課題はデータ処理にある
ここまでご覧いただいて、冒頭の生活のすべてにイメージセンサーが使われるということを理解いただけましたでしょうか。食べ物を育て、収穫するところから、店舗に送り届ける、店舗で販売するという所まですべてにイメージセンサーが使われることになるのです。もちろん、食品を加工したり、箱詰めしたりする作業も、ロボットが行ないますので、ロボットの目としてイメージセンサーが使われることになります。
日本をはじめとする先進国では、今後、若年層が減り、人手不足が進むと言われています。より高効率で安全な社会に変わっていく必要があることは、間違いありません。これまでのように、写真を撮影し、鑑賞して楽しむ用途だけでなく、防犯カメラや車載カメラのように安全を得るためにイメージセンサーが使われるようになって来ています。さらに、今後はサービス業や農業・漁業のような分野を変えていくことができると、より高効率な社会を作ることが可能となってきます。イメージセンサーはそれを実現するための非常に重要な構成要素になります。
ただし、まだ課題も存在します。一例をあげると、高速の動画や距離情報を多くのイメージセンサーで撮影した場合の多量のデータと、それを解析する処理能力です。より多くの用途に、より便利に、イメージセンサーを使おうとすればするほど、データ量は膨大になってきます。それらをリアルタイムに処理をすることは、非常に難しいことです。この課題に対しては、現在、イメージセンサーから必要な情報のみを取り出してデータ量を減らす試みや、AIをより高速処理するような試みがなされています。
こういった課題が解決されていき、イメージセンサーがさらに進化することにより、美しい写真をとることができるだけでなく、安全で安心な世界がやってきて、さらには人手不足まで解消できることがおわかりいただけたでしょうか。イメージセンサーは、よりよい未来を作っていく重要なアイテムなのです。
アスキーエキスパート筆者紹介─田谷圭司(たたにけいじ)
大阪大学大学院物理学専攻修了後、大手電機メーカーにて半導体開発に従事。2003年ソニー株式会社に入社し、以降、一貫してイメージセンサーの開発を行っている。現在は、ソニーセミコンダクタソリューションズで、主にMobile製品向けのイメージセンサーの開発を行っている。