Skylake-X、Kaby Lake-XのBasin FallsでハイエンドデスクトップPCに大革新
インテルが18コアのCore i9を1999ドルで発表、前世代で1700ドル超だった10コアは999ドルへ
2017年05月31日 09時00分更新
どもどもジサトライッペイです。現在、台湾台北市では年に一度のPCパーツの祭典「COMPUTEX」が開催中ですが、早くもインテルから超刺激的な発表が届きました。それは現在のハイエンドデスクトップPC向けの“Broadwell-E”の後継である、“Basin Falls”こと、「Core Xシリーズ」と「Intel X299チップセット」です。
Basin Fallsは“Skylake-X”と“Kaby Lake-X”の2種類のCPUがラインアップ。そして、今までCore i7で統一してきたハイエンドラインのブランド名を、Core i9/Core i7/Core i5の3つに分け、新たにまとめて「Core Xシリーズ」と呼ぶことになりました。なお、“Intel X299”チップセット搭載マザーボードは、“LGA2066ソケット”を採用し、従来のプラットフォームとは互換性はありません。
注目はやはり「Core i9」という新ブランド名でしょう。インテルの初代Coreプロセッサーが登場してから約9年になりますが、Core i9というCore i7の上位のブランド名がつけられることは初めてです。“Skylake-X”は最大18コアと前モデルの“Broadwell-E”の10コアから一気にジャンプアップしているので、そこも満を持してCore i9と名付けた要因になっているような気がします。
Basin FallsはCore i9が5モデル、Core i7が3モデル、Core i5が1モデルの合計9モデルになります。前モデルのBroadwell-Eが4モデルだったので、かなりラインアップが拡充したことになりますね。Core i9-7980XEは18コア/36スレッドで、価格が1999ドル(日本円換算で22万円強)。Core i9-7960X(16コア/32スレッド、1699ドル)、Core i9-7940X(14コア/28スレッド、1399ドル)、Core i9-7920X(12コア/24スレッド、1199ドル)、Core i9-7900X(10コア/20スレッド、999ドル)と続きます。
最大コア数と価格付けの変化、そしてKaby Lake-Xという新機軸
勘のいい読者の方ならスペック表を見た段階でお気付きかと思いますが、今回の発表で驚くべきところは大きく分けて素性の異なる2種類のCPUが混在しているところです。
Skylake-Xは従来のBroadwell-Eの流れをくむいわゆる正統後継です。そのため、メインメモリーはクアッドチャンネルで、メモリー速度はDDR4-2400からDDR4-2666へ向上しています。CPUが持つPCI Express 3.0のレーン数も最大44レーン(Core i9-7800XとCore i9-7820Xは28レーン)と従来の最大40レーン(Core i7-6800Kは28レーン)から増えています。Turbo Boost 2.0の挙動を上回るクロックまで自動オーバークロックする、Turbo Boost Max Technology 3.0(以下、TB3.0)も従来は1コアだけでしたが2コアまで適用されるようになりました。また、新命令セットのIntel AVX512(オーバークロック時のオフセット機能も搭載)にも対応しています。
一方で、Kaby Lake-XはTDPこそ112WとSkylake-Xより低いものの、メインメモリーはデュアルチャンネルまでで、L3キャッシュもCore i7-7740Xが8MB、Core i5-7640Xが6MBとハイエンドデスクトップPCのCPUというよりは、メインストリームの第7世代Core(開発コードネーム:Kaby Lake-S)と似ています。というかコア数もいっしょです。価格もCore i7-7740Xが339ドルと、Core i7-7700Kと同等。Core i5-7640Xも242ドルと、Core i5-7600Kと同価格帯です。さらにTB3.0やAVX512には非対応と、Skyalake-Xとの機能差も目立ちます。
つまり、Kaby Lake-Xはその名の通り、Kaby Lake-SのソケットをLGA1151からLGA2066にしただけのものという印象で、これは従来のハイエンドラインの価格を少しでも下げて、メインストリームの価格帯に近づけるマーケティング的な側面が強いラインアップなのではないかと。そして、徐々にメインストリームからハイエンドプラットフォームへユーザーを移行し、なるべく高い構成を買ってもらう、というインテルの売り上げ底上げ作戦だったのではないかと思うのです。そして、10/8/6/6コアで展開していたハイエンドのSKUは新たに12/10/8/6/4コアにして、ラインアップの拡充を図ろうとしていたのでしょう。
AMDが頑張ればインテルのCPUが安く手に入る
ところがそんなインテルの計画は、AMDの新CPU「Ryzen」の人気が高まったことにより、変更を余儀なくされました。AMDはRyzenが市場でウケていると見るやいなや、サーバー用の超多コアCPUやハイエンドデスクトップPC向けの16コア/32スレッドのCPUを夏にリリースするとアナウンス。これに刺激される形で、インテルが計画を変更したとみてまず間違いないでしょう。
直近のウワサまで最大12コアとなっていたスペックもふたを開けてみれば最大18コア。しかも、スペック表は見ての通り、12コア以上のSKUはコア数と価格以外は未定という、急ごしらえ感満載です。“前倒し発表になった”というウワサもあり、これまでのインテルらしからぬ強引な変更だったんじゃないかと思います。ありていに言えば、今年の4月ぐらいまでは12コアで出す予定だったけど、AMDの発表を受けて「あん?AMDが16コアのハイエンドCPUを出すって言ってる?だったら、わしゃー18コアじゃい!」という、なんとも直情的な戦略のような気がします。
もともとインテルのハイエンドデスクトップPC向けのCPUは、サーバー用の超多コアCPU「Xeonシリーズ」の兄弟モデルです。Xeonはコア数によって3種類ぐらいデザイン違いのダイがあります。これまでハイエンドデスクトップPC向けのCPUはコア数の少ないダイのデザインが採用されていましたが、おそらくほかのダイデザインを使えば、18コアでもLGA2066のパッケージに収まるでしょう。事実、Broadwell-EPというBroadwell-E世代のXeonの最上位は、LGA2011 v3ソケットで22コア駆動でしたので、18コアはまだ余裕があるほうだと思います。お値段は22コアモデルで1個50万円(僕は2個買いました)ほどでしたので、18コアで1999ドルならかなり安いとすら感じます。
Broadwell-Eのときは、6コアモデルは434ドル~628ドル、8コアモデルは1109ドル、10コアモデルは最上位なのでプレミアを付けて1743ドルというような具合でした。しかし、プレミアを付けるべき最上位を一気に18コアにしたおかげで、12コアのCore i9-7920Xは1199ドルと、なんと前世代の10コアモデルよりも500ドル以上も安い価格付けになりました。つまり、ユーザー視点で考えると、「AMDのおかげで」インテルの最上位でおそらく20万円ぐらいになるはずだったCPUが、13万円ぐらいで手に入ることになったわけです。8コアモデルに関しては599ドルと、確実に5万円台で人気のRyzen 7 1800Xにぶつけてきてます。インテルはこれまでの価格付けのルールを捨ててでも、バチバチにAMDと殴り合いに突入する気満々というわけです。
なお、関係筋によればSkylake-Xやkaby Lake-Xの発売は6月下旬から7月上旬ぐらいになるとのこと。しかし、Core i9のまだスペックが未公開の上位SKUは、関係筋すら知らなかった存在なのでそれらのSKUがいつ発売するかはまだわかりません。しかし、AMDは16コアCPUを今夏にリリースするということは、そこにぶつけてくると期待してます。
さて、今後どうなるのか。イチ自作erとして2017年は非常に楽しい展開です。
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