日本型経営方針を打ち出し、社内体質の改善を最優先
2008年4月に社長就任し、初の経営方針説明が行われたのが2008年7月のことだ。
樋口氏は、今後3年間の2009〜2011年度において、「地に足のついた革新による確実な成長軌道の実現」を掲げたほか、マイクロソフトの目指すべき企業像として、「お客様に顔が見え、親しまれ、かつ尊敬される企業」、「パートナーとの密な協業を推進できる企業」、「前向きで生き生きとした人材にあふれ、仕事を通じて私語の成長と変化を実現できる企業」、「ビジネス市場、コンシューマ市場の両市場において、常に革新的な技術をお届けできる企業」、「日本社会に根ざし、環境問題を含む諸問題において、良き企業市民として、貢献できる企業」という5つの項目を制定した。
さらに、マイクロソフト社員のビジネス行動規範も設定。日本型の経営方針を前面に打ち出すとともに、社内体質の改善を最優先する姿勢を示した。
最初の3年間を使って、「顔が見えるマイクロソフト」、「日本に根ざしたマイクロソフト」を構築することを明確に打ち出したわけだ。
「予算必達」でマイクロソフト本社に存在感をアピール
振り返ると、この3年間は、日本マイクロソフトの存在感を米国本社に印象づけるための期間であったともいえる。
そのために、樋口氏が徹底したのが、「予算必達」ということだった。
「日本に根ざした企業になるためには、日本独自の取り組みが必要になってくる。新たに日本に投資してもらうためには、それを認めさせるための実績が必要。『やりたいのはいいが、やることをやってくれ』と、米本社から言われないためにも、まずは予算を達成することを最優先した」と、その当時、樋口社長は語っていた。
樋口氏が中期計画を打ち出して3年目の2011年度。日本マイクロソフトは、前年比2桁成長を達成し、社内表彰制度であるTOP SUB AWARDを初めて受賞した。
TOP SUB AWARDは、全世界の地域子会社が競い合うもので、売り上げ予算達成率のほか、30項目近いスコアカードの総合評価をもとに決定するもの。日本は、国別事業として最大規模を誇るBig Developedのカテゴリーに含まれ、米国、英国、ドイツ、フランス、カナダと、日本の6ヵ国でトップを競っている。前年度も惜しいところまで行っていただけに、この年の受賞で、日本マイクロソフトの注目度は社内で一気に上昇。社内で存在感をアピールするには、最も効果的な成果であった。
こうした実績をもとに、2010年7月に行なわれた経営方針説明会では、日本法人が設立25周年を迎えるのにあたり、2011年2月に、本社を品川へ移転。分散していたオフィスも統合することを明らかにするとともに、日本マイクロソフトへと社名を変更することを発表した。社名に「日本」を付けたのは、樋口氏が目指した「日本に根ざした会社になる」ということを、名実ともに訴える意味も含まれた。
その後、日本マイクロソフトは、2012年度、2014年度にも、TOP SUB AWARDを受賞。4年間で3回という、これまでにない実績を達成してみせた。
こうした世界トップの実績は、日本国内における東京、大阪の2カ所へのデータセンターの設置、Surfaceの日本向け特別仕様のラインアップ、Office Premiumという日本固有の製品ラインアップの創出などにつながっているのは明らかだ。
こうしてみると、樋口氏の社長時代の成果は、顔が見えるマイクロソフトへの転換と、それに伴う日本に根ざした企業への体質転換。そして、グローバルにおける日本マイクロソフトの存在感を高めたことだといっていいだろう。
樋口氏は、7月1日から就任した会長としての自らの役割として、「お客様との会社対会社の関係強化」「新たな戦略的パートナーシップの構築」「ナショナルアジェンダへの貢献」「人材育成の強化」とともに、「平野新社長による経営・事業展開を全面サポート」を挙げる。特に人材育成においては、「これまで私が3つの会社で務めてきた社長としての知見を伝授したい」とも語る。
会長としての次なる成果を楽しみにしたい。
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