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Letter from Silicon Valley第1回

イノベーションはとまらない

2008年02月14日 17時06分更新

文● 秋山慎一

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技術や能力やお金があるだけではイノベーション(変革)を継続して生み出すことはできない。イノベーションを生み出すシステムが必要なのだ。シリコンバレーにはそれがある。

ネットワークマガジン2008年3月号掲載

世界は広く、日本で暮らしていると想像もできないような暮らし方や生き方をしている人たちがたくさんいます。シリコンバレーもその1つで、ユニークな魅力を持った地域です。みなさんご存知のグーグルやシスコシステムズなど、ネットワークの世界の有名企業はほとんどがシリコンバレーで生まれたといってもよいくらい。そして今も続々と成功を目指して新しい企業が生まれ続けています。なぜシリコンバレーでこんなに多くのイノベーションが生まれ続けるのでしょうか?

スタンフォード大学

スタンフォード大学:東のMIT(マサチューセッツ工科大学) と並んで、理系としてはアメリカでもっとも有名な大学です。シリコンバレーのベンチャーには必ずといってよいほどスタンフォード出身者がかかわっています。

私は、この地で生まれる新しい技術やビジネスを日本に紹介するために、2007年の8月にシリコンバレーに赴任しました。以前からたびたび訪れたこともあり、おおよその知識は持っていたはずなのに、住んでみるとまだまだ驚きの連続。ベンチャーを起こす人々やベンチャーに投資する人々、企業を渡り歩くプロフェッショナルなエンジニアたち。彼らと交流し、いろいろなものが見えてくると、いよいよこのシリコンバレーの生命体のような独特な「文化」に驚かされます。

※ ベンチャーキャピタル(VC)
VC抜きにシリコンバレーを語ることはできません。起業家に資金を提供する主人公がVCです。VCは個人や企業などの投資家から集めたお金をベンチャー企業に投資し、事業を成功させて株式公開(IPO)や他社に買収してもらうことで利益を生み出します。ただ投資するだけでなく、経営に参加したり、販売先の企業に橋渡しをしたり、成功のために全力を挙げて協力します。

これからは中国やインド? という意見も耳にします。しかし、現実はそうは問屋が卸さないでしょう。中国やインドは確かに大きなマーケットや人材を抱え、投資も盛んで急成長しています。しかし、それだけでは決してシリコンバレーのようにイノベーションを次々と生み出すことはできないに違いありません。

冬の昼下がり

冬の昼下がり:スタンフォード大学のあるパロアルトは、ちょっとおしゃれな感じの街。ここに拠点を持つVCも多いです。

たぶん世界中のどこにもなくて、シリコンバレーだけが持っているその決定的な強みは、イノベーションを量産するための「システム」です。「文化」といい換えてもよいでしょう。イノベーションを生み出すには、意欲と才能のある人材、投資家とお金、社会的インフラなどの要素が必須だけれど、それを継続するには、さらに特別な仕組みが必要なのです。

そのカギは、おカネと人の流動性

特に、人材の流動性がシリコンバレーのもっとも大きな強みなのだと思います。会社は何年か働いたら次に行くのは当たり前。競合相手に就職したって後ろ指さされません。会社がつぶれたりレイオフされるのはよくあること。ただ、不安定な分、給料の水準は日本よりずっと高いらしいです。また起業に失敗しても、それは汚点ではなく経験値として評価されます。

※ ハングリーな移民の存在
移民を受け入れる文化はアメリカの特徴ですが、シリコンバレーでは特に移民が、そしてその成功が目立ちます。日本人も多く見かけますが、移民ではなく、身分を保証された日本企業の駐在員がほとんどです。
※ おカネの流動性
高い所得水準、ストックオプション、IPO、日常的に行なわれる企業買収、エンジェル(ベンチャーに投資する個人)の存在など、さまざな側面が結果的に起業をサポートしています。

だから、新しいビジネスに人材を集めやすく、起業する人も大勢います。企業が不採算事業をリストラするように、シリコンバレー全体が大きな企業のように新陳代謝をしながら、次々と新しい事業に挑戦していけるのです。

どんなイノベーションに出会えるのだろう!

シリコンバレーがそんな文化を持っている限り、まだまだこの街には人やおカネが集まり、新しい技術やビジネスが生まれ続けるに違いありません。この街で出会った輝く人やモノ、感じたことを、これから毎月お伝えしていきます。そして、技術の紹介とともに、それが製品となって広がっていく仕組みまでお伝えできたらと思っています。

シリコンバレー

日没間際に、太平洋側の山から見た、夕陽を反射するサンノゼの街。普段は、あまりに広いのでそこが「バレー(谷)」だという実感は持てません。こうやって遠くから望遠レンズで覗いてみると、ああやっぱりバレーなんだ、と納得。

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービスにてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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