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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第63回

ヒツジの執事がやってきた理由

2009年03月07日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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生活密着の先にある、未来の姿とは?

 i コンシェルのコンテンツは、おそらくこれまでのケータイコンテンツとは違った種類のものも必要だ。例えば自治体ごとに違う情報。生活インフラなら断水や停電の情報、自治体が出す健康診断や乳がん検診などの情報などは、インターネットのウェブサイトにはあるが、ケータイから取得しにくかったし、プッシュもしてくれていない。

いよいよ10周年を迎えたiモード。i コンシェルもあくまでiモードというプラットフォームの存在があってこそのサービスだ

 「公的機関の情報などをアグリゲートする必要性も出てくるでしょう。自治体によって温度差はものすごくありますが、自治体と一緒にやっていかなければならないサービスも含まれていると思います」(前田氏)

 また位置情報の活用についても、将来的にはi コンシェルに関連してくるのではないか。ドコモも参加している情報大航海プロジェクトの「マイ・ライフアシストサービス」では、自分の行動履歴から関連する情報を提供するような試みがあり、これらがi コンシェルと連携し始める未来像もあるだろう。

 「どのような位置情報の使い方がユーザーにとって便利なのか、常に考える必要があります。街を歩いていたら勝手に安売り情報でケータイがあふれかえっていたら、ユーザーにとっては迷惑なだけです。むしろ、欲しいモノが決まっていれば、安売りの情報はその場所にいなくても欲しい情報です。このように、位置情報は万能ではないが、便利なシーンもあるはずです」(前田氏)

 便利なシーンとは、コンテクストの「限定感」「特別感」ではないか、と前田氏は指摘する。たとえば毎日行く職場の周りの画廊の情報はいらないが、休日にたまたま行った銀座の画廊の情報は欲しいかもしれない。ただ、これらを実現するには、「マイ・ライフアシストサービス」で行なっているような細かい行動履歴が必要で、「どれだけの人がONしてくれるのか? 便利さとのトレードオフになるだろう」(前田氏)とのことだ。

エリアのイベント情報も自動取得してくれるi コンシェル。たまたま行った場所でも自分に最適な欲しい情報が飛び込んでくればちょっとした感動があるだろう

 iモード10周年を迎える2009年、ケータイをデバイスとしてとらえるよりも、パートナーとして見ることもできるようになってきた。ケータイ自体がその人のコピーのような存在と言えるほど、生活には密着して入り込んでいるシーンも見られる。

 そのケータイを賢くしていくのがi コンシェルであり、新しいプラットホームなのだ。「オマエ、そんなに賢くなったのか! とユーザーに思われる必要不可欠な存在にしたい」(前田氏)。思わずそんな感想を漏らしてしまうのが、未来のケータイの姿なのかもしれない。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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