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Letter from Silicon Valley 第8回

ARPAnetプロジェクトに加わったシリコンバレーのエンジニアに聞く

2008年09月12日 13時00分更新

文● 秋山慎一

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いまはITエンジニアなら誰でも知っているプロトコルですが、当時はOSI(Open Systems Interconnection)の7階層モデルがなく、大学にコンピューターサイエンスはあったけれど、ネットワークの講座というものはなかったそうです。プロトコルはアプリケーションごとに考えるのが当たり前で、スー氏はそれを「 キャッスルモデル 」と呼びました。

※  キャッスルモデル
「ルーティングとか、ターミナルコントロールとかいったアプリケーションごとに、全部のレイヤを含めて考えなきゃならなかった。それぞれが独立してて、あるものは今でいうレイヤ4、あるものはレイヤ7までを含む、といった具合なので、建物(城)に見立ててキャッスルモデルと呼んでいるんだ」

そんな歴史に残るプロジェクトに携わっていたスー氏ですが、なぜその後BBNを離れたのでしょうか。「カルフォルニアに行きたかったんだよ。気候のよいこの地で、スタートアップビジネスに関わりたかったんだ。当時はようやくこのあたりがシリコンバレーと呼ばれだした頃で、まだまだスタートアップ企業は少なかったけれどね」

その後シリコングラフィックスでネットワークチームのジェネラルマネージャを勤めたり、ウォッチガードのCTOを勤めたりして現在に至っています。年齢は聞きませんでしたが、そろそろ60に近いはずです。エンジニアというよりは技術担当重役、といった役回りでしょうが、筆者もかつてスー氏と実際の業務で細かい仕様の議論などしたことがあります。まだまだ現役で、突っ込んだ技術では到底かないません。

キャッスルモデル

キャッスルモデルを説明するスー氏

キャッスルモデル

今後について聞かせてください、という質問には、「ネットワークのことかい? 個人のことかい? ネットワークはもっともっと人々の身近になって、さらに役立つようになっていくだろうね。特に映像がもっと当たり前に使えるようになる。今も技術はあるけれど帯域が足りなかったりコストが高かったり、まだ一般化しているとは言い難い」。確かに、YouTubeを始め、ネット上で映像が身近になってきています。「YouTubeもあるけれど、あんな小さな画面じゃまだまだ。今のテレビくらいの映像を、ネットを使ってみんなが当たり前に使えるようになる。そのためにいろいろな進歩があるだろう」。スー氏は今、アレイネットワークスのCTOとして、Webアクセスの高速化や、セキュリティを守りつついかにユビキタスなアプリケーションアクセスを実現するか、といった課題に取り組んでいます。個人の将来はどう考えていらっしゃいますか? と聞くと、「個人的には? そろそろリタイアしたいなあ」という答えが返ってきました。

Cisco Way駅にて

Cisco Way:スー氏の勤めるアレイネットワークスのあるミルピタスは、ネットワーク隆盛の象徴ともいえるシスコシステムズの広大なキャンパスに隣接しています。サンノゼを中心に走る路面電車のライトレールには「Cisco Way」という駅もあります。

Cisco Way駅にて

Cisco Way駅からの眺め

Cisco Way駅からの眺め。遠景はシスコの建物の1つ

Cisco Way駅からの眺め

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービス にてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、 マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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