今回は少し端末やサービスから離れた話を書こうと思う。実は最近いくつかのiPhoneアプリ開発に携わっている。これまでは使う一方だったのだが、自分のアイデアや欲しいと思っているモノを中心に、作ることにも興味を持ち始めた。
iPhoneを使っていると、便利で素晴らしいアプリをたくさん見つけられる。一方でふとした瞬間、「こういうツールがあったら便利だったり、おもしろいのにな」と思いつくことがある。アプリの追加機能として欲しいと感じることもあるし、まったく新しいアプリとして欲しい、と思うこともある。
そしてアプリを実際に作ってみると、公開するしないに関わらず、便利かどうか、おもしろいかどうかを自分で検証できる。これはビジネスとしてだけでなく、アプリに対する自分の勘みたいなものを確認する、とても有益なプラットホームとして活用できることを意味しているように感じる。
今回はユーザーサイドからアプリを作るサイドへとゆっくりと移行している中で考えていることを投げかけたい。
iPhoneアプリのビジネス以外の魅力
iPhoneのApp Storeでは、すでに通算20億回以上ダウンロードされ、登録されているアプリの本数自体も10万本を数えるなど、巨大な市場を形成している。
この市場で売れ筋のアプリを作ることはなかなか高いハードルだ。一方で個人やベンチャー企業が作ったアプリがランキングに名前を連ねることもまだまだ珍しくない。アプリのマーケットとしての魅力をどう評価するかは、これからも議論が続くのではないかと思う。
一方でビジネス面からとは違う視点も存在する。より簡単にアプリを作り、活用できるようになった点に着目すると、これはめざましい進化だと思うのだ。
これまでのケータイは、Javaなどのアプリ実行環境を持っていたが、アプリの挙動が微妙に違ったり、そもそも画面の解像度を始めとするハードウェアのスペックがバラバラだったがために検証作業を必要とした。また位置情報やおサイフケータイなど、セキュリティに関わるハードウェアへのアクセスは勝手アプリでは難しかった。
iPhoneではSDKで許可されている範囲で、アプリがハードの機能を利用できる。iPhone OS 3.0からはDockやBluetoothで外部機器との連携も可能になった。ケータイと比べれば、ほぼ「自由」と言っていい。
別にApp Storeで公開しなくても、ちょっとしたプロトタイプや実験において、iPhoneというハードウエアとそれに紐付く携帯電話の通信を利用できるのだ。これはビジネス上のフィージビリティスタディ(予備調査、実現可能性の調査)や大学での研究、実験用としてとても魅力的であることを示している。
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