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コスト削減100本ノック 第14回

導入から運用管理までのコストを削減

【14本目】ファイルサーバをNASにリプレース

2009年09月02日 09時00分更新

文● 川添貴生/インサイトイメージ

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NAS選びのポイント

 こうしたメリットからNASが利用されるケースが増え、それに伴って多くの製品が市場に投入されている。では、NASを選ぶ際のポイントには何があるのだろうか。

 まず一番に注目したいのはストレージとしての基本的なスペックだ。容量や対応するRAID構成、バックアップの機能などがポイントになる。

 容量は製品によってもさまざまだが、最近では低価格帯の製品でもTB単位のストレージを搭載しているケースが多い。ただ用途によって必要な容量は大きく変わり、たとえば大人数でサイズの大きい動画ファイルを共有するといった用途では数TBでは足りない、といったことも考えられる。そのため、まずは利用者数や保存するファイルの大きさなどを考慮し、どの程度の容量があれば十分なのかを検討する必要がある。

 ストレージの容量以上に重要なポイントといえるのが、複数のHDDを組み合わせることで信頼性を向上させる、RAID構成の内容である。

 RAIDには耐障害性の違いなどによりRAID 0/1/5/6などのレベルがあり、これらを組み合わせて使うケースもある。ここで簡単に、それぞれのRAIDの特徴をまとめておこう。

 RAID 0は1つのデータを複数のHDDに分散して書き込むというもの。複数台のディスクに対して、データの異なる部分を同時に読み書きするため、1台のディスクを使うよりも高速にアクセスできるというメリットがある。ただ、1つのデータを分散して書き込んでいるだけであり、HDDのうち1台でも故障するとデータは復旧できない。このため信頼性よりもパフォーマンスが要求される場面で使われるほか、ほかのレベルのRAIDと組み合わせて使われることも多い。

 RAID 1は、複数台のHDDに同じ内容を書き込むことで耐障害性を向上させている。たとえば2台のHDDを使ってRAID 1を構成した場合、その2台のHDDに記録される内容は同一となる。このため、いずれかのHDDが故障しても、別のHDDの内容を使って復旧できるわけだ。このようにRAID 1は高い耐障害性を持つが、一方で同じ内容を複数台のHDDに書き込むため、何台HDDを用意しても使える容量は1台分となる。

 RAID 5とRAID 6は、いずれもデータを細切れにして複数台のHDDに分散して書き込む。このとき、同時にパリティと呼ばれるデータを書き込んでおき、いずれか1台が壊れた場合は、そのパリティから故障したHDDに書き込んだ内容を復旧できる。両レベルの大きな違いとしては、耐障害性の高さが挙げられる。RAID 5は1台のHDDの故障であれば復旧可能だが、2台が同時に故障すると対応できない。一方RAID 6は2台のHDDが同時に故障しても復旧することが可能だ。なお、RAID 5は最低3台、RAID 6は最低4台のHDDが必要となる。

 RAID 1+0や5+0、6+0など、複数のRAIDを組み合わせる構成も使われている。たとえばRAID 1+0であれば、RAID 1が持つ高い耐障害性と、RAID 0のアクセス速度の速さの両方のメリットを享受できるというわけだ。

 ファイルサーバに重要なファイルを保存するということであれば、こうしたRAID構成による信頼性向上は必要不可欠である。ただ、ディスク容量やアクセス速度にも影響するため、用途によって選ぶべきRAID構成は変化する。そのため、事前に用途や求められる信頼性を勘案し、その上で求めるRAID構成に対応した製品を購入する必要があるだろう。

導入前に考えたいバックアップ手段

 また注意したいのはRAIDはあくまでもHDDの故障というトラブルからデータを保護するためのものであり、ファイルのバックアップではないということ。たとえばユーザーの操作によってファイルを誤って削除した場合RAIDでは対応できないが、ファイルをバックアップしておけば復旧できる可能性がある。つまりRAIDとバックアップは別物であり、RAID構成のNASを使っていてもバックアップは必要であるというわけだ。

 NASによっては、このバックアップのための機能を搭載している製品もある。製品によってバックアップの方法は異なるが、低価格帯の製品で多いのがNASのUSBインターフェイスに接続した外付けHDDにファイルをコピーするというもの。バックアップ先のHDDの故障には注意する必要があるが、安価にバックアップ環境を構築できるのがメリットだ。

 ネットワーク経由でアクセスできる、別のストレージをバックアップ先として指定できる製品もある。この機能を利用し、同じNASを別途用意して二重化するというのも1つの手だ。また、こうしてバックアップを取っておけば、いざという時にクライアントからの接続先をバックアップ先のNASに切り換えることで、トラブル発生時に迅速な復旧も可能になる。

 データの重要性によっては、さらにテープメディアを利用したバックアップなども検討しなければならないだろう。いずれにしてもバックアップは必要不可欠であり、どのような形でバックアップを行うのかも導入前に検討しておくべきだ。

 なお、特に低価格帯のNASでは、アクセスログの取得やユーザー認証など、汎用OSを使って構築したサーバでは利用できて当たり前の機能が搭載されていないことも多い。このため、NAS導入時には必要と思われる機能をリストアップし、それが問題なく利用できるかどうかを十分に確認するべきだろう。

(次ページ、価格帯別に見るNASの機能 )


 

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