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Letter from Silicon Valley ― 第4回

AT&TのU-verseを導入してみた

2008年05月02日 13時00分更新

文● 秋山慎一

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CATVと電話会社が、トリプルプレイで火花を散らすアメリカ。顧客獲得のためにIPTVサービスを始めたAT&Tの成否は、内外から注目されている。

ネットワークマガジン2008年6月号掲載

今アメリカでは、電話会社のAT&Tとベライゾンがケーブルテレビに顧客を奪われた反撃に、電話回線を使ったテレビサービスを急速に拡大しています。AT&Tは2006年にテキサス州のサンアントニオでIPTVの商用サービスを開始。最近は毎月のようにサービスエリアを拡大しています。筆者の住むシリコンバレーのサンマテオでも、2007年11月からサービスが始まりました。残念ながら、ベライゾンのサービスはまだ範囲外です。そこで今回は、我が家にAT&TのIPTV“U-verse”を導入してみることにしました。

※  U-verse
IPTVとインターネットのセット商品で、この商品自体はトリプルプレイ(電話・テレビ・インターネットの統合サービス)ではありません。AT&Tとしては既存の固定電話契約を守りつつ、それを含めてのトリプルプレイという戦略なのでしょう。

RG(Residential Gateway)RG(Residential Gateway):VDSLのモデムとルータ、有線LANスイッチングハブ、無線LANアクセスポイントを兼ねています。電話への接続口、4つのEthernetポート、そのほかのジャックがあります。無線LANを標準装備しているところが非常に便利。

NGN(Next Generation Network)の理想からいえば、FTTH(Fiber To The Home)を使うIP上のアプリケーションとして、テレビが送信されるべきです。ただ、現実の条件の中でトリプルプレイを実現するために、妥協案というべき方式が採られています。たとえばAT&Tは、IPを使って送信するものの、図のようにノードまでを光ファイバで、そこから先は銅線というFTTN(Fiber To The Node)という方式を採用しています。一方のベライゾンは、2兆円を超えるといわれる巨額の投資が必要なFTTH方式を選択。しかしTVはIPではなく、CATVと同様のRF方式で伝送します。

※  RF方式
Radio Frequency方式。電波によるテレビ放送のように、すべての放送を同時に送信し、受信側で目的の番組を選択する方式。

図:U-verseの利用イメージ
図:U-verseの利用イメージ

AT&Tは、双方向性やパソコンとの連携といったIPTVとしての強みがあるものの、VDSLの帯域(現状26Mbps程度)がネックとなっています。具体的には、同時に視聴できるHDTVは1軒に2番組が限界とされ、またインターネット接続の速度も1.5〜10Mbpsに限られています。一方ベライゾンはRF方式のためにチャンネル数に限界があり、IPTVの利便性を享受できません。

※  VDSL(Very high bitrate DSL)
ADSLよりも高速広帯域なことが特徴ですが、距離による損失が大きく、1500m程度までの短距離においてのみ、実用的な速度を発揮します。帯域不足への対処として、将来はノードの設置密度を上げてVDSLの距離を短かくするという選択肢がありうるでしょう。300m程度の距離であれば、50Mbpsぐらいの帯域は実現できるはずです。

DVR(Digital Video Recorder)
DVR(Digital Video Recorder):U-verseと契約すると、テレビを接続するためのセットトップボックスを3台まで標準で提供してくれます。そのうちの1台はDVR付きで、200GB程度のハードディスクを内蔵しています。システム情報を見てみると、OSはWindows CEで、192.168.1.64というIPアドレスを持っていました。

さて、U-verseの申し込みは工事の予約も含めてWebででき、申し込みの数日後には工事して開通します。工事には5〜8時間かかると説明されていて、「まさか」と思っていましたが、本当に朝9時前から昼の2時過ぎまで6時間近くかかりました。毎月の料金は、チャネル数(50〜400チャネル。ただし音楽チャネルなども含む)とインターネット帯域(1.5〜10Mbps)の組み合わせで決まります。筆者が選んだ200チャネルと6Mbpsのセットは月89ドルです。HDTVを視聴するには追加で月10ドルかかります。日本の感覚からするとやや高い感じでしょうか。

※  HDTV
High Definition Television。日本では「ハイビジョン」といういい方をされることが多いようです。

6時間の工事は無料6時間の工事は無料:最後にはWebやメールの接続法、DVRの使い方まで説明してくれました。途中、12時きっかりに「ランチを食べてくる」と1時間の休憩も。

IPTVの使用感は、画質についてはまったく違和感がなく、普通のテレビと何ら変わりません。日本ではデジタルテレビのチャネル切り替えが遅いことにうんざりしていたのですが、このIPTVはストレスがありません。また、ビデオオンデマンドは無料のものもありますが、正直たいしたコンテンツではなく、やはり有料の映画が目玉です。多数のコンテンツがあり、新作も1作品あたり4ドル程度とリーズナブルに見られます。ただ、ネット経由での録画予約など、ネットとの融合は便利ではありますがまだまだオマケ的です。そのあたりは今後の発展が期待されるところでしょう。

LANケーブルの引き回しLANケーブルの引き回し:既設の電話線をいろいろ調べて調整するほか、室内のLANケーブルの引き回しまで工事してくれます。至れり尽せりではありますが、アパートにドリルで穴をあけたり、すこし大雑把な感じもやはりアメリカ。

最後に一点。インターネット接続について、Webメールは問題なかったもののメールソフトからの送信ができなくて困りました。ウイルス(ボット)によるスパムメール送信が多いことへの対策として、ポート25の送信をすべてブロックしているとのこと。なんて強引な……。

  トラブルの顛末
メールによるクレームでらちがあかず、電話の音声自動応答システムと格闘、マニュアル頼みの一次サポート担当とすったもんだし、やっとのことで二次サポートとつながったら、「ちょっと直すから待ってろ」。3分ほどで開通してしまいました……。

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービスにてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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