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アスキーエキスパート第60回

「とりあえずアクセラレータープログラム」で事業を創ることはできない

2019年03月28日 09時00分更新

文● 中村 亜由子/アスキーエキスパート

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国内の”知の最前線”から、変革の先の起こり得る未来を伝えるアスキーエキスパート。eiicon(パーソルキャリア)の中村亜由子氏による大企業とスタートアップによるオープンイノベーション取り組みの実像についてお届けします。

 オープンイノベーションにおいて、共創パートナー発掘は必須のステップだ。技術マッチング支援業者・コンサルティング会社への依頼や、投資会社・金融機関など技術ベンチャーやスタートアップとのリレーションを持つ企業からの紹介・仲介、さらにはアクセラレータープログラム運営による公募、コーポレートベンチャーキャピタルの設立や、VCへのLP投資、M&Aなど多数の手順があるが、一部では問題も見えてきている。

 今回は、とにかく実施数が増え続けていて、しかし実はその拡大の裏で実施を取りやめ始めた企業も一部出ている「アクセラレータープログラム」について紐解いていく。

日本のオープンイノベーション元年となった2018年

 「オープンイノベーション」「共創」という言葉が、世間一般的に使われ始めた2017年。

 翌2018年はその言葉が現場レベルまで浸透を始めた年となった。2~3年ほど前にはなかった専従組織やオープンイノベーションに特化した部署や担当が生まれ、「オープンイノベーション」という言葉が発信されたPRTIMESのプレス数も841件から1097件に増加。同様に、「アクセラレーションプログラム」(913件→1280件)、「共創」(605件→1153件)と伸びている。

 eiiconとしても確認できている国内のアクセラレータープログラム実施企業も、2016年度には約50社だったものが2017年度に約90社になり、2018年度は前年比4割増の130社を超えるになる見通しで、2年で2.6倍増となった。

 スタートアップとの連携が主で語られる日本のアクセラレータープログラムの実施は、起業したての企業が一朝一夕で手に入れることが難しいリソースである「インフラ」事業を展開する企業と相性がよく、IT・通信企業が先駆者となってきた同プログラムが鉄道・電力・ガス等の業種が広がった年でもあった。

 大手企業から中小企業、スタートアップまで、多くの企業が注目し、見事トレンドワードとなった「オープンイノベーション」だが、実際には「取り組んでみたいものの、何から手をつけてよいか分からない」「取り組んだが、途方に暮れた」という声もよく聞くようになった年でもあった。

 そうした声に応じるように、オープンイノベーションの支援ビジネスを手がける企業も増加。

 eiiconでも、オープンイノベーションの実践手法の一つである“アクセラレータープログラム”の実施に強みを持った企業や、技術マッチングに強みを持った企業など、その形態や強みを整理区分した、オープンイノベーション支援を行っている企業22社を紹介している。

日本のアクセラレータープログラムとは

 国内で一番最初に始めたのがKDDI社(2011年開始)であり、2015年度以降、爆発的な増加を見せる「アクセラレータープログラム」。

 もともと「アクセラレータープログラム」とは、「シードアクセラレータープログラム」の略でベンチャーキャピタル(VC)がスタートアップのグロースを目的として始めた期間を定めたプログラムである。

 3ヵ月、4ヵ月など期間を定めたプログラムを設け、まず始めにビジネスプランのプレゼンなどの選考を実施。選考を通過したスタートアップに対してメンタリング・インキュベーション支援を行ない、投資やリソース支援を実施しながら経営ノウハウを指導することでビジネス拡大を支援するという内容だ。

 2005年に、シリコンバレーに拠点を置くY - Combinatorが ボストンのスタートアップ8社を対象として実施したのが始まりだとされており、シードフェーズのスタートアップに投資するVCが中心となって拡大をしてきた。

 ただ、日本で現在増加しているアクセラレータープログラムは少しこれとは毛色が異なる。

 上記のようなVCが行なうアクセラレータープログラム(=シードアクセラレータープログラム)ではなく、「事業会社型アクセラレータープログラム」と呼ばれるプログラムなのだ。

 特に、事業会社が主催するこの事業会社型アクセラレータープログラムでは、スタートアップの純粋な成長を支援するメンタリングやインキュベーションではなく、主催企業との共創で新たなビジネスを生み出そうとするケースや、スタートアップサイドの持つアイデアや新技術などの事業シーズを求める構図が主流だ。

 主催者サイドの業界に関する専門知識や設備等の自社資源を提供することを条件にスタートアップを公募し、一定の審査を通過したスタートアップと連携をする。現在日本で総称されているアクセラレータープログラムとは、「事業会社型アクセラレータープログラム」を指しており、「プログラム型での共創関係構築」として、オープンイノベーション実践の手がかりとして取り入れられているのだ。

 「共創」「オープンイノベーション」の機運が高まり、「自社でも実施をしたい」と企業が考えた時、取り入れる代表的な手法が「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」と、「事業会社型アクセラレータープログラム」だと言える。

 CVCを立ち上げるにはいくつかの会社としての手続き、たとえば運用会社の設立・登記、ファンドの組成・資金募集などが必要となる一方で、アクセラレータープログラムは既存の体制のまま実施が可能なので取り掛かる上でのハードルが下がる。プログラム型で期間が一定決まっていることなども取り入れやすいポイントである。

 またアクセラレータープログラムは「対外発信」をその過程において必須としており、PRでのメリットも大きい。自社で探知できていない企業が、発信することによって自社のことを知り、相手から連絡をくれることはその1つだ。

 無数にいる企業の中から、一方的に探し発掘するより「自分はあなた方と合うと思いますよ」と相手から名乗り出てくれる母集団ができることは、単純に出会いの数、そして内容を把握した上での連絡には質が加わる。よってパートナー発見の確率向上が見込めるのである。

 そして、その発信自体は、自社のHPや既存のプレス配信ツールやオープンイノベーション特化型プラットフォームを利用することで、安価、場合によっては『タダ』でできるのである。現在は、「他社もやっているので……」と周囲の例も社内に持ち出しやすい状況だ。そのため、ますますプログラムの数は増えている。

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