9月28日、シスコシステムズはデータセンター向けのアーキテクチャを拡張し、仮想アプライアンス提供のほか、データセンタースイッチの新製品「Nexus 5548」とCisco UCSの新ブレードを投入した。特にサーバー製品「Cisco UCS」を擁する同社の仮想アプライアンス市場参入は大きなインパクトになりそうだ。
データセンター革命を続けるシスコの新製品
発表会においてシスコシステムズ 専務執行役員 データセンター事業統括 石本 龍太郎氏は、同社が推進するData Center 3.0構想をより推し進めた新アーキテクチャ「Cisco Data Center Business Adbvantage」について解説を行なった。
新アーキテクチャでは、デスクトップ仮想化やクラウドを前提に、より高いレベルの仮想化、統合化、自動化を推進する。これを実現するため、新たに仮想アプライアンス製品群「シスコユニファイドネットワークサービス」を追加したほか、既存ネットワークの統合化を実現するユニファイドファブリックや、統合ICT環境「Cisco UCS」を代表とするユニファイドコンピューティングに拡張を加えたという。製品の詳細については、プロダクトマネージメント シニアマネージャーであるディーン・ホウアリ氏が解説した。
シスコユニファイドネットワークサービス
今まで物理アプライアンスやモジュールで提供されていた各種ネットワークサービスを仮想化対応したもの。従来、同社がCisco ANS(Application Network Services)として提供していたアプリケーション配信機能を拡張し、セキュリティやアプリケーション高速化、ロードバランシングなどの機能を仮想アプライアンスとして提供する。今回は、仮想セキュリティゲートウェイである「Cisco Virtual Security Gateway(Cisco VSG)」、WAN高速化を実現する「Cisco virtual Wide Area Application Services(Cisco vWAAS)」の2種類が提供される。
Cisco VSGはマルチテナント環境でセキュリティを提供する仮想アプライアンス。ホウアリ氏は「今日、仮想化環境のセキュリティは、物理アプライアンスのセキュリティポリシーを仮想マシンの所属するVLANごとにマッピングしていました。しかし、VSGではセキュリティゾーンという概念を持っており、VLANにマッピングする必要はありません。仮想マシンに対してポリシーが追従します」とCisco VGSの機能について説明した。アクティブ・スタンバイのHA構成をサポートするほか、セキュリティポリシーは「Cisco Virtual Network Management Center」により、統合管理が行なえるという。
一方、Cisco vWAASはWAN最適化を提供する仮想アプライアンスで、VMware ESX/ESXiで動作し、Cisco UCSや各種x86サーバーに対応する。こちらも仮想マシンにポリシーが追従するというもので、仮想マシンの追加とともに自動的にWAN最適化サービスを適用することができる。
仮想アプライアンスへのトラフィックの振り分けは、同時に発表された仮想スイッチ「Nexus 1000V 1.4」のvPath機能で提供される。今後は、ロードバランサーなど他のネットワークサービスにも拡張される予定。
シスコユニファイドファブリック
Ethernet、FCoE、FCなどを統合するシスコユニファイドファブリックの中核となるNexusに、第2世代にあたる「Nexus 5548」が追加された。Nexus 5548では、1Uラックマウント筐体に48ポート(32ポート固定+拡張スロット)を搭載可能で、従来に比べてポート密度を2倍に高めた。その他、UCSのサーバー接続用スイッチである「Cisco Nexus 2224TP 1GE Fabric Extender」やシャーシ型スイッチ「Nexus 7000」用の32ポート搭載10GbEモジュールも追加された。
シスコユニファイドコンピューティング
Cisco UCSにも新ブレード「Cisco UCS B230 M1」を追加した。インテルのXeon 7500番台、および6500番台に対応し、最大16コアのCPUを搭載できる高速なブレード。ハーフブレードでありながら、32のメモリスロットが用意され、最大512GBのメモリに対応する予定。高速なSSDにも対応する。データベース処理や仮想デスクトップ、金融・サービスプロバイダの要件を満たすという。また、Cisco UCS Managerもバージョンアップされ、Cisco UCSのB(ブレード)とC(ラックサーバー)の管理に対応したほか、VLANポート数が大幅に拡張された。
Cisco UCSの顧客数は1700を突破
なお、石本氏はCisco UCSについてのアップデートも行なった。まず2年前の発表時には1種類だった管理ツールが大幅に増加したことが報告された。現在、マイクロソフト、IBM、HP、BMCなど16のベンダーの管理ツールで連携が可能になっている。顧客数は全世界で1700を超え、エコパートナーも40社を超えたという。
シスコ自体もインドや米国の開発部隊が中心になって「CITIES」というプライベートクラウドを運用しており、「10分で自分の欲しいリソースが手に入る」(石本氏)ようになっているという。Cisco UCSに関しては、国内ファーストユーザーである近畿大学のようにデスクトップ仮想化のインフラとして利用されるケースが多く、先日発表されたシトリックスとのデスクトップ仮想化分野での提携も「勝ちパターン」としてアピールされた。今後はサーバー、ネットワークなど一体化したサポート体制の拡充やデスクトップ仮想化以外のプライベートクラウド事例が重要になるだろう。

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