コメ不足に野菜高騰。日本の食糧問題は宇宙技術で解決できるかも
気候変動の影響でコメ不足や野菜の高騰が止まらない。収穫量が減ると農家の負担は増加し、離農が加速する恐れがある。農業の高齢化の進む中で日本の食料自給率を上げるには、最新技術を活用して自動化・省力化するスマート農業がカギとなる。ICTスタートアップリーグに採択されている輝翠TECH株式会社は、宇宙探索ロボット技術を応用し、日本の農家の労働力不足の解消を目指している。
同社CEOのブルーム氏は、米国UCLAで航空宇宙工学の修士号を取得し、SpaceXやAeroVironmentでの勤務経験を経て、東北大学航空宇宙工学で月面探索ロボットの研究のために来日。その際に農家の人手不足を知り、起業したという。開発している「Adam(アダム)」は、月面探査機の技術を農業向けに応用したオフロード自律走行AIロボットだ。凸凹の多い農地を安定して自動走行し、収穫予測や有害虫の判断といったデータの収集・分析機能を搭載する。また、アタッチメントを付け替えることで運搬、草刈り、速度調整型農薬散布、肥料散布といった複数の作業を1台でこなし、設備投資も削減できる。現在Adamは果樹園農家向けに販売しているが、アタッチメントの拡充で露地野菜用も展開する計画だ。
気候変動は、世界全体の食糧危機にも影響を与えている。農業ロボットは、労働力の代替はもちろん、気象データを活用した栽培による収穫の安定化も図れる。また、化学肥料や農薬を最小限に抑え、持続可能な農業の実現にも貢献できそうだ。同社のメンバーは15カ国以上から構成されており、海外進出も進めている。宇宙開発技術から生まれたAdamが世界で活躍する日も近そうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
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