技術の融合か、それとも流出か
もうひとつ注目されるのが、双方が持つ技術の融合だ。
設立される合弁会社の社長を務めるNECパーソナルプロダクツの高須英世社長は、「レノボには、NECが持っていない開発力があり、こうした力を最大限に活用していきたい。いままで以上に顧客ニーズに合致した魅力ある製品が、NECブランドのPCとして開発できるだろう」とする。
とくに両社が得意とするノートPC分野での融合は注目されるものだ。
「ThinkPadが持つ技術を、NECのLaVieのなかに取り込んでいくことも考えていきたい。また、LaVieならではの技術もThinkPadのなかに採用されることになるだろう」(高須社長)と、早くも提携での成果を目論む。
まだ具体的なものではないが、ThinkPadのハードディスクアクティブプロテクション技術などがLaVieに採用されたり、LaVieで採用していたスクラッチリペア技術が、ThinkPadに採用される可能性も捨てきれない。
レノボは、2010年12月に、ThinkPadの開発拠点である大和研究所を、神奈川県横浜市のみなとみらいに移転。「今後20年継続できるように新たな投資を行った」(レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長)という段階。提携話の裏で、大和研究所を日本IBMの敷地から独立させるとともに、体制強化が進んでいたことがわかる。
一方で、NECのPC開発拠点である米沢事業場では「元気な米沢活動」と称し、様々な技術開発が進められており、静音技術やエコ技術という観点からも先進的な技術が生まれている。
この大和研究所と、NECパーソナルプロダクツ米沢事業場との連携は、今回の提携において、隠れた重要なポイントだといっていいだろう。
だが、かつてレノボが、日本IBMのPC事業を買収した後、ThinkPadのキーボードタッチが変わったという声が多数でて、ThinkPad離れを誘発したことがあった。こうしたことが再び起こるようだと、両社の技術面での提携成果は限定的になるということも忘れてはならない。
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