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Letter from Silicon Valley ― 第14回

バーチャルワールドは世界を変えるか?

2009年03月13日 04時00分更新

文● 秋山慎一

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コミュニケーションのインフラとして大きな可能性が期待されるバーチャルワールド。サン・マイクロシステムズはビジネスでの実用を目指して"プロジェクト・ワンダーランド"を進めている。

ネットワークマガジン2009年4月号掲載

今から20年以上も前にEメールが現れたとき、それがこんなにも世の中を変えるアプリケーションであると、誰が想像したでしょうか。バーチャルワールド(VW)も、人々のコミュニケーションを大きく変えるポテンシャルを持っているかもしれません。

シリコンバレーにいる筆者が日本の同僚と新しいプロジェクトについて議論し、プレゼンをまとめなくてはならないことになったとしましょう。同僚に「手が空いていたら、21Fの第二会議室にきてくれないか」と電話します。実は21Fというのは実在しないフロアで、仮想オフィスを示しているのです。日米のパソコンからログインして第二会議室に集まり、プレゼンを部屋の壁に投影。みなで音声で議論しながらプレゼンをまとめていきます。

近い将来、このような仕事のやり方が普通になっているかもしれません。VWはセカンドライフでブームになりましたね。そのセカンドライフ自体も進化して応用が拡がっていますが、その他にも多くの企業がさまざまなVWを開発しています。サン・マイクロシステムズも プロジェクト・ワンダーランド として、VWを構築するためのツールを開発しています。

※  プロジェクト・ワンダーランド
正確にいうと、3DのVWを実現するためのクライアント側の開発ツールキットです。多くの情報がWebサイト(https://lg3d-wonderland.dev.java.net/)に掲載されています。オープンソースですからコミュニティに参加することも可能です。

そして同社では、それを使って MPK20 という仮想オフィスを構築し、前述したような仕事のやり方をすでに現実にしているのです。同社のコミュニティマネージャであるケビン・ルーバック氏によれば、サンでは平均すると50%くらいが在宅勤務をしているのだそうです。「けれど、創造的な仕事をする上でコミュニケーションが減ることがとても大きな問題なんだ。だが、VWを使えば社員間の エモーショナル・バンドウィズ が広がって、仕事の成果にも結び付くことが期待されている」といいます。

※  MPK20
サンのメンローパークオフィスには19のビルがあり、それぞれのビルをMPK19などと呼ぶそうです。そして、20番目の仮想のオフィスとして構築されたのがMPK20というわけです。

※  エモーショナル・バンドウィズ
「情緒の帯域幅」とでも訳しましょうか。よい仕事をするための人間同士のコミニュケーションは、単なる情報伝達だけでは不十分だということです。

VWの可能性、価値はどこにあるのでしょうか。たとえば単なる3DとVWはどう違うのでしょうか。決定的な違いは、3Dは単に三次元化された対象物や特定のアプリケーションであるにすぎませんが、VWはそこで人々が「コミュニケーション」できる「場」である、ということです。

ケビン・ルーバック氏:「プロジェクト・ワンダーランドはオープンソースであることが大きな特徴。誰でもこのツールを使って自分のVWを構築することができる。すでにいくつもの企業や組織がこれを使ってVW型の製品やサービスを開発しているんだ」

コミュニケーションできる、ということを発展させると、コラボレーションになります。つまり、単に会話できるだけでなく、人々が協力して共通の仕事やプロジェクトに取り組むことができるということです。

「場」である、ということは、特定の対象物が与えられるだけではなく、いつでもそこにある「場」を俯瞰して、何にどう関わるか取捨選択でき、かつそこにあるものに自分が働きかけて変化させることもできる、ということです。それぞれの参加者は、同じ「場」を異なる視点で見て参加している、ということも特徴です。

サン・ラボ:サン・ラボは、未来につながる新技術を研究している部門で、この部屋はその一部。プロジェクト・ワンダーランドのアーキテクト(設計エンジニア)であるポール・ビーン氏が、そのテストをしていました。

もちろんドキュメントを共用できるテレビ会議システムなどもありますが、設定された相手と特定のセッションだけ行なうテレビ会議と、つねに「場」として存在し、開放されている仮想オフィスは本質的な違いがあります。またこれからのVWは、リアルワールド(現実世界)とのシームレスな連携が実現するようになるでしょう。

たとえばMPK20では、バーチャルな会議室の電話でアバターがリアル世界に電話をかけてリアル世界から電話経由で会議に加わってもらったり、バーチャルな会議室でリアル世界の会議室とテレビ会議を実施したり(バーチャル会議室の壁面にリアル会議室の映像が映し出されます!)、などということが可能になっています。

MPK20のひとコマ:会議室にプレゼンを投影して、みんなで議論し、誰もが更新に参加できます。右に見えるホワイトボードでアイデアをメモにすることも。隣の部屋では同じVWで他のグループが会議をしているかもしれません。歩いて行ってその会議に参加することもできるのです。「場」を俯瞰して自由にコミュニケーションし、ともに作業できることに価値があります。。

VWの実用化の前提には、ユビキタスに向けたネットワークの進歩も忘れることはできません。これらの技術によってこれからさらに、人々は自分がどこにいるか、という制限からますます解放されて、自由で高度なコミニュケーションが可能になっていくことでしょう。

●教育分野も有望
VWは、仮想オフィスのほかにも多くの分野への応用が期待されています。教育分野はもっとも有望でしょう。今まで難しかったゼミのようなグループでの双方向の授業や、生徒同士のグループワークやプライベートな交流も、自宅にいながら可能になるわけです。

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービス にてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、 マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。


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