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研究者の勘を超えてコストを大幅に短縮。AIスタートアップと島津製作所がタッグした最適化ソフト「CellTune」

エピストラと島津製作所、細胞培養最適化ソフト「CellTune」を発売

 エピストラは、島津製作所との共同開発による細胞培養最適化支援ソフトウェア「CellTune」の発売開始を発表した。希望販売価格は600万円(税別)。

 大企業とスタートアップのオープンイノベーションによる新たなソリューションがまた一つ生まれた。2022年2月の共同開発の合意の際、2024年の製品化を目指す形で発表がなされていたが、予定通り市場に投入することとなった。

 CellTuneは、エピストラの条件探索AI「Epistra Accelerate」を搭載し、抗体や再生医療用細胞、生産物質の工業発酵など、細胞培養を用いる研究開発の条件検討を効率化するためのソフトウェアだ。島津製作所の液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)および「LC/MS/MSメソッドパッケージ細胞培養プロファイリングVer.3」で計測した培養上清成分データを活用し、AIが最適な培養条件を自動で生成できるのが特徴だ。

 CellTuneは培養条件を一括で検討し、成分間の相互作用も評価しながら最適な実験条件を提案する。また、データを基に生成した予測モデルにより、少ない培養実験の数で効率的に最適条件を見出すことができる。これにより、商業向け大量生産におけるコストを抑えつつ高品質な細胞培養を実現するとしている。エピストラは実験計画のコンサルティングや統計解析サポートを提供し、ユーザーの研究開発を支援する。 研究者は統計解析に深い知識がなくても、解析レシピを選んで異なるパラメータを設定するだけで、評価指標に対する重要成分を抽出・解析可能だという。

最適化の前に、適正なパラメータ絞り込みができる点がポイント

エピストラ CEO 小澤陽介氏(本誌取材)

 今回の成果は、大企業ならではの研究開発から生まれた優れたハードウェアの性能を、創業からの短期間で60件もの培地開発の成功事例を積み重ねているエピストラのAIがより高める形となっている。

 エピストラの小澤代表は取材に対し、島津製作所の分析機器によって研究途上のデータを集め、重要因子をAIから特定することによって、研究者は適切なパラメータの絞り込みができ、研究にかかるコストを大幅に短縮できると強調する。

 キーのひとつである分析機器・LC-MSは、144種の培地をわずか20分で一括分析でき、培養日数ぶんのデータが出せる優れたハードだが、島津製作所としては得られたデータの活用に課題があったという。そこにエピストラのAIが加わり、培地分析から重要因子を選ぶ、特徴量抽出モジュールにこのデータが活用できた。

 「AIによる自動最適化モジュールで、最適なスピードで研究開発が可能になる。人ではイメージしずらい4次元以上の関数であっても、機械なら高次元での調整ができる。研究者ならではの職人芸というものはあるが、どうしても人は見えているもの、区切りのいい数となっている。人の場合、それまでの観点が反映されてしまっており、そうした偏りやブレが積み重なれば大きな結果の違いを生む可能性があり、それを防ぐことで高速化が可能となる」(エピストラ小澤代表)

 エピストラとしては、優れたハードウェアにAIを連携させて高付加価値を生む分析ソリューションについて、海外市場も含め拡大させる想定だという。

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