無線LANやWAN、バッテリーでサイズが決まる
片面実装でtype Pより2割薄くなる
そんな無茶振りから、VAIO X開発プロジェクトはスタートする。実際の開発は、品川にあるソニー本社のチームと、生産を担当する長野テックの開発部隊が共同であたった。担当チームの中には、VAIO type Zやtype G、type Uといった小型軽量モデルの経験が豊富なスタッフが揃っている。
彼らが考えた「使い勝手を犠牲にしないパッケージ」を理解するには、中を分解しながら見ていくのがわかりやすいだろう。それはすなわち、林氏たち初期検討チームが作ったモックアップを、現実のものにしていく過程にほかならない。
まず重要になるのはバッテリーだ。長時間駆動を実現するには、それだけ容量の大きなバッテリーを搭載する必要がある。バッテリーは単体のパーツとして最大のものであり、厚さ・大きさを規定する上で大きな制約となる。
林「軽くて薄くても、バッテリーライフが短ければなんの意味もありません。Xの場合には、このサイズでtype Pの大容量バッテリーと同じ容量(4100mAh)を確保しています。キーボードの下の部分にバッテリーがあり、ボディーのほぼ半分をカバーしてしまいます。すなわち、マザーボードなどには残りの後ろ半分しか使えません。『では、ここに(本体部分を)入れるためにはどうしたらいいか』と、設計の検討を始めました」
設計を担当した、VAIO事業本部 第一事業部の新木将義氏は、検討の経過を次のように説明する。
新木「バッテリーをとにかくたくさん搭載したかったので、この位置に確保するのはシンプルな発想です。通常の大容量バッテリー、すなわち10時間は動作する状態にしても、外に飛び出さずフルフラットな形状を保つ、というのは条件に入っていました。薄さと重さも、林さんに相当初期の段階から指定されていました。ターゲットが出てきたことで、各担当がそこに向けて動き始めた、と言えるでしょう」
「結果的に、本体が入る場所はキーボードの下になります。そこでまず、『薄さの理論上の限界値はどこだろう』という検討に入ったのです。中でも一番分厚かったのは、無線系のミニカードです。これは規格で決まっているものですので、こちらでは大きさを変えられない。それならば『このカードの厚み以下にすべてを収めればいい』という発想をしました」
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