LINEの100%子会社である「LINEモバイル」によるMVNOサービスが開始された。9月5日のサービス発表時に2万件限定で先行申し込みが行なわれ、15時30分頃に申し込みが完了した筆者の手元には、9月7日の9時30分ごろにSIMが到着した。LINEというネームバリューでMVNO市場にインパクトを与えられるか、実際のサービスを検証してみた。
LINEモバイルの特徴は“カウントフリー”と呼ばれるサービスだ。これはLINEなどのコミニュケーションサービスで使われるパケットをデータ容量にカウントしない、というもの。対象となるのはLINEトークのテキストや画像、動画、LINE通話、ビデオ通話といったサービス、さらにTwitterやFacebookも対象となる。
■先行サービスの下り速度は40Mbps超えも
プランはLINEのみをフリーにする「LINEフリー」と、TwitterやFacebookも対象となる「コミニュケーションフリー」の2種類。データ専用と通話付きのものがそれぞれあり、最も安いプランだとLINEフリーのデータ専用が月額500円(税抜)。1GBのデータ容量も付いており、LINEでのコミニュケーション専用端末で、たまにリンク先のウェブサイトも見る、ぐらいの使い方であれば十分だろう。
写真や動画をバンバン撮影して、それをLINEでバンバン送ってもデータ容量を消費しないというのはうれしいところだ。また、音声通話のLINE通話やビデオ通話も同じく無料。「LINEだけで月間5GB使う人もいる」と話したのはLINE取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏。それが、このLINEフリーなら500円で済むわけだ。今回はテストのためにこの500円のLINEフリープランを選択した。
“カウントフリー”のキモはサービスと密接に連携した点にある。これまでも「LINEやTwitterのデータを無料にする」というMVNOサービスはあったが、サービスと連携しないと、無料になる通信かどうかが厳密に区別できないという。LINEだけでなく、TwitterやFacebookともパートナーシップを組み、こうした課題をクリアしているのがカウントフリーだとしている。
さて、前置きが長くなったが届いたSIMカードは、SIMロックフリー端末などに挿入して設定する。回線はNTTドコモなのでドコモ端末でもそのまま使えるはずだが、今回はSIMロックフリーの「HUAWEI P9」を利用した。
日本で販売される最近のSIMロックフリー端末は、主要なMVNOのAPN情報があらかじめ登録されていることも多いが、LINEモバイルのものはないのでマニュアルどおりにAPNを設定する。設定としてはこれだけだ。iPhone向けにはマニュアルにQRコードが記載されており、リンク先からAPN構成プロファイルをダウンロードできる。
- 【APN】line.me
- 【ユーザー名】line@line
- 【パスワード】line
- 【認証タイプ】PAPまたはCHAP
これで通信が可能だ。音声通話はできないがLINEの新規登録もできるようになっており、「初めてスマホを購入して、LINEを始めたい」というユーザーにも対応できる。
通信速度は場所や時間によって変動するので一概には言えないが、下り40Mbpsオーバー、上り10Mbpsオーバーが出るような場所もあり快適なレベルだ。ただし、まだ最大でも2万件程度でサービスを展開しているため、あまり参考にはならない。今後ユーザー数が増えてきたときに、どれだけ回線速度を維持できるかが課題となるだろう。
利用した通信量は、LINEアプリからLINEモバイルアカウントを友だちに登録して確認できる。「データ残量確認」をタッチすれば、メッセージとして残量が通知される。
今回はLINEの通信のみがカウントフリーでそのほかの通信は1GBの容量制限だが、この1GBを使い切っても200kbpsでの通信は可能なほか、LINEはカウントフリーのため、通信速度は通信制限前の速度で利用できる。この点は大きなメリットで、SNSの用途がメインであれば通信制限を気にせず利用できる。PCでのテザリングでも、LINEアプリはカウントフリーで利用可能だ。
このカウントフリーは、各サービスのIPアドレス範囲やポート番号、パケット内容のうちのヘッダの一部を使うとのことで、「DPI(Deep Packet Inspection)だけでなく複数の技術を組み合わせている」としている。MVNEとなるNTTコミニュケーションズが提供しているそうだが、こうした仕組みは通信の秘密との兼ね合いも必要になってくる。LINEモバイルは、通信の秘密についてはカウントフリーの仕組みを説明して個別かつ明確な同意を得るよう、一定の配慮がなされている。
もうひとつの問題点がネットワークの中立性だ。通信事業として特定のサービスを優遇していいのかどうか、という点が議論になるだろう。LINE自体は、日本のネットワーク中立性のルールがネットワーク混雑時の帯域制御のみを対象としているとして、法令上の問題はないとの判断を示す。
ただし、通信事業として特定のアプリケーションだけを優遇する仕組みについては、MNO3社では難しいがMVNOは競争としてありえるという考え方もあるだろうし、「ニュースをLINEでタイトルだけ読む」といったネットの使い方の変化にも影響しかねないことなど、今後も議論を呼ぶ仕組みではあるだろう。
ほかのLINEモバイルの機能としては、LINEの友だちに対してカンタンにデータ容量をプレゼントする仕組みを搭載。他社でもデータ容量プレゼントの機能はあるが、LINEの友だちになっているだけでプレゼントできる手軽さが特徴。手軽にできる反面「強制的にプレゼントさせられる」といった暴力に使われる可能性もある。LINEモバイルは「保護者がプレゼントの状況を確認できるので、つねに確認をする」といった対策を示している。
まだサービスとしては本格始動しているわけではないので、評価しづらい部分ではある。通信品質は利用者数や利用状況に応じて変動するため、今後ユーザー数が増えて利用者がどういった使い方をするか、そしてそれに対してLINEモバイルが帯域増などどこまで適切に対応するかで、判断が分かれるところだろう。
LINEブランドと「月額500円」というインパクトでどこまでユーザー数を増やせるか、今後の事業展開に注目したい。