Genuino 101(Arduino互換ボード)がやってくる
IoT&ハードウェアの祭典『IoT&H/W BIZ DAY by ASCII STARTUP』
人気御礼につき、入場チケット増枠中の3月28日(月)12時~18時開催のハードウェアやIoTプロダクト関連のビジネスセミナー・展示交流イベント“IoT&H/W BIZ DAY”。展示ブースの注目ガジェット、ソリューションをご紹介する。
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2015年10月、IntelはGenuino 101という新しいArduino互換ボードを、ローマで開催されていたMaker Faire Romeで発表した。このGenuino 101が間もなく国内でも発売を開始する予定であり、3月28日に開催される"IoT&H/W BIZ DAY"でも実機が展示される予定だ。これに先立ち、このGenuino 101のご紹介をしておきたい。
何で名前が2種類あるの?
今回発表された製品は、米国では「Arduino 101」と呼ばれており、米国以外では「Genuino 101」という名称で販売される。両者の間には基本的に違いはない。実はこれ、Arduino 101とGenuino 101のみではない。既存の製品についても、アメリカ国内で販売される製品は全てArduinoという名前だが、アメリカ以外の国ではすべてGenuinoという名称に切り替わっている。
実はこれ、Arduinoの開発チームが真っ二つに分かれて、現在も法廷闘争が進行中の騒ぎになっているのが理由である。現在Arduino/Genuinoは、アメリカにあるArduino LLCとイタリアにあるArduino SRLという2社が製造を行っており、ところがArduino LLCは"Arduino"という商標をアメリカ国内でしか所有していない(イタリアをはじめ日本を含む多くの国における商標をArduino SRLが保有している)ということで、これまでArduino LLCが開発・発売してきたボードはすべてアメリカ以外ではGenuinoという名前に切り替わった形だ。そんなわけでちょっとまぎらわしいのだが、違いは純粋に名前だけであって、中身は同じものと考えて良い。ということで、以下商品名以外ではArduino/Genuinoを区別しないで、すべてArduinoで表記させていただく。
Genuino 101(Arduino互換ボード)って何?
大前提として「Arduino(アルデュイーノ)って何?」という話は例えばこちらとかこちらとかこれとか、すでに多くの記事があるのでお読みいただきたいが、要するにAtmel(アトメル)という会社の提供する8bitのAVRというマイコンを使った開発ボード(学習ボードという表現もあるが、個人的には開発ボードとしたい)である。特徴はプログラミング(Sketchと呼ぶ)が簡単で、Shield(シールド)と呼ばれる拡張ボードを簡単に装着でき、いろいろな周辺回路を自分でつなげたりすることも可能な点だ。あと、比較的安価に入手できる点も評価されている。
さて、では国内でも発売となる「Genuino 101は何か?」という話はこちらにまとまっているが、もう少し詳細に説明しよう。
従来IntelはArduino互換となる開発ボードとしてGalileoとかEdison+Edison Board for Arduinoといったボードをリリースしていた。GalileoはIntelのQuark X1000ベース、Edison Board for ArduinoはEdisonモジュールを利用した形だが、どちらもサイズはArduinoよりもデカい(というか、Arduino MEGAよりも大きい)うえに、価格もあまりお安いとは言いがたかった。また、一応Arduino互換としてSketch可能だが、フルに性能を生かすにはArduinoではなくLinuxを入れた方が良く、そういう意味では「Arduino互換としても使える」Linuxボードという趣が強かった。
これに対してGenuino 101は超小型モジュールのCurieがベースとなり、ボードサイズはArduino Unoなどと完全に同サイズになった。これならALTOIDSの缶に納めることも可能である。
またGenuino 101はArduino Unoと並んで「エントリレベル向けの製品」という位置付けになった。価格もそのぶん低めに設定されており、米国では30.00ドル、その他の国では28.65ユーロ(ちなみにArduino Unoは24.95ドル/20.00ユーロ)で、若干値段は上がっているが、その分機能の追加もあるので、まぁ同程度にお手頃と考えて良いかと思われる。
ちなみに追加機能としては、
・メモリ量の増加:Arduino UnoはFlash Memory 32KB/SRAM 2KBという構成で、Flashのうち5KBはブートローダ用に使われるので、Sketchに利用できるのは実質27KB/2KBとなる。対してArduino 101は384KB Flash/80KB SRAMが搭載されており、このうちSketchには196KB/24KBが割り当てられる。従来よりも大きなSketchが実行可能である。
・チップ内部に6軸の加速度センサーをあらかじめ搭載:Arduino Unoでは加速度センサーシールドを入手して組み込む必要がある。
・同じくあらかじめBluetooth LEに対応:標準でBluetooth LEを使っての通信が可能。Arduino Unoではやはりシールドの形で追加する必要がある。
といった違いがある。プロセッサはArduino Unoが16MHz駆動のATMega328Pという8bitマイコンなのに対し、Arduino 101は32MHz駆動のIntel Curieであるが、こちらは性能評価をしてみないと一概に性能がどの程度上がったのかは判断しづらい所だ。
ただArduino LLCやIntelは、このGenuino 101をArduino Unoの後継と位置づけており、基本的に性能が上がり、より大きなSketchが記述可能で、かつBluetoothなどをそのまま使える「高性能版」と位置づけているようだ。
Galileo/Edisonとの違い
ついでにIntelがこれまでリリースした「Galileo/Edison for Arduino Boardとの違いは何か?」をもう少しテクニカルな観点から。先に述べた通り、ボードサイズが小さくなり、価格も安くなったという違いがあるが、もう少し深いレベルでは大きく2つの違いがある。
一つはIDEで、従来はIntelの提供するスペシャル版のIDEが必要だったが、Genuino 101ではArduino.ccから入手できる標準版のArduino IDE(原稿執筆時点では1.6.8)をそのまま利用してSketchを記述できる。
もう一つは信号の扱いだ。上記はそれぞれGalileo、Edison for Arduino Boardの回路図であるが、DigitalやAnalogピンは、基本的にボードの上で信号を一度MUX(マルチプレクサ)で受け、GPIOあるいはSPIで受けるという構造だった。時にAnalog Inの場合、Quarkチップそのものが内部にADCを持っていないため、ボード上でADCを動かしてその結果をSPIで取り込む(このための制御をI2Cで行う)という面倒なことになっていた。
これが理由で、GalileoやEdisonでArduino互換のI/Oを使おうとすると非常に遅い、という問題があった。ところがGenuino 101(回路図は下記)では、Curieの中に必要な周辺回路がすべて取り込まれており、外部はLevel Shifterのみとなっている。これを見る限り、I/O性能はArduino Unoと同等以上が期待できそうな予感がする。
ちなみに現在のArduino 1.6.8のRelease Noteを見る限り、BluetoothはSerial通信として扱われるようだが、6軸の加速度センサーをどうSketchで扱えるのかがちょっと不明である。このあたりはまたGenuino 101が入手できたらいろいろ試すことになるだろう。
ということで、簡単であるがGenuino 101(Arduino互換ボード)のご紹介をさせていただいた。まだ国内での販売価格などは不明であるが、昨今の円高の事もあるし、そう無茶な値段にはならないと思われる。またBluetooth LEで気になるのは技適の扱いだが、これを取得するために国内発売がやや遅れたという話であり、逆に言えばきちんと技適を取得して国内でもBluetooth LEが使える形で発売が開始される予定である。冒頭にも書いたが、まずは"IoT&H/W BIZ DAY"でお披露目となるので、興味ある方はぜひ参加していただきたい。
※お詫びと訂正:記事初出時、Arduino SRLの表記・商標権の保有について誤りがありました。Arduino SRLが保有している商標を「イタリアにおける」ものと表記としていましたが、正しくはイタリアをはじめとする多くの国を含んでおります。記事を訂正してお詫びします。(2016年3月22日)記事内での「Arduino 101」の表記を「Genuino 101」に変更いたしました。(2016年3月23日)
■関連サイト
Arduino 101/Genuino 101
『IoT&H/W BIZ DAY by ASCII STARTUP』
開催概要
■日時:2016年3月28日(月)
開場 12時 終了予定 18時
■場所:株式会社KADOKAWA KADOKAWA富士見ビル
東京都千代田区富士見2-13-12
■入場料:無料
■募集人数:各セッション100名、入場チケット150名(予定)
■主催:ASCII STARTUP
■協賛:さくらインターネット、Intel
■出展:さくらインターネット、Intel、Cerevo、ソラコム、Qrio、kibidango、ビートロボ、MESH、JDSound、ユカイ工学、uusia、コーデセブン、PANORA、スイッチサイエンス、落し物ドットコム、ノバルス、電玉、Z-works、ニャンパス、VAIO (予定)
※プログラム内容は予定です。都合により変更となる場合があります。
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