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マイクラで急拡大!世界が注目する子どもSNS・Creatubbles

教育関係者が熱視線 子どものクリエイティブを育てるのに大切なことは何か

連載
ASCII STARTUP 今週のイチオシ!

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マインクラフトの中に作品展示ができる

 「なぜパパみたいなTwitterやFacebookのアカウントがわたしにはないの?」

 誰もがソーシャルアカウントを持ち、インターネット上でさまざまなコミュニケーションが日々交わされているが、セキュリティや教育上の観点からFacebookやTwitterには年齢制限が設けられており子どもが使うことは許されていない。

 だが一方で、盛んになっていくプログラミングやICTを使った教育と連動した授業などは避けられない動きになりつつある。そのようなちぐはぐな状況において、世界中の教育関係者が注目しているソーシャルメディアサービスが『Creatubbles』(クリエイタブルズ)だ。

 冒頭の発言は、同サービスを展開しているCreatubblesのCEO兼共同創業者であるポール・グリーンバーグ氏が娘から向けられたもの。世界中の子どもたちが発信するクリエイティブコンテンツをセキュアに結び付ける注目のEdTech(教育×テクノロジー)サービスについて聞いてみた。

Creatubblesのポール・グリーンバーグ(Paul Greenberg)CEO兼共同創業者

各国で拡大するマインクラフト内の美術館

 4月、世界的な大人気ゲーム『マインクラフト』のゲーム内に、子どもたちが授業でつくったアート作品を飾って仮想の美術館を作るプロジェクトがイタリアで始まった。この「Creatubbles美術館」は、4月28日にはアイルランドで子ども向けSTEM教育を行うCoderDojoに取り上げられ、瞬く間に世界各地に広がった。

 ものづくりやプログラミングなどの観点で、マインクラフトは教育関係者から注目を集めており、すでに実際の授業でも教材となっている。ローマ、モデナ、ボローニャなどのイタリア各地の子どもの作品がアップされたこの試みは、CreatubblesのマインクラフトMODによる機能拡張で実現したものだ。

 Creatubblesとは、クリエイティビティに特化した子どもたちが使えるウェブブラウザ上でのソーシャルメディアサービスだ。アップロードした作品には、世界中からバブル(いいね!)やコメントが届き、また世界中のクリエイターがアップした作品の閲覧ができる。マインクラフトの場合では、Creatubbles上にアップした作品をそのままゲーム内に展示する機能拡張で連携していた。

世界各国の子どもたちからバブルやコメントが届く

 Creatubblesは現在、日本も含め世界50カ国以上での生徒、保護者、教師による利用が進んでいる。さらにマインクラフトMODの事例がきっかけになり、現在では世界各国の企業とソフトウェアやサービスでのAPI連携の取り組みが増えている。「マインクラフトの事例でグローバルでの展開が一気に加速し、プラットホームとしての可能性がわかった」とグリーンバーグ氏は語る。

行き先がなかった数千億ものクリエイティブ投資

Shade3Dが子ども向けアプリとして始めたマジカルスケッチにもCreatubblesは対応。子どもでも簡単に一式での3Dモデリングの作成ができる。

 「ドローイング、ゲーム、プログラミングなど子ども向けのさまざまなアプリが世の中にある。だが、それらを横断するような共有方法は存在しなかった。たとえば『Scratch』(子ども向けのビジュアルプログラミング学習ツール)で作られたゲームもあくまでプラットホームに閉じている。でも子どもたちはいろいろな道具を使いたいもの。そこで、全部がつながり、全部が共有されるようなものを作ろうとした」(グリーンバーグ氏)

 たとえば連携によって、アプリからCreatubblesへ作品のアップロードが手軽にできるようになる。カメラとソフトでタイムラプスやクレイアニメをつくれるアプリを手掛けるHUE Animationでは、これまでYouTubeとQuickTimeの2択しかなかったアップロード先にCreatubblesがすでに加わっている。さらにアプリからは、Creatubbles内に作られたそれぞれの公式ページへ飛び、関連作品の閲覧がそのままできる。

HUE Animation

 「親や先生、メーカーからの要望としてあるのは、結局iTunesやAndroidのストアでの紹介情報のみではそれぞれのアプリが何なのかわかりづらい。Creatubblesでは、実際のユーザー事例が知りたいという欲求もプラットホームとして解決できる」

 連携はデジタルだけにとどまらない。スウェーデン発の人気知育おもちゃStrawbeesの発展系となるプログラミング可能なコアを持つQuirkbotでは、今後生産予定の5万ロットのパッケージからCreatubblesのロゴがプリントされる予定だ。「Strawbees社ではソーシャル対応をインスタグラムでやっていたが、全部Creatubblesにしたいと要望をいただいた。教育コンテンツを持つ各社は既存のプラットホームに対してある種のズレを感じたままやっていたが、販売も商品もコミュニティもコンテンツもできるCreatubblesへ参加の流れができている」

Kickstarterで火がついたStrawbeesの発展系であるQuirkbot

 このほか、教育関係のワークショップや個人アーティストでの利用も増えているが、ここまで広がったのは教育業界にあった不満が背景にある。

 「子どもの教育、クリエイティビティを発揮させるために世界中で数千億の投資がなされている。だがそれらはあくまでソリューション自体、勉強そのものや作れることへの投資で、アウトプットに対するものは存在しない。みなローカルなもので、子どもたちが参加するにも大手ソーシャルメディアでは難しい」

 各国の企業や団体は、共通の問題として「子どもの作品を出す場所」に困っていた。さらに教育現場では、ものすごい数のアプリどう管理するのか、学年や学校の引継ぎをどうするのかなど、ICTに関連する教育ならではの悩みも出始めている。コンテンツを作り出すことに注力を置くメーカーにとってもこの悩みは深刻で、Creatubblesでは現在複数の国際的な大手企業との関係性も生まれつつあるという。

 世界が待っていた子どものためのソーシャルプラットホームとして認知が進みつつあるCreatubblesだが、誕生の背景には子どもを持つ親が抱えるある悩みがあった。

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