5年間で累計6500件のビジネスアイデア 保険の枠を越えた“進化”目指す、MS&ADグループが取り組むイノベーションプログラム
JAPAN INNOVATION DAY 2024――社会課題解決に向けた事業アイデアを生み出す実践アプローチ ~MS&ADグループのイノベーション取組「チャレンジプログラム」~セッションレポート
提供: MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社
電力データから高齢者のフレイルリスクを早期発見し、予防を図る
MS&ADインターリスク総研の木村雄貴氏は、高齢者宅の電力使用データをAI分析することで、身体の虚弱化(フレイル)リスクを早期発見し、虚弱化の予防につなげるサービスアイデアを発表した。
虚弱リスクの早期発見を図るために、AIエンジニア企業や電力会社とのアライアンスを組み、虚弱リスクの判定レポートや予防のための相談機会を提供するという。さらには、高齢住民の健康維持に取り組む自治体とのコラボレーションも考えられるとした。
木村氏は、このサービスを通じて高齢者がより良い健康状態を謳歌し、同時に社会保障費の増加という社会課題の解決にもつながる、「健康長寿社会」の実現に寄与したいと語った。
物流業界の“2024年問題”解決を「中継輸送プラットフォーム」で支援
あいおいニッセイ同和損害保険の佐藤大知氏は、自動車保険の保険金支払い業務での経験から考案したという、物流運送業界向けの「中継輸送プラットフォーム」ビジネスのアイデアを披露した。
“2024年問題”として知られるとおり、物流運送業界ではドライバーの人手不足が深刻化している。この問題を解決する方法のひとつとして期待されるのが、長距離、長時間のトラック運行において、途中でドライバーを交代する「中継輸送」の仕組みだ。ただし、中小運送事業者が導入するには「ハードルが高い取り組み」だと、佐藤氏は指摘する。
そこで提案するのが、中継輸送に取り組みたい運送事業者間のマッチングを行なうプラットフォームサービスの設立だ。同社が持つ全国の代理店網や運送事業者とのパイプを生かし、事業者同士のマッチング、中継輸送基地のシェアリングなどを進める。また、取り組み方法のわからない事業者向けのセミナー開催、中継輸送実施時のリスクに対応した保険商品の開発といった取り組みのアイデアも挙げた。
住宅に設置された火災報知器を“猫のように”かわいがってほしい?
あいおいニッセイ同和損害保険の片貝有人氏は、一般住宅に設置された火災報知器(住宅用火災警報器)の定期的なメンテナンスを、スマホアプリを通じて楽しく促す「きゃっとガーディアン」のアイデアを紹介した。
消防法改正によって、2011年以降すべての住宅において、火災による死者数と損害額を半減する効果があると言われる火災報知器の設置が義務づけられた。ただし消防庁の調査によると、設置されたものの6割がメンテナンスされておらず、1割が電池切れや故障したままで放置されているという。「自主的に定期メンテナンスを行なう」という行動変容を起こすにはどうすればよいか――そこで考えたのが火災報知器の“ペット化”だ。
具体的には、耐用年数が約10年という火災報知器のライフサイクルを「猫の一生」になぞらえて、火災報知器の稼働状態と「猫」の健康状態を連動させる。たとえば、火災報知器の清掃を長期間怠っている場合は猫の毛並みがボロボロになったり、電池切れになれば「お腹がすいた」と訴えたりするイメージだ。「そして、猫が寿命を迎えるときに火災報知器の交換をうながす、そんなことを考えています」(片貝氏)。
海外駐在員と同伴家族の医療不安を軽減する「おくすりトラベル」
三井住友海上火災保険の福原悠介氏は、現在83万人いる日本企業の海外駐在員や同伴家族に「日本の医療水準と安心感をお届けする」という、新たなソリューションを提案した。「おくすりトラベル」と名付けている。
海外では医療費の高騰が続いており、それに伴って海外旅行保険料も高騰しているため、企業にとっては海外駐在員のコスト増加が悩みの種となっている。一方で、海外駐在員やその家族も、駐在先では「日本語で医療相談ができない」、「日本語対応の病院が遠い」、「身体に適していない薬を服薬せざるをえない」といった不安を抱えているという。
「日本からのオンライン診療サービス」と「処方薬ポーチ」の提供によって、こうした課題を解決するというのがおくすりトラベルのアイデアだ。日本語で医師に相談できる安心感に加えて、ポーチの薬を使って症状を改善させるケースを増やせば、現地病院にかかる医療費(=保険支払い額)が減ることになり、保険料の抑制にもつながる。