経済産業省の主催で34年間開催されてきた「U-20プログラミング・コンテスト」が、今年から対象年齢を22歳以下に拡大し、「U-22プログラミング・コンテスト」(@u22procon)として開催されることになった。主催元もソフトウェアメーカーなどが参加するU-22プログラミング・コンテスト実行委員会へと代わり、運営事務局は一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)が務めることになる。プログラミングの募集し7月上旬にも開始される予定だ。
このほど、実行委員会委員長を務めるサイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏と、実行委員である日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏による対談が行なわれた。自らもプログラマー出身である青野社長は、「最初に触ったのはMicrosoft BASIC。多くのプログラマーを育ててきたのがマイクロソフトである」として、今回の日本マイクロソフトの樋口社長との対談を決めたきっかけを語る。それぞれの立場から、U-22プログラミング・コンテストに対する思いと、業界が求める将来のプログラマーの姿などについて語り合った。今回と次回で、その内容をお伝えしていく。
もっとプログラマーを増やしたい
青野 過去34年間に渡って、U-20プログラミング・コンテストが開催されてきたわけですが、残念ながら知名度はそれほど高くなかった。今回、U-22プログラミング・コンテストとして、新たな形で開催することになりました。
僕の気持ちは、このコンテストを通じて、「もっとプログラマーを増やしたい」ということなんです。今の状況をみると、プログラマーはそれほど注目されていないですし、若者もプログラマーを志すことに魅力を感じていない。これをなんとかしたい。そう思っているんです。
樋口 マイクロソフトは、最近ではハードウェアにもビジネスを広げていますが、やはり、ソフトウェアを生業として成長している会社なんです。
会社のビジョンは、ソフトウェアの可能性を信じて、ソフトウェアによって、人や、ビジネスの可能性を最大限に引き出すということ。世の中を見回してみると、自動車や家電でも、ソフトウェアで実現する割合が増加している。つまり、ハードウェアの世界でもソフトウェアがわかる技術者が求められているともいえるわけです。
もともとPCは数値計算から始まり、文字、画像、音声、動画を扱えるようになったわけですが、これらはすべてソフトウェアで処理できる。しかも、ソフトウェアの方がフレキシブルに更新できる。そうしたこともあって、ソフトウェアの価値が高まっているともいえます。
BtoBのシステム開発においては一品一葉が多く、お客様の要望にあわせなくてはならない立場となるプログラマーの仕事は大変であったが、ビッグデータやクラウドによって、環境が変わってきた。また、BtoCでは、これまで以上にスケールが広がり、力のある人は、それに見合った対価をもらえるようになってきた。この点ではプログラマーが置かれた立場も明るくなってきたのではないでしょうか。
「お客様の満足度の実現」では鍛えられているが、
クリエイティビティではまだまだ努力の余地がある
青野 日本のBtoB市場におけるプログラマーの立場は、お客様の言いなりになって下請けでやるということが多く、まさに「K」がいくつも付くような言われ方をしていましたね。そろそろBtoBの情報システム案件でも変わってきていると。
樋口 そうですね。ただ、日本のお客様は世界的に見ても厳しいのは確かですね。例えばATMだと、米国では止まったら「OUT of ORDER」と書いてあるだけですが、日本では新聞に載ってしまう問題になる。そうしたシビアな状況の中で仕事をしています。
青野 その点では、日本のソフトウェアエンジニアは相当鍛えられていますよ(笑)。信頼性や機能に対する要件を満たしているかどうかだけでなく、納期管理についてもキッチリしている。これを生かして、ほかの国にはない、プログラミングの強さを世界で表現したり、生かしたりできないかと思っているんです。
樋口 ただ、その一方で、プロジェクトマネジメントの手法や、システマチックに開発するという手法では遅れている感じがしますね。マイクロソフト社内を見ていても、日米でその差を感じざるをえないところがあります。どうしても日本は「竹やり」的な感じがある。
日本のプログラマーは、お客様の満足度を実現するという意味では鍛えられているが、クリエイティブなものを作るという点では遅れている。コーディングならばきちっとやるが、デザインや、アーキテクティングといった上位のところになると、まだまだ努力する余地があるのではないでしょうか。
青野 独自のコンセプトを考えて世に問うということは、日本人はなかなかやらないですね。
樋口 それは、ソフトウェアの世界以外にも当てはまるかもしれません。

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