりそれが1~2ミリ秒に大幅に短縮された。まだ1903の不具合報告が散見される状況だが、第3世代Ryzenを使うなら思い切って1903の導入をオススメしたい。ちなみに今回の検証においても、AMDは1903環境でのテストを指定している。

 以上の事柄をまとめると、CPUパワーを手軽にパワーアップしたいなら、既存のSocket AM4マザーボードに第3世代Ryzen対応BIOSを導入し、CPUだけ第3世代Ryzenを買うのが一番良い。動画編集等で巨大なファイルを快適に読み書きしたいなら第3世代Ryzenに加えX570マザーボードとPCIExpress Gen4対応SSDをセットにしておこう。メモリーはDDR4-2666や2933のままでもよいが、ベストなパフォーマンスにしたいなら質の良い(別に光らなくても良い)DDR4-3200モジュールの2枚セットを導入しよう。

 ビデオカードについては完全にお好みで、PCI Express Gen4にしなければならない理由は今の所ない。だがフルHD~WQHDで快適にゲームを楽しみたいなら、Radeon RX 5700シリーズは非常に賢い選択だ。

カテゴリートップへ

この連載の記事