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乱立するイノベーション活動をどう束ねるか。人材開発から始まる大企業の組織づくり

新規事業の理論と実践をつなぐ―コニカミノルタ 宮木俊明氏×羽山友治対談

連載
トップランナーと語る「新規事業の本質」

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宮木 俊明氏(左)
コニカミノルタ株式会社 事業開発推進グループリーダー/一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事/グロースワークス合同会社 代表。新規事業開発・人材開発・組織開発の「三位一体開発」を専門とし、スタートアップ創業代表、教育系ITベンチャーの事業責任者などを経て現職。企業内での実践と外部支援の両面から、DXや生成AI活用を含むイノベーション創出に取り組む。著書に『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』(ともにエムディエヌコーポレーション)。note(https://note.com/miyakitoshiaki)、X(https://x.com/miyakitoshiaki)でも発信している。三児の父。

羽山友治氏(右)
スイス・ビジネス・ハブ 投資促進部 イノベーション・アドバイザー、理学博士。チューリヒ大学有機化学研究科博士課程修了。日系・外資系化学メーカーで研究・製品開発に携わった後、技術探索やオープンイノベーション活動に従事。戦略策定者、現場担当者、仲介業者の各立場で新規事業創出に関わる。著書に『オープンイノベーション担当者が最初に読む本  外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』、『新規事業の本質 世界レベルの「理論」と「現場知」で描く全体地図』。

 新規事業に向いているのは、どんな人なのか。必要なスキルを持つ人材を集めれば、良いチームはつくれるのか。大企業で新規事業人材を育て、活躍してもらうには、どのような仕組みが必要なのか。

 国内外の新規事業に関する約1000件の研究論文を読み解き、実践につながる知見をまとめた書籍『新規事業の本質』。共著者の羽山友治氏・合田ジョージ氏が、新規事業の実践者と対話しながら、その理論を現場の経験と照らし合わせていく。

 第3回のゲストは、コニカミノルタ株式会社で事業開発に携わる宮木俊明氏。新規事業の立ち上げやマネジメント、人材・組織開発に社内外で取り組んできた経験について、同書第3章「人材開発」をテーマに、新規事業人材の見極め方やチームづくり、大企業のイノベーション活動を支える組織のあり方について聞いた。

完璧な人材はいない。新規事業では「変化量」を見る

羽山:宮木さんは現在、コニカミノルタにおける個別の新規事業プロジェクトを進めるだけでなく、全社的な仕組みづくりにも関わっていらっしゃると拝見しました。

宮木:そうですね。現在は、個別のプロジェクトにも関わりながら、各プロジェクトで事業開発を担う人材のマネジメントや、全社的な事業開発人材の育成にも携わっています。

 5年前にコニカミノルタへ入社したときは、事業本部内の事業開発部門で、数名のメンバーと新規事業を立ち上げるところから始めました。その後、扱うテーマが増え、部長として複数の事業開発をマネジメントするようになりました。

 今年4月からは新設された部門に移り、会社として重点的に取り組むテーマの事業開発推進と人材育成に加え、事業開発人材を全社で増やす仕組みづくりにも取り組んでいます。

 とはいえ、本日の対談はあくまで私個人の見解で、会社としての公式な見解ではないことを前提にお話しします。

羽山:ありがとうございます。まず私が一番気になっているのが、プロジェクトへのメンバーの割り当てです。例えば、スタートアップでは「人がすべて」とよく言われます。ただ、大企業の中で、プロジェクトごとにスキルも相性も完璧なメンバーをそろえるのは難しいですよね。

宮木:完璧な人材は絶対に存在しないと思っています。相性がよくて、スキルも経験もすべて備えた人がいたら、すでに自分で事業を始めているかもしれません(笑)。もちろん冗談ですが、それくらい、最初からすべてを備えた人を探すのは現実的ではないということです。

 実際、大企業で事業開発を担当する経緯はいろいろです。もともと技術開発者だった人が、プロジェクトを進めるために事業開発まで担当するようになったり、別部署からアサインされて、手探りで始めたりすることもあります。私がすべての人選を自由に決められるわけでもありません。すでにアサインされているメンバーを、どうエンパワーメントしていくかも重要です。

羽山:新たに人を入れるときは、何を見ていますか。

宮木:能力や相性も見ますが、私が特に重視しているのは「変化量がありそうか」です。

羽山:「変化量」ですか。

宮木:一つは、自分をどれだけメタ認知できているか。ただ、それ以上に見ているのが、自発的に行動しているかです。

 私は、「やりたい」という自己申告以上に、今できる範囲でどんな行動を起こしているかを見ます。適性は固定されたものではなく、行動する中で変わっていくからです。「役割を与えられたらやります」という姿勢では、新規事業の現場では厳しいと思っています。

「やりたい」ではなく、何をしたか。行動から適性を見る

羽山:『新規事業の本質』でも、「やりたい」という発言だけではなく、実際にどんな行動をしているのかを見ることが重要だと書きました。ただ、自腹を切って外部で勉強するような人だけを対象にすると、かなりストイックな一部の人しか残らなくなります。会社として新規事業を増やそうとすれば、それだけでは人数が足りないですよね。

宮木:そこはまったく同感です。会社側が学ぶ機会を用意することは必要です。コニカミノルタでは、全社員が受けられるeラーニングや、スキルを学ぶワークショップなどはすでにありますし、今年4月に新設された私の部門では、さらに体系的な事業開発人材育成の仕組みをつくろうとしています。

 ただ、その中でも、自分から学びの機会を求める人と、「会社から与えられた教育以外はやりません」という人では、やはり前者のほうが新規事業には向いていると感じます。

羽山:モチベーションについてはどうでしょう。新規事業をやりたい人は、社員全体の中でもそれほど多くありません。金銭的なインセンティブを設けて裾野を広げるべきだという意見もあれば、「お金がなくてもやる人を探すべきだ」という考え方もあります。

宮木:きっかけとして金銭的インセンティブに惹かれるのは、自然なことだと思いますが、新規事業には、スタートアップのように個人に対して大きな成功報酬がないことが実情です。

 きっかけは何であるにしろ、新規事業でもスタートアップでも共通して、事業を進めていく中で、報酬などの外発的な動機から、「顧客の想いを形にしたい」「この課題を自分の手で解決したい」といった強い気持ちが芽生えるかどうかが重要です。最後まで事業をやり切るには、やはり内発的な思いが必要になります。

羽山:最初から全員が強い情熱を持っている必要はない。

宮木:そうです。最初はそれほどモチベーションが高くなくても、参加できる仕組みがあればいい。熱量のある人と交わることで、周囲に熱量が伝わっていくケースを何度も見てきました。

 「個人のモチベーションに依存しない仕組みをつくろう」という考えももちろん重要ですが、そういった仕組みを最初につくる人には、やはり相当な熱量が必要になります。短期収益も求められる大企業では、既存事業にリソースを投じるほうが合理的であるという判断になりがちです。その中で、あえて新しい仕組みをつくり、組織を変えようとするには、やはり合理性を超えたエネルギーを持つ人が必要だと考えています。

スキルだけで人をはめ込まない。補い合えるチームづくり

羽山:個人の適性だけでなく、チームの相性も重要ですよね。プロジェクトリーダーが「人が足りない」と言ったとき、上司から一方的に人を割り当てられても、うまくいかないことがあります。

宮木:私の場合は、できるだけ現場のリーダーと意見をすり合わせながら人選します。社内公募でも社外採用でも、「この人を配置したからよろしく」と一方的に押し付けることはしていません。

 既存事業のように、「こういうスペックの人が足りないから、ここにはめよう」という考え方だけでは、新規事業ではうまくいかないことがあります。多少凸凹があっても、お互いに補い合えること。そして、状況が変われば本人も変わっていけること。新規事業はステージが変わるたびに、大きな方向転換も起こるので、ここでも「変化量」が重要になります。

羽山:人が足りないときは、どうしていますか。

宮木:最近は2026年7月に正式導入された「スキルシェア制度」、いわゆる社内副業制度を積極的に活用しています。月10時間まで、といった上限はありますが、必要なスキルを持つ人に、他部署から一時的に入ってもらえます。

羽山:社内副業で参加できるのはいいですね。

宮木:そうですね。それに加えて、入社以来、人事ともかなり密に連携しています。外部からの中途採用はもちろん、新卒採用の段階から、事業開発に適した人材を採るために「事業開発特化型インターンシップ」を継続的に実施してきていたり、人事、事業部、専門部署が連携して育成体系をつくったりしています。ただ、人選やチームづくりを工夫するだけでは限界があります。人がどう動けるかは、その人が置かれた組織構造にも強く左右されるからです。そこで次に考えなければならないのが、新規事業組織を会社の中にどう置き、既存事業とどうつなぐかだと思います。

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