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アスキーエキスパート 第10回

ポケモンGO人気にあやかる鳥取砂丘とインバウンド策のヒント

2016年08月18日 09時00分更新

文● 井田広之/アスキーエキスパート

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国内の”知の最前線”から、変革の先の起こり得る未来を伝えるアスキーエキスパート。鳥取県庁の井田広之氏による地方都市でのオープンイノベーションについての最新動向をお届けします。

 増加する訪日外国人観光客。地方にとっても経済活性化の大きなチャンスであるが、これをうまく生かすためには、まだまだ地域が乗り越えるべき課題がある。『ポケモンGO』にのっかる鳥取砂丘が解決策のヒントになるか!?

鳥取のビーチで筆者が受けた錯覚

 鳥取県岩美町(いわみちょう)にある東浜(ひがしはま)海岸。鳥取県の観光地の中ではメジャー級ではないが、透明度の高い遠浅な海と、ごつごつした岩場や白い砂浜がつくり出す景観がとても美しい場所だ。先日筆者はここで、外国のビーチにいるような錯覚に一瞬陥った。

 休日前夜の思いつきで、筆者の自宅からクルマを30分走らせ、子どもたちを早朝の海水浴に連れ出した。朝7時台のビーチには、キャンプをして朝を迎えた人たちのテントがたくさん連なっていて、多くが朝食の時間だった。筆者たち親子がレジャーシートを敷いて陣取った横のタープテントでは欧米人が食事をつくっていた。また、海に向かって正面の少し離れたところには、アジア人のグループがやってきて、テントを新たに張り始めた。目に入った外国人たちと、美しい海やテントが集まる非日常感が相まって、まるで東南アジアの島にバカンスに来たような気がしたのだ。

鳥取県岩美町の東浜海岸周辺(筆者撮影)

外国人観光客増は、鳥取でも実感

 毎日のように関連ニュースが報じられているが、“訪日外国人観光客(インバウンド)”は増加の一途。政府は、2015年に約2000万人に達した観光客数を2020年までに4000万人、2030年までに6000万人まで増やすことを目標にしているという。

 では、現状ではどの地域に外国人観光客は訪れているのだろうか。観光庁が実施している『訪日外国人消費動向調査』の2015年の結果を見ると、“都道府県別訪問率(観光・レジャー目的)”の上位5位は、東京都(48.2%)、大阪府(41.9%)、千葉県(40.1%)、京都府(30.4%)、神奈川県(11%)となっている。一方、下位5位は、福井県(0.1%)、島根県(0.2%)、岩手県(0.2%)、山形県(0.2%)、高知県(0.2%)となっており、海外から日本への交通アクセスも大きく影響している数字と思うが、都市部へ訪れている外国人観光客が圧倒的に多い。

 筆者のいる鳥取県も0.2%とまだまだ少ないが、世界最大級の旅行口コミサイト“トリップアドバイザー”が2016年6月3日に発表した“インバウンドトレンド調査”で、外国人旅行者の関心が高まった都道府県ランキング4位となるなど、今後の増加が期待される。なお、同調査で鳥取県の観光地として人気ナンバーワンの鳥取砂丘は、10年前に行けば聞こえてくる言葉の多くが関西弁だったが、最近では、いつ行っても中国語や韓国語などの外国語も耳にしない日はない状況である。このような時代の変化の中で、冒頭の東浜海岸などにも外国人観光客の姿が見られるようになって来たのだ。

トリップアドバイザー 2016年6月3日に発表の“インバウンドトレンド調査”より

ポケモンGOは、インバウンド対応のヒント

 人口が減少し地域の商圏が縮小する地方にとって、インバウンドの拡大は経済活性化の大きなチャンスと言える。一方で、筆者は鳥取県のインバウンド施策を検討するプロジェクトにも関わっているのだが、外国人旅行者に「いかに鳥取という地域を認知してもらい旅行先として選んでもらうか」、「いかに滞在期間中の満足度を地域として高められるか」という大きな課題があると感じている。

 7月下旬にはポケモンGOが日本でもリリースされた。鳥取県の平井伸治知事が、この人気加熱にのっかり、鳥取への観光客誘致のチャンスと捉え、鳥取砂丘を“スナホ・ゲーム解放区”と宣言した。実際、鳥取砂丘ではポケモンGOを楽しむ人たちが昼夜問わず多く訪れるようになっている。

ポケモンGOを楽しむ人も多い鳥取砂丘(筆者撮影)

 このポケモンGOをきっかけとする鳥取砂丘のPRの話には、前述のインバウンドの課題を解決するヒントがあるように筆者は思う。

 鳥取砂丘を、日本一の砂丘という従来からの価値に加え、海外でも人気のある“ポケモンGOの聖地”のひとつと位置づけることにより、SNSなどで海外にも情報が広がりやすくなるし、世界にある広大な沙漠などとは異なるポジションとなるエッジの立った観光地として認知されやすくなるのではないだろうか。

 また地元で聞いた観光関係者の話では、たとえば言葉の壁もあって外国人観光客の柔軟な受入れが難しいという現地のアクティビティーの体験メニューも結構あるようだ。ポケモンGOが市場を大きく切り開いたAR(拡張現実)技術の活用であったり、国や地域を越えて理解できるコンテンツの活用などは、それらの突破口や満足度を高めるための糸口があるように思う。

ワクワクする価値を生むイノベーション

 読者の皆様は、メキシコのトゥルムという観光スポットをご存知だろうか。日本ではあまり知られていないスポットではないだろうか。トリップアドバイザーの口コミで、2015年に人気上昇率が世界一になった観光地である。世界遺産にも認定されているマヤ文明の遺跡に隣接した美しいビーチがあり、その組み合わせが生み出すワクワク感の中で旅行者は海水浴などを楽しむようだ。ただ、遺跡単独の魅力、またはビーチ単独の魅力で考えた場合、必ずしもずば抜けたものではなさそうだ。

 ポケモンと鳥取砂丘。遺跡とビーチ。意外なものが組み合わさることで、従来とは異なるワクワクする価値が生まれている。イノベーションは既存の要素の新たな組み合わせで起こるというが、まさにそのとおりだと思う。

 そういえば、トゥルムと東浜海岸のビーチの雰囲気は似ている。新たな視点や技術を持つスタートアップやイノベーターの皆様なら、この東浜海岸に何を組み合わせることで、インバウンドの人気スポットにするだろうか。

■関連サイト
とっとりとプロジェクト

井田広之(いだひろゆき)

著者近影 井田広之

全国の生活者と鳥取県の企業が新商品を共創する「とっとりとプロジェクト」で、全国知事会「先進政策大賞」、日本デザイン振興会「グッドデザイン賞2015」を受賞。最近では、日本一に輝いた鳥取の美しい星空と宇宙をテーマに地域経済活性化を目指す「星空県」構想を提唱し、民間月面探査チームとのコラボもスタート。
経済産業省プログラム「始動Next Innovator」第1期生。中小企業診断士。神戸大学経営学部卒、山陰合同銀行を経て、鳥取県庁にて産業振興分野を10年担当。

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