今年のIDFは、あまりプロセッサーに関する話題がなかった。一応Kabylakeと思しき「第7世代Coreプロセッサー」でH.265/10bitカラーの4Kビデオの再生デモが行なわれた程度でしかなかったのは、すでにBroadwell-Eの発表も行なわれた後で、あまり見せられるべき弾がなかったというあたりが正直なところだろう。
連載360回でも触れたとおり、Kabylakeはモバイル向けの製品が年内に出荷という話が6月のCOMPUTEXで語られており、それ以上の情報はなかった。
4Kビデオにしても、H.265の10bit再生をハードウェアでサポートしたのは新しい機能であるが、それはCPUコア側とはあまりり関係がないから、ということかもしれない。
実際テクニカルセッションを見ても、これまでのIDFなら必ずあった最新版のCoreプロセッサーの説明、あるいはこれに搭載されるGPUの説明を行なうセッションが今回はなかったあたり、基本的には何も変わらないことを物語っていると思われる。
一応そのKabylakeのデスクトップ向けのラインナップなどはだいぶ明らかになってきたので、それを加味した形でロードマップを見ていきたい。今回からはBroadwellまでの世代は省いている。
14nmプロセスベースの低消費電力CPU
Braswellを投入
まず前回反映を忘れた話であるが、今年2月にPentium及びCeleronグレードに、14nmプロセスベースのAtomであるBraswellが投入された。Celeron向けは2コアのJ3060と4コアのJ3160、Pentium向けは4コアのJ3710である。
どちらもAirmontアーキテクチャーの採用であるが、性能そのものは22nmのSilvermontアーキテクチャーから大きく向上したわけではなく、動作周波数が同じなら性能もほぼ同じ程度でしかない。
ただし省電力性は増しており、2.4GHz駆動4コアのBay Trail-DのTDPが10Wなのに対し、Braswell-Dでは2.6GHz駆動4コアでも6.5Wとさらなる省電力化が実現できている。
「だったらTDP 10Wにしていいから動作周波数を3GHzに」という声もあるかもしれないが、これは案外難しい話である。現実問題として10Wにしても2.8GHzに行くかどうかというあたりだろうから、2.6GHzあたりで留めておいたのは賢明だろう。
またこの世代から内蔵するGPUも強化されている。例えばPentium J2900に搭載されていたIntel HD Graphicsは4 EU構成で、動作周波数こそ最大896MHzと高めだが性能は低かった。これがPentium J3710では18EU構成まで増えており(Celeron J3060/3160は12EU)、周波数こそ最大700/740MHzとやや低めに設定されているものの、描画性能は大幅に向上している。

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