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Letter from Silicon Valley第3回

NGNの目玉、トリプルプレイで先行する米国

2008年04月04日 14時46分更新

文● 秋山慎一

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NGNという念仏に興味がない競争社会のアメリカでは、実利本位に「次世代ネットワーク」が実現していく。すでにIPTVが普及し始めているのだ。

ネットワークマガジン2008年5月号掲載

NGN(Next Generation Network)が話題ですが、日本のNGNがわかりにくいのは、それがNTTの新通信インフラそのものを指すことが多く、その上で利用できるアプリケーションが見えにくいからではないでしょうか。もちろんNGNは、ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)などの国際機関が議論している「次世代通信インフラ」の規格を指す言葉です。しかし、NTTなどの電話会社が構築する個別の通信インフラを指す場合もあります。ですから、必ずしも間違った解釈ではないのですが、わかりにくいのも事実です。

※ NGN
日本を始め各国の通信事業者は2008〜2012年をメドに、交換機を使った電話網から光ファイバによる高速・大容量なパケット交換方式のIP(Internet Protocol)ベースに移行する計画です。

できるだけ簡単にNGNを説明するならば、通信(固定&移動電話)と放送がインターネットと統合される世界が実現するといえます。つまり、IP(Internet Protocol)ネットワーク上で、電話やテレビが、Webやメールと同様に1つのアプリケーションとして、高いクオリティで実現される情報通信の姿がNGN、といえるでしょう。

そのような世界を代表するアプリケーションとしては、電話とインターネット、そしてテレビを単一回線で提供する「トリプルプレイ」が挙げられます。トリプルプレイは非常にわかりやすく、NGNに先立ってすでに普及が進んでいます。

ケーブルテレビが火をつけたアメリカのトリプルプレイ競争

日本に比べてアメリカでは、ケーブルテレビ(CATV)が広く利用されており、半数以上の家庭はテレビを視聴するのに電波ではなくケーブルを使っています。そして、これは日本も同じですが、CATVがあれば、同時にインターネットのへのアクセスを提供することもできます。CATVインターネットは、ダイヤルアップなどよりずっと高速で便利なので広く普及しました。その後、ご存知のようにインターネットを使って安く通話できるIP電話が登場しました。アメリカのCATV会社はこれらをまとめて商品に仕立て、トリプルプレイを実現したのです。複数のサービスをセットで契約することで、利用者はトータル費用を低く抑えられ、サービス一本化のメリットを享受できるようになります。

日本の状況
日本でも、NGNに先立ってトリプルプレイの提供は始まっています。多くのケーブルテレビが提供しているほか、NTTも大都市圏を中心に提供しており、映像配信はRF方式が主流のようです。今年から始まるNTTのNGN実現後の動きが注目されるところです。

トリプルプレイサービスは今から4〜5年前にブームになり、AT&Tなどの電話会社の固定電話利用者が、どんどんケーブルテレビに流れていく事態になりました。当然、既存の電話会社も黙っておらず、巻き返しが始まります。電話会社は固定電話に加えて、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等を使ったインターネットアクセスが提供できます。ほかに欠けているものは何か? そう、テレビです。アメリカの電話会社は通信網を光ファイバ化し、サービスとしてテレビを提供し始めたのです。

※  AT&T
アメリカ最大の通信会社で、日本のNTTのようなものです。ベライゾン・コミュニケーションズが対抗勢力です。

アメリカには平屋が多い

アメリカではケーブルによるテレビ視聴が多いため、屋根の上のテレビアンテナ、という風景を目にすることは少ないのです。

たとえば最大手のAT&Tは、基幹網の光ファイバと末端の銅線というインフラ上でIPテレビを実現しました。またベライゾン・コミュニケーションズは、末端までをフルで光ファイバ化するFTTH(Fiber To The Home)方式を選択。こちらのテレビはIPではなく、ケーブルテレビと同様のRF(Radio Frequency)方式で配信しています。どちらもNGNというには中途半端ですが、トリプルプレイという目の前の課題を実現するための現実的な選択といえるでしょう。AT&Tでは、2008年末までに100万ユーザーの契約を見込んでいます。これだけ大規模な商用のIPTVシステムの開発は容易なことではなく、アメリカでもその成否が注目されています。

※  RF方式
電波によるテレビ放送のように、すべての放送を同時に送信し、受信側で目的の番組を選択する方式です。対するIPTVは、選択した番組だけが伝送されます。RF方式では回線の伝送容量との兼ね合いで、選択肢となる番組数に制限が出ます。

次回は、筆者の家に実際にAT&TのIPTV「U-verse」を導入して、その様子をレポートしましょう。

IP統合のメリット
IPTVでは双方向の通信が可能になり、インターネットと連携することで、より便利に利用できようになります。たとえば映画などのオンデマンド配信、出先でPCや携帯からのネットを介した録画予約、PCでのテレビの視聴などなど。近い将来にはYouTubeなどのインターネットコンテンツをテレビで見たりすることもできるでしょう。

ハーフムーンベイで

シリコンバレーのビジネスはめまぐるしいほどのスピードで進みますが、普段の生活は日本よりゆったりしているようです。すぐそばではこんな時間も流れています。

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービスにてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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