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コスト削減100本ノック 第14回

導入から運用管理までのコストを削減

【14本目】ファイルサーバをNASにリプレース

2009年09月02日 09時00分更新

文● 川添貴生/インサイトイメージ

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価格帯別に見るNASの機能

 さて、ひとくちにNASといってもストレージの容量や搭載されている機能によって大きな価格差が存在する。そこで価格の違いによってどういった差が生まれるのか、簡単に見ていこう。

 まずもっとも安価な製品としては、単体のHDDにNASとしての機能を組み合わせたものがある。主にコンシューマ向けに販売されており、2~3万円程度で購入できる製品が多い。

 単体のHDDを使ったNASは数多く販売されているが、なかでもビジネスユースでの利用を意識した製品としては、アイ・オー・データ機器の「HDL-GXR」シリーズが挙げられる。HDDを最大3台増設できるeSATAポートを搭載し、高い拡張性を持っているのが特徴だ。またHDL-GXR内蔵HDDと外付けHDD間でデータをミラーリングすることも可能となっている。

アイ・オー・データ機器「HDL-GXR」。実売2万円程度で購入できる、小型NAS製品だ

RAIDに対応する10万円台のNAS

 その上の10万円前後の価格帯になると、複数台のHDDを搭載してRAID構成を可能にしたものが中心となる。ただ、選択できるRAID構成は限定的で、RAID 0と1、5の3種類から選ぶ、といった形の製品が多い。

 HDDを換装できるようになるのもこの価格帯からだ。RAID 1や5を利用していれば、故障したHDDを取り替えて復旧することが可能になる。なお注目したいポイントとしては、ホットスワップへの対応の有無が挙げられる。ホットスワップに対応していれば、NASを動作させたままHDDの換装が可能になる。HDDにトラブルが発生した際、その影響を業務に及ぼしたくないのであればホットスワップへの対応は必須である。

 またこの価格帯の製品では、企業利用を意識した機能を搭載したものが多い。たとえばバッファローの「TeraStation TS-XL/R5」シリーズは、Active Directoryとの連携機能を持っており、Windows Serverで環境が構築されていれば、利用者を認証するためのユーザー登録作業が不要になる。特に複数台のNASを利用する際には、ユーザーをActiveDirectory環境で一元的に管理できるメリットは大きい。

4台のHDDを内蔵し、RAID 5構成も可能なバッファロー「TeraStation TS-XL/R5」シリーズ。Active Directoryの連携機能やUPS接続用端子の搭載など、企業向けの機能を搭載するのが特徴だ

 またバックアップ機能としては、別のLinkStationにデータをコピーする「レプリケーション」機能が用意されている。2台のLinkStationが必要になるが、故障発生時にネットワークケーブルをつなぎ替えるだけで運用を継続できるのは便利だろう。HDDは4台構成で、稼働中でも故障したHDDを取り替えられるホットスワップも可能だ。対応するRAIDは1/0/5/1+0の4種類、で求められる信頼性や読み書き速度に応じて選択できる。

多数のHDDをサポートするミッドレンジNAS

 さらに価格帯が上のミドルレンジの製品になると、RAID 6やRAID 1+0、あるいはRAID 5+0など、柔軟なRAID構成がサポートされるようになる。8台や16台など多くのHDDを搭載できるようになるのもこのクラスからで、その分大容量のNAS環境を構築できる。また、安価なSATAインターフェイスのHDDではなく、信頼性の高いSASインターフェイスのドライブを使う製品があるのもこのクラスからだ。

 このクラスの製品の1つとして挙げられるのが、日本ヒューレット・パッカードの「HP StorageWorks X1000 Network Storage System」だ。本製品は「Windows Storage Server 2008 Standard x64 Edition」をOSとして採用し、CAL不要でWindowsベースのファイルサーバを構築できる。また、SCSIプロトコルをEthernet上でやり取りするiSCSIに対応しており、製品に添付される「Microsoft iSCSI Software Target」を利用することで、サーバやクライアントPCの論理ディスクとして使うこともできることも特徴だ。

Windows Storage Serverを採用するミッドレンジNAS「HP StorageWorks X1000 Network Storage System」

多くの技術を搭載するハイエンド製品

 ハイエンドのNAS製品では、汎用ハードウェアと汎用OSを組み合わせたファイルサーバの単なる置き換えではなく、オリジナルのメリットを持つ製品が各社から投入されている。特に注目を集めているのはスケールアウトを容易にする技術だ。たとえば複数のNASを統合して1つのNASに見せる技術、あるいはオリジナルのファイルシステムによって柔軟なディスクスペースの拡大を可能にする技術など、メーカーによって異なる方法で実現されている。

 たとえばアイシロン・システムズは、単一の論理ボリュームのままストレージ容量を拡大できる「OneFS」と呼ばれる技術を自社のNAS製品に組み込んでいる。OneFSでは独自コントローラとHDDが組み合わせられたノードを追加することにより、運用を継続したまま論理ボリュームの容量を増やすことが可能だ。これにより、ファイルサーバを止めることなく容量不足に対応できるほか、従来どおりの方法でファイルサーバにアクセスできるためエンドユーザーに負担がかからないこともメリットだといえる。

OneFSを搭載するアイシロン・システムズの「Isilon IQ」シリーズ

 また、ハイエンドの分野ではSAN(Storage Area Network)と組み合わせて使う「NASヘッド」が利用されることも多い。「SAN(Storage Area Network)」のストレージとしての利用にも対応している。SANとはディスクアレイ(複数のHDDを1つの筐体にまとめた装置)とサーバを、Ethernetやファイバチャネルで接続する仕組みである。NASヘッドはSANに接続されているディスクアレイをストレージとして使ってNASを実現するためのもの。単体のNASよりも柔軟なストレージ構成が可能になる。

 なお、NASを導入するにあたって注意したいのは、簡単にファイルサーバを構築できるからと、次から次にNASを増やしてしまわないことだ。台数が増えれば、当然運用管理の手間も増えてしまい、コスト削減効果も薄れてしまうことになりかねない。予算との兼ね合いにはなるが、最終的には全社的にファイルサーバを統合することを意識して製品を選択したい。

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