4月12日、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)はハードウェア、OS、ミドルウェアを一体化した新ジャンルのコンピューター「エキスパート・インテグレーテッド・システム」を発表した。その第一弾となる「IBM PureSystems」では、仮想化やミドルウェアが利用可能になるまでにかかる時間やコストを大幅に削減する。
このままでは運用コストで情シスはつぶれてしまう
エキスパート・インテグレーテッド・システムは、汎用機やスーパーコンピューター、アプライアンスとは異なる新分野のコンピューティングシステムを謳う。従来もハードウェアやソフトウェアを一体化したシステムは存在していたが、エキスパート・インテグレーテッド・システムでは、システム導入や運用で培ってきた知見や知識をパターンとして実装しているのが大きな特徴。ITインフラにかかる工数とコストを大幅に削減できるという。
発表会において、日本IBM 代表取締役社長 橋本孝之氏は、今回のエキスパート・インテグレーテッド・システムが全世界で同時発表されたことをまず報告し、「本日はITの歴史的な変換となる製品がスタートする日」とアピール。「ITの常識と経済性を根底から変える」と述べた。
こうしたカテゴリが登場した背景として、橋本氏が挙げたのはIT予算の7割を占める運用コストとデータ量の増大だ。「このままでいくと運用費で情報システムがつぶされてしまう」(橋本氏)とのことで、「メインフレームの信頼性、アプライアンスの使いやすさ、クラウドの俊敏性などを合わせ持った新しいカテゴリ」のコンピュータシステムが必要になってきたと述べる。
数千のプロジェクトで培った最適な構成をパターンに
続いて日本IBMの専務執行役員でハードウェアを担当する藪下真平氏と常務執行役員でソフトウェア担当のヴィヴェック・マハジャン氏が製品詳細を説明した。
藪下氏は、橋本氏が説明した運用コストの増大やビッグデータの現状をおさらいしたあと、時代や経営の要請に対応し続けたIT基盤がどんどん複雑化している現状を説明。こうした事態を解決すべく、同社が推進している「Smarter Computing」の分野において、汎用機、アプライアンス、そしてクラウドをいいとこ取りし、システムの基盤構築や運用を抜本的に改革する製品の開発を進めてきたという。
この結果として登場したのが、エキスパート・インテグレーテッド・システムで、その第一弾となるのがIBM PureSystemsファミリーで、今回は仮想化リソースを迅速に利用できる「PureFlex」とBIやコンテンツ配信などのアプリケーションまでを統合化した「PureApplication」の2機種が発表になった。
PureFlexはPOWER7やx86のサーバー、Storwize 7000やFlexSystem V7000などのストレージを高速ネットワーク(EthernetやFibreChannel、InfiniBand)で接続し、ハイパーバイザーやOSを載せたインフラシステム。ハイパーバイザーやVMware、Hyper-V、KVM、PowerVM、OSはWindows、Linux、AIX、IBMiなどが選択できる。PureApplicationはPureFlexのインフラシステムに加え、ミドルウェアまで含まれており、さらにカタログからアプリケーションを選択可能だ。
最大の特徴は専門家の知見をパターンとして実装し、出荷前に最適化が済んでいる点。ここでいうパターンとはIBMが数千のプロジェクト経験で培ってきたアプリケーション構成を指し、サーバーのトポロジー、コンポーネントとリンク、OSやミドルウェアのパラメーター、モニタリング、仮想マシンやスケーリング、ログのポリシー、セキュリティ設定などの情報を含むという。こうしたパターンにより、構成検討や据え付け、仮想化環境、ミドルウェアの導入までが大幅に短期化。仮想化環境であれば、電源を入れてからセットアップが完了するまで4時間、さらにミドルウェア環境の構築も数分~1時間で済むとのこと。こうしたクラウド向けのターンキーソリューションは今まで「IBM Cloud Burst」が担っていたが、今後はこのPureSystemsを提案していくことになるという。
もう1つの特徴は、前述したIBM自体の知見のかわりに、認定パートナーや独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のノウハウやソリューションを組み込めるという点だ。「IBM PureSystems Centre」という認定パートナーのコミュニティサイトが用意されており、ソリューションや業種・システムで検索し、ISVのアプリケーションパターンをダウンロードできる。「ポータルサイトから無料でチューニングできる形で提供する」(藪下氏)という。
参考価格はPureSystemsが2350万円(税別)からで、サーバー統合やプライベートクラウドの導入を検討している企業やデータセンター事業者をターゲットとする。今後、負荷が増大した場合にパブリッククラウドに処理させるハイブリッドクラウドの実現も計画するという。