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ASCII STARTUP 今週のイチオシ! 第14回

「バイク便」的なロケットで狙う宇宙への輸送サービス

ホリエモンの作ったロケットベンチャー インターステラテクノロジズの勝算とは

2016年03月11日 07時00分更新

文● 松本佳代子 聞き手・編集●北島幹雄/大江戸スタートアップ 撮影●曽根田 元

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ロケットビジネスで求められる需要とは

画像提供:IST

 ここまで記したような開発背景のもと、冒頭にも書いた通り、今夏には「観測ロケット」の打ち上げが予定されている。

 観測ロケットは、弾道飛行で打ち上げたら人工衛星にならずそのまま地表へ落下するロケットだ。燃料が燃焼中は加速度がかかるが、燃焼し終えて自由落下しているときは無重力状態が3~5分間続く。

 ISTでの観測ロケットは、打ち上げ自体をサービス提供したり、短時間での無重力環境を大学や企業に実験場として提供することも想定している。人工衛星やロケットのメーカーが、宇宙空間で部品が機能するか確認できる試験場として需要を見込んでいる。

 一方で、人工衛星にするには秒速7.2kmの加速が必要となる。ISTでは観測ロケットを縦に3段並べることで、必要な増速量に達する計算だが、人工衛星打ち上げでの軌道投入ロケット開発にはさらに3~5年がかかる見積もりだ。

画像提供:IST

 「国内ではアクセルスペースのように超小型人工衛星を開発している企業が世界中には何社もある。いずれも、今はロシアの大型ロケットに『相乗り』して他の荷物と一緒に打ち上げている状態。しかし、超小型人工衛星は小さいためあくまで打ち上げに便乗する側で、メインとなる大型輸送の『お客さま』に打ち上げ時期も依存するため、スケジュール次第では延期することもあり、なかなかビジネスとして成り立ちにくい点があった。だが、小型の軌道投入ロケットがあれば、相乗りせずとも1基ずつ打ち上げることができる。コストは相乗りよりもかかっても、付加価値があるため需要はあるという見通しで、これがISTのロケットをバイク便に例えた理由。今後、ロケットはインフラの1つとなる時代がやってくる」(稲川氏)

 H-IIAロケットの場合、毎回の打ち上げ費用は重量によっても変わるが約100億円となっている。イプシロンロケットでも1回で約30億円。稲川氏によれば、ISTで予定している想定費用は1桁億円前半とのこと。アニメやフィクションではなく、現実に迫りつつある宇宙産業時代が感じられる。

「町工場の設備で作れる宇宙技術」から
小型ロケット輸送サービスへの道

 稲川氏は、さらにロケットをインフラとするこの輸送サービスが流通したあとに開発するロケットのことも考えている。

 「目指すのはロケットの大型化。方向性は2種類で、1つは人を乗せる有人ロケット、もう1つは小惑星探査で外宇宙に出ていく道。できれば両方やりたいが、どちらがビジネスとして成り立つのか、実現可能かの部分も含めて今後検討する」(稲川氏)

 そのためにも、開発中のエンジンの次世代型も目下検討中だ。

 今夏に打ち上げる予定の観測ロケットのエンジンはインジェクタがシャワーヘッドのような「衝突型インジェクタ」だが、もう1つ開発中のエンジンとして「ピントル型インジェクタ」があるという。どちらも同じ液体燃料のエタノールと液体酸素を使うタイプだが、燃料を霧状にする手法が異なる。

 「ピントル型インジェクタ」のピントルとは「棒」の意味がある。円筒形に出てくる液体が作る膜と、その中心から吹き出す液体から作る2つの膜を衝突させる方式で、衝突の勢いで霧にするものだ。これは、スペースXが手がけるロケットと同じ技術だという。

 現在基礎研究中のピントル型のメリットは、エンジンのサイズを大きくしても設計が変わらないと考えられている点だ。小型ロケット用のエンジンを開発したらそのまま大型化でき、さらに衝突型でのシャワーヘッドのような噴出のための微細な穴を開ける職人技も必要ないため量産しやすく、従ってコストも下がる。

 「夏に打ち上げる1t級ロケットは衝突型だが、今年中にはピントル型でも同サイズで実験をする予定。ピントル型が成功すれば製造コストもだいぶ下がり、よりシステマチックにロケットが作れるようになる。町工場の設備で、複雑なことを排除して作れるような宇宙技術が重要」(稲川氏)

 「町工場で作れる宇宙技術」とは北海道大学宇宙環境システム工学研究室の永田晴紀教授の論文中の内容で、稲川氏が学生時代に読んで感銘を受け、DIYなロケット作りへの道にハマったきっかけにもなったものだ。

 現在も続けられているエンジンの燃焼実験は町工場でのロケット作り、ひいてはバイク便感覚の小型ロケットによる輸送サービスにつながっている。

 「H-IIAロケットは年間3回くらい打ち上げをしている。イプシロンロケットは2年に1回くらい。これを小型ロケットでは年間に数10基を打てるようにする。そこにいたるまでに、技術面でこれからやることの道は見えてきたので、あとは資金調達を積極的にやっていくだけ。より人材も増やしていきたい」

耳の鼓膜が震えるのを越えて、全身が震える体験を

画像提供:IST

 堀江貴文氏の企業ということで、実際うがった目で見られる機会もあるとのことだが、技術面での解説も含めて大変クリアに稲川氏は応じてくれた。実際ISTは、ハードからソフトまで自社で作りこんでいるハードウェアスタートアップだ。

 アポロ計画の時点でほぼ完成されていた技術といえども、国家規模のものをビジネス転用するというのだからそもそも話が大きい。ISTの本格的な衛星軌道投入ロケットまでは3~5年。スペースXのような形ではないが、宇宙ビジネスでの“ニッチな部分”から国内スタートアップが戦えるようになることに期待したい。

 同社が本拠として実験場を構える北海道の大樹町も、1985年から「宇宙のまちづくり」を積極的に進めてきた宇宙産業誘致に積極的な自治体で、現地ではISTに対しても積極的な応援があるという。実際に行われているISTの燃焼実験の映像はYouTubeにもアップされているので、3000℃の炎の映像を見ることができる。

 「YouTubeでは思った以上に音が再現できていない。これでは全く足らない。本当のロケットの燃焼する音は、お腹にバンバンと響いて体が震える音。耳の鼓膜が震えるのを越えて、体が震える」(稲川氏)

 この夏の打ち上げはぜひとも現地で、全身を震わして体感してみたい。

●インターステラテクノロジズ株式会社
有志によるロケット製作団体「なつのロケット団」を背景に、堀江貴文氏の出資により2013年2月に設立。
2016年1月には丸紅と宇宙ビジネスの営業面での業務提携を結んだほか、個人投資家やイーストベンチャーズ、ヒトメディアとJTが合弁で設立したヒトトキインキュベーターから出資を受けている。
2016年3月にSNS株式会社へ吸収合併されたが、SNSが社名をインターステラテクノロジズとして、継続して宇宙開発、特にロケット開発が主な事業となる。
社員数は2016年3月時点で7名。

■関連サイト
インターステラテクノロジズ株式会社

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