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Letter from Silicon Valley ― 第14回

ワイヤレスセンサネットワークが動き出した

2009年04月17日 04時00分更新

文● 秋山慎一

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インダストリアルオブジェクトは次々とネットワークに接続され、コントロールされるようになるだろう。そんなシステムの目であり耳となるのが、ワイヤレスセンサネットワークだ。

ネットワークマガジン2009年5月号掲載

「過去20年、我々は4億台のコンピュータを接続してきた。これからの20年は数十億台のインダストリアルオブジェクトをつなぐのに費やすことになるだろう」

シスコシステムズの当時の CIO ジェフ・プラトン氏はこういっています(2008年6月24日付けのComputerworld誌の記事より翻訳引用)。インダストリアルオブジェクトとは、要するにコンピュータ以外のモノ、ということです。この中には、工場の機械から、冷蔵庫などの家電品、ビルの空調設備など幅広い対象物が含まれます。現実世界のあらゆるモノが、ITネットワークに接続され、情報をやりとりしたり、コントロールされるようになっていく、ということです。

※  CIO
Chief Information Offi cer。企業内の情報システムを統括する責任者。

米国ではオバマ大統領が就任演説の中で「成長への新しい基盤を築くために、道路や橋や高速ネットに加えて、 エレクトリックグリッド を構築する」と語りました。電力の利用をネットワークを介して把握するとともにコントロールすることにより、効率的で無駄のない電力システムを実現する大きなプロジェクトです。

※  スマートグリッド
エレクトリックグリッドは電力網のことですが、大統領は暗黙に"スマートグリッド"(賢い電力網)を指しています。エアコンなど末端の機器の状況を認識し、コントロールも可能。地域や時間帯による電力配分や消費を最適化し、電力消費を大きく削減できると期待されています。電力とITの統合を示すものです。

そのような近未来のITシステムで重要な役割を担うのが「 ワイヤレスセンサネットワーク(WSN) 」です。現実世界の状態をリアルタイムにITシステムにインプットする役割を担います。最近のワイヤレス技術と電池の発達により、実用的なWSNが可能になりつつあります。実用的であるためには、ケーブルによる配線が不要で、数年以上電池交換などのメンテナンスのいらないセンサが必要なのです。WSNの構成の概念は左ページの図の通りです。アクセスポイントを設置すれば、センサ自体はどこにでも手軽に配置できます。

※  WSN
多くのセンサからワイヤレスで情報を収集するネットワーク。日本でもWiFiで自動的にデータをネット上のサーバに集計する体脂肪体重計があるようですが、それも一例です。

今までも、工場での生産管理や物流管理など、センサを使ったコントロールはたくさん利用されていましたが、多くは専用のシステムとして個別に開発され、ケーブルで接続されたものでした。今注目されているWSNは、インターフェイスの標準化により、サーバやデータベースといったコンポーネントを導入するのと同様の感覚で一般的なITシステムと統合できる、ということがポイントです。

WSNの構成の概念図

WSN向けの汎用的な センサ や、センサからの情報を集約・解析したり、一般的なシステムとのインターフェイス(Webサービスなど)を提供するサーバ製品などが出荷され始めています。そのような製品を利用することによって、一般のITシステムに容易にセンサネットワークを組み込むことができます。たとえばビルやイベント会場、温室などの温度・湿度をモニタして換気や空調を最適化する、データセンターの温度を緻密にモニタして仮想サーバの稼動位置を移動し空調コストを削減するなど、さまざまな応用が標準的な技術を使って可能になります。標準化によって、今後普及と高機能化、価格の低下がスパイラル的に進んでいくのは間違いありません。

※  センサ
現実世界を感知し、電気信号に変換する末端装置。WSN向け汎用製品では温度、湿度、光などの計測が基本機能です。RFIDやフェリカ、バーコードリーダ、スマートグリッドで利用される電力計「スマートメータ」もセンサの一種。センサ自体も進歩の著しい分野です。

リスはもっともありふれた隣人:シリコンバレーは水鳥も多いですが、どこにでも見かけるのはリス。自然が身近にあるゆったりした環境も、シリコンバレーが人を集める魅力です。筆者のアパートの周りでもいつも無邪気に走り回っています。

先月号で紹介したサン・マイクロシステムズのサン・ラボでは、「 Sun SPOT 」というワイヤレスセンサを開発しています。温度や光に加えて、3D加速度センサを備えているのが面白いところ。Wiiのコントローラのような使い方ができます。

※  ●Sun SPOT
http://www.sunspotworld.com/から、ベースステーションとセンサ2つ、開発環境を含む開発キットを日本でも購入できます。送料別で7万6500円とのこと。

コンピュータシステムやインターネットという特別な世界に存在した「ネットワーク」は、これから身の回りのあらゆるものをつなぎ、統合する大きな存在へと、さらに進化を続けていくに違いありません。

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービス にてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、 マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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