2週続けてお送りするVAIO Xインタビュー第二弾の主役は、製造・設計を担当した、長野県安曇野市にあるソニーイーエムシーエス(株)長野テックだ。
どんな製品も、それを製造する工場がなければ世に出ることはない。付加価値の大きい製品ほど、その付加価値の分だけ、製造の現場での努力が必要になる。パソコンは「汎用パーツの集まりであり、どんな工場でも作れる」といったニュアンスで語られることが多い。だがVAIO Xのような製品となると、また話は別である。
では、VAIO Xの開発・製造の現場では何が行なわれていたのだろうか? 後編は、その点にフォーカスしてみよう。
「品質保証」を開発段階から考慮
前編の記事で述べたように、VAIO Xは「薄さ」「軽さ」「長時間駆動」の3点に絞って開発された製品である。それを実現するためには、さまざまな技術的トライアルが必要となる。実現に向けてソニーが選択したのは、ソニーイーエムシーエスと密接に連携して開発することだ。
開発リーダーである林薫氏は、以前の反省を次のように語る。
林「ずいぶん前は、ソニー側で開発したものを長野テック側に渡す、という形をとっていたこともあります。でも、それでは思ったような製品ができなかったんです。製造の現場でないとわからないことが、いくつもあるのです」
VAIO Xに詰め込まれた工夫の中でも、特に「現場に近くなくてはできない」ことが明確に現れている部分が、「動作保証」に関わる部分である。
ソニーイーエムシーエスにて品質管理を担当する笠井孝史氏は、筆者を品質保証用の「テストルーム」に案内してくれた。そこで彼が見せてくれたのは、VAIO Xに対する過酷なテストの一部だった。
- ある程度の高さから落とす
- 本体を治具で挟み、全体に150kgfの加重を掛ける
- セットの角に衝撃を与える
ノートパソコンの堅牢性を示すためのテストとして、いくつかのメーカーで、同様のテストが行なわれているのを、写真や映像などでごらんになった方も少なくないはずだ。
だが、VAIO Xのように薄い機種でそれが行なわれているのを見ると、なにか「いけないものを見ている」ような痛々しさを感じる。衝撃を緩和するためのスペースも、堅牢さを上げるロールバーを入れるための重量も存在しないからだ。
これらのテストを、VAIO Xは次々とクリアーしていく。無論テストは、「同じことをしても壊れないことを保証するもの」ではない。くれぐれもご自分のノートで試そう、とは思わないでいただきたい。だが、仮にこのようなことが突発的に起こっても、できる限り故障しないものを作れるよう努力することが、笠井氏のチームに課せられた課題なのである。
笠井「我々の仕事は製品の品質をチェックすることですが、『製品ができあがったあと』からのチェックでは、できることに限界があります。開発の初期に、設計段階からチームに合流し、我々の意見を反映する形で開発を進めています」
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