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Letter from Silicon Valley ― 第7回

ネットワークアプライアンスをとりまくエコシステム

2008年08月29日 13時00分更新

文● 秋山慎一

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シリコンバレーでは「ビジネスを支えるビジネス」も盛んである。アプライアンス向けのアクセラレータチップや最適化済みの筐体を製造するメーカーもあるのだ。

ネットワークマガジン2008年9月号掲載

スイッチに始まってファイアウォールや負荷分散装置など、今やネットワークシステムにアプライアンス製品は欠かせません。ネットワークやセキュリティ分野の新製品の多くが、アプライアンスの形で出荷されます。アプライアンスは、ソフトウェア製品に比べて導入や運用が容易なのでユーザーに好まれます。そのためベンチャー企業もアプライアンスの形での製品化を目指すのです。

※ アプライアンス
電化製品などの家庭用の装置や器具のことで、洗濯機や冷蔵庫が典型的なアプライアンスです。買ってきて簡単に使える、というニュアンスがあります。ITの世界でも、比較的容易に導入できるハードウェア製品がアプライアンスと呼ばれます。

アプライアンスも、たとえばシスコシステムズのスイッチのように独自のハードウェアとOSを備えた 本格派 から、汎用サーバハードウェアとLinuxなどの汎用OSの上に専用ソフトウェアを載せたものまでさまざまです。ネットワークアプライアンスには当然ながら高いスループットや低遅延が求められ、その点では独自ハードウェア製品に分があります。しかしそのようなハードウェアの開発には数億円以上の大きな投資が必要です。企業としては、できるだけ手間やコストをかけずに性能の高いアプライアンスに仕上げたいと考えています。とはいえベンチャー企業などは資金も限られていますし、中核となるソフト的機能の開発に手いっぱいで、アプライアンス化にまでなかなか手が回らないのが実情です。

表:アプライアンス製品化を支える企業と製品例
表:アプライアンス製品化を支える企業と製品例

※ エコシステム
本来の訳は生物学的な 生態系 ですが、最近はビジネスの分野でこの言葉を使うのが流行っているようです。ある製品や技術を中心に複数の企業が関連製品や補完製品を提供し共存共栄している状態を指します。

ここに「アプライアンスの製造をサポートするビジネス」のチャンスが生まれます。つまり、アプライアンスを製品化するための部材やソフトウェアをOEM供給するビジネスです。たとえば、ネットワークカードやSSL(Secure Sockets Layer)アクセラレータカード、アプライアンス向けに最適化したラックマウント型サーバや管理ソフトウェア、果てはアプライアンスの製造や出荷のプロセス全体までをベンチャー企業に提供するのです。ベンチャー側はそれらを組み合わせ、その上に独自のソフトウェアを搭載することで、比較的容易に性能の高いアプライアンスを早期に製品化できます。

カビウムネットワークスのラックカビウムネットワークスのラック:2008年4月にサンフランシスコで開催されたRSAカンファレンスで、カビウムネットワークスが展示していたラックです。同社の製品を利用している各社のアプライアンスが並んでいます。ここにはありませんが、前々回の本記事で紹介した 次世代ファイアウォール のパロアルトネットワークの製品も、カビウムのマルチコアプロセッサを活用してパケットやセキュリティ処理の高速化を実現しています。

もともとUNIXなどの汎用OSはアプリケーション処理に主眼を置いて設計されているので、ネットワークサーバとしての性能は高くはありません。従来であればそのようなアプライアンスで高いネットワーク性能を出すためには、TCP/IPやSSLなどを含むOS全般のコードに手を加えて最適化しなければなりません。たとえばSSLをカーネルモードで動作させるなど、ベンダーに高い技術力と手間が要求され、簡単なことではありませんでした。しかしSSLアクセラレータを利用すれば、同時に提供されるAPI(プログラムから利用するためのインターフェイス)を使って比較的容易に高性能なアプライアンスを設計できます。そのようにしてできるだけ早く市場に製品を出荷し、必要に応じてソースをチューニングして性能や機能を向上していく、というのがシリコンバレーのベンチャーの常道のようです。

また、最近は仮想アプライアンスとして提供される製品も目に付きます。これは、仮想サーバ上に簡単に導入できるよう設定済みのソフトウェアです。これについてはまたの機会にお話ししましょう

Letter from Silicon Valley 07カイトサーフィン:いまサンフランシスコベイではカイトサーフィンが流行り。波が立たない内湾なのでサーフィンはできないけれど、カイトサーフィンは風さえあれば波を待つ必要がなく、パドリングいらずで何時間でも乗り続けることができます。遠景の橋は、サンマテオと対岸を結ぶサンマテオブリッジ。

 

Letter from Silicon Valley 07 Letter from Silicon Valley 07

筆者紹介─秋山慎一


Letter from Silicon Valley

日立システムアンドサービスにてシステムエンジニアやプロダクトマネージャ、マーケティングを経験。現在Hitachi America Ltd. に駐在し、シリコンバレーの技術動向の調査やビジネス開発などに携わる。「SEのためのネットワークの基本」(2005年・翔泳社刊)、ネットワークマガジン連載「トラブルから学ぶネットワーク構築のポイント」(2005.12〜2006.12)などを執筆。

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