マイクラで急拡大!世界が注目する子どもSNS・Creatubbles
教育関係者が熱視線 子どものクリエイティブを育てるのに大切なことは何か
プラットホームビジネスとクリエイティブのあり方
Creatubblesの対象年齢は幼稚園から、小学校、中学校がボリュームゾーン。当初は厳密に13歳以下しか参加できなかったが、子どもたちと一緒に作品作りに参加できるよう大人向けアカウントの機能も充実してきた。子どもたちが自分のページを持って管理できるが、それもあくまで親や教師の下での管理。ただし、「監視」といった表現ではない形で子どものやり取りが見える形を模索しているという。
また教師側のメリットでは、生徒アカウント管理がラクになる部分もあるという。「先生たちは授業の後にみんなの作品をいちいちアップロードしなくてはならなかったが、そういうこともなくなる。どの国でも先生に一番ないものは時間。そのため、どうやってシームレスにできるか仕組みを追求した。もちろん利用者は先生だけではないので、クリエイターである子ども、先生、そして保護者の基本的な3つのユーザータイプに合わせたものを今後も開発していく」
アカウントが増えることでプラットホームとしてもビジネスでの可能性が見えてくるが、まだマネタイズには動かない。BtoBや広告での展開も考えられるが、あくまでプラットホームとしてのあり方を重視している。「1つだけ言えるのは、いろんな可能性がある中でユーザーに対する課金を行うようなモデルにはしないということ。たとえば現在のユーザビリティを邪魔しない方向性としては、デジタルではないアウトプットの面で話が進んでいる。親が自分の子の描いた絵のイヤーブックを印刷しようと思ったら……など出口はいろいろある」
アウトプットの面では、プリントや動画コンテンツを扱う世界的な大手企業との提携も動いている。パートナー企業との連携価値はますます高まる見込みだ。ただし、プラットホームとしての将来についてはわからないとグリーンバーグ氏は語る。
「子どもの可能性について、Creatubblesでの制限は設定できない。実際使っていくなかで、毎日新しい可能性が出ているのは間違いない。ある部分まで固めて目標に行きたいというより、その可能性が生まれてくる環境をどんどん作りたい」
このサービスの中には日本の魂が入っている
Creatubblesはプレスリリースも公式発表も全くないスタートアップだ。日本に長く滞在している外国出身の創業メンバーによる独特なサービスポリシーがある。通常SNSであれば、いろんな人に使ってほしいととにかく製品を良くするが、ユーザー側が発揮する創造性に合わせた拡張展開が重視されている点が独特であり魅力的だ。
マインクラフトの一例も、あくまでプラットホーム側はMODでの連携で利用者の背中を押したのみ。お父さん目線でのプラットホームを作ってみたところ、結果グローバルでの需要を獲得している。
このような広がりの源泉は何なのかを聞いてみると、最後に意外な答えが返ってきた。
「Creatubblesの中には日本の魂が入っている。もし日本にいなかったら現在のような形にはできなかった。10年以上日本に住んでいてとても気に入っているのは、日本の考え方や気持ち、センシビリティ(sensibility:感受性)の部分。Creatubblesを見て海外の人たちは、『これは何か違う気がする』という感覚がじつはある。色のセンスも作りも違うし、何が違うとははっきり言わないけど」
日本から海外に通用するものが出てきたという話があるが、グリーンバーグ氏はその文脈に違和感を覚えている。「たとえばみんなシリコンバレーなど海外を意識し過ぎている。日本では逆に海外にないものがいっぱいあるし、アレンジしたら逆に日本でしかできないものができる」
実際同様のコンセプトを持った”子どものためのSNS”といったアイデアはこれまでも当然あった。だが、作りあげられた細部のクオリティ、デザイン、ポリシーといった部分で日本ならではのものがCreatubblesにはこめられており、それが強みになっているのだという。「おそらく日本人は自分たちが持っている需要の強さがわかっていない。日本は外からのイメージはみんな堅いとかすごくコンサバっていうイメージがあるが、私から見ると1回こっちに入るともう逆。じつは海外のほうがコンサバで堅い。日本はいい意味で、”ぐじゃぐじゃになる”感じがある。でもそれはすごい大切。その”ぐじゃぐじゃさ”からいろんな感性が出てくるし、Creatubblesにも生かされている」
教育の観点では、グローバルな基準に沿ったSNSのあり方が求められるが、Creatubblesが指向するのは、あくまで子ども、人が作るクリエイティブを核としたプラットホームだ。
「成長するために、日本は海外と比べてこれが足りないっていう話があるのもわかる。だけど、自分が持っているものにも気が付いた方がいい。それがわからないと何もできないでしょう? いろいろムダに時間使っているようで、その間に手に入っている宝物はいっぱいある。それを忘れるともったいないし、日本人だけの話ではない。世界中のみなさんが『やっぱり自分は伝える物がある』となってほしい。子どもが『虹』と検索するだけいろいろ出てくる。ああ虹と言ってもこれもある、こういう考えもこういう作りもあるという気持ちも感じてほしい」
●Creatubbles Pte. Ltd.
2013年1月4日設立。登記はシンガポールだが、特定のオフィスは構えていない。創業者は日本在住。グローバルでのクリエイティビティに特化した子どもたちが使えるソーシャルメディアサービス「Creatubbles」を2015年1月から正式に展開。
スタッフはグローバルで15名、10カ国以上の国籍が混在。
2016年6月現在、多数の企業から出資を受けているほか、今後も日本の大手企業からの出資が予定されている。