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Letter from Silicon Valley第6回

アメリカ金融界で導入が進むCEPとは?

2008年07月11日 13時00分更新

文● 秋山慎一

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プログラミング取引などIT化が進むアメリカ金融業界。膨大なリアルタイムデータを瞬時に分析してアクションを起こすには、データベースは重過ぎるようだ。

ネットワークマガジン2008年8月号掲載

証券トレーディングは、一瞬を争うスピードが命。トレーダーを支える情報システムには、高度な機能とともにスピードが要求されます。市場でリアルタイムに発生する値動きや、売買注文のデータを即座に伝えるだけでは足りません。具体的には、それらに複雑な計算を施してさまざまな指数を算出したり、トレーダーが持つポジションとともに分析して、市場平均の値動きなどと比較してアラートを表示します。

●専用ソフトによる方法も
専用のソフトウェアを開発して、データベースを使わずにリアルタイムデータを直接分析する方法もあります。こちらも遅延なく求める結果を得られますが、ソフトの開発は非常にコストが大きくなってしまいます。

もちろん、市場データを単にトレーダーのディスプレイに表示するだけなら、ネットワークがあればなんとかなるでしょう。しかし、それにさまざまな分析を加えてリアルタイムに結果を出すのは、実は非常に難しいことです。一般的には、データを一度データベースに記録して、それを使ってアプリケーションで分析を行ないます。しかしこの方法では、どうしてもタイムラグが出てしまいます。

そこで最近注目を集めているのが CEPです。CEPは、ネットワークに流れるデータをそのまま取り込み、リアルタイムに分析して出力する、というコンセプトの新技術です。

※  Complex Event Processing
概念としては1990年代ごろから存在していましたが、ここ数年、商用製品が実システムに利用され始め、盛り上がりを見せています。ガートナーなどのシンクタンクも、今後の急拡大を予測しています。

CEPは、いったんデータを蓄えるという手続きを省き、ネットワークを流れるデータをそのまま取り込んで、ほとんど遅延なしに結果を出力する高速処理が売り物です。また、入力データを解析して出力する条件やアルゴリズムはSQL型のコマンドやGUIで指定できるので、プログラマなしに必要な解析結果を取り出せます。事前にその定義をしておけば、CEPエンジンが入力データをその定義に従って解析し、結果をリアルタイム出力する、という仕組みです。

証券トレーディングのほかにも、CEPが活用されている分野があります。たとえばECサイトでは、顧客の過去の購買履歴や興味の分野のデータを基に「おすすめ」商品を提示するのは今では当たり前です。さらに進めて、過去ではなく、その人の今回のアクセスの様子を分析して、求めているものを推定し、すかさずおすすめ商品を提示する。そうすればさらに売上アップにつながるはずです。大手のホテル予約サイトなど、すでにCEPを導入しているところがいくつもあります。

●その他の適用分野
ネットワークの監視、RFID(ICタグ)を使った大量の商品の物流管理、病院の医療機器から常時発生する情報の監視など、幅広い分野で普及の可能性があります。

CEPを代表するベンチャーといえば、東海岸のボストンにあるストリームベースや、シリコンバレーのコーラルエイトを挙げることができます(いずれも創業は2003年です)。

●大手の動き
成長が期待される分野には、既存の大手企業がかならず触手を伸ばします。特に、類似機能を持っている、あるいは競合となる製品を持っている企業は、無関心ではいられません。CEPの分野では、たとえばオラクルの動きに要注意です。CEPに相当する機能を自社で開発する力量もあるでしょうが、有望なベンチャーを買収する戦略も可能性大です。オラクルが参入すれば、大きなマーケティング力の影響で、CEP市場が急拡大する可能性もあるでしょう。

コーラルエイトはマウンテンビューに本社を置き、社員は約45名。同社のプロダクトマーケティングのディレクターであるジョン・モレル氏によると、性能的には「毎秒100万メッセージの規模のストリームデータを、ミリ秒から数秒の遅延で処理できる」といいます。ただし同社の製品はソフトウェアですので、組み込むサーバの性能にも影響されます。

DVR(Digital Video Recorder)

ジョン・モレル氏:「たとえばECサイトで、『最近の5分間にもっともアクセスされた商品の、IDとアクセス数を1分間隔に出力する』などの処理を、簡単に定義して実行できるんだ」

ジョン・モレル氏

面白いことに、同社のサイトでは製品ソフトウェアやSDK(開発キット)を、無償でダウンロードして使ってみることができるそうです。機能制限もされておらず、「実用を始める段階で、ライセンス料を払っていただく仕組み」(同氏)だそうです。みなさんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。ネットワークを監視して、異常な動きを検出して警告する、なんてシステムを意外と簡単に実現できるかもしれませんよ。

DVR(Digital Video Recorder)

マウンテンビューのダウンタウンで:繁華街とか、お店が集まる商業地区を「ダウンタウン」と呼びます。シリコンバレーのダウンタウンは、日本の繁華街に比べると広々していて開放感がある感じ。こちらでは繁華街へ行くにも車が主流です。シリコンバレーではネクタイ姿はちょっと珍しいですね。

マウンテンビューのダウンタウンで

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービス にてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、 マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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